hoppenの韓的な日々♪

2004年・夏、イ・ビョンホンssiに出会ってから韓流へ~韓国映画&ドラマで刺激的になった日々を綴ります。

『はちみつ色のユン』:劇場鑑賞@下北沢トリウッド(2014.01.12)

2014-02-07 16:50:59 | 韓国映画・ドラマのレビュー

映画の邦題は映画.comへリンク。
映画のハングル題は、韓国のDaum映画へリンク。
ドラマ名は韓国ドラマあらすじ出演者情報へリンク。

피부색 꿀(肌の色のはちみつ)
はちみつ色のユン / Couleur de peau:Miel

フランス・ベルギー・韓国・スイス合作
(2012.12.22日本公開)
公式サイト





韓流ドラマには海外養子がよく登場します。

代表的な所では『ごめん愛してる

ごめん、愛してる DVD-BOX 完全版
イ・ヒョンミン,イ・ギョンヒ
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ


ミス・リプリー』では日本への養子でした。
しかも、当人が隠れていたため、かくまった主人公が
「見つからないなら、この子で良いわ」的な先生の判断で、
代わりに日本へ養子にやられます。

ミス・リプリー<完全版>DVD-BOX1
パク・ユチョン,イ・ダヘ,キム・スンウ,カン・ヘジョン
エスピーオー


最近では『屋根部屋のプリンス』のパク・ハも、
施設からアメリカへ養子に行きました。
子供が行方不明になっても、施設の登録情報が無いのか探せずじまい。
知らないうちに海外へ養子に出されています。

屋根部屋のプリンス DVD SET1
パク・ユチョン,ハン・ジミン,イ・テソン,チョン・ユミ,チョン・ソグォン
ジェネオン・ユニバーサル

  

太陽の女』は、海外養子ではなかったかな。
でも、妹が行方不明になって見つけられない。
これも面白いドラマだった。

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キム・ジス,ハン・ジェソク,イ・ハナ,チョン・ギョウン,チョン・エリ
ポニーキャニオン


どのドラマも面白くて、見ているとはまっていきますが、
最初のシチュエーションが
現実離れしているように感じていました。

子供が行方不明になったら、普通、見つかるまで探すし、
施設も調べるはずなのに。
韓国って、そんなに、孤児が多いの?
しかも、言葉も習慣も違う外国へ養子に行かされちゃうなんて。
日本じゃ考えられない。
一昔前の話なのかなぁ、と。

映画はちみつ色のユンは、
ベルギーの漫画家ユン・エナンの自伝的作品を
ドキュメンタリーを交えてアニメーションにした映画です。
1965年生まれですから私とも歳が近い。
同じ時代に、すぐ隣の国で生まれたのに、
ドラマに出てきたシチュエーションそのものでした。
現実にあることだったんですね。

ユンは、6歳のときに、ベルギーの一家の養子になりました。
肌の色ははちみつ、と書類に記載されていたところから、
映画の題名になったようです。

韓国で海外養子が行われるようになったのは、
朝鮮戦争で、多くの子供が孤児になった事から始まったようです.

1953年に停戦した朝鮮戦争。
映画『戦火の中へ』を見て、
釜山まで北朝鮮軍が攻めていた事を知り、
本当に、全土が戦地となったんだと知りました。
国民のすべてを巻き込み、分断の悲劇をもたらした内戦。

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チャ・スンウォン,クォン・サンウ,チェ・スンヒョン,キム・スンウ,パク・ジニ
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多くの孤児が生まれ、
アメリカ人夫妻が、あまりに不憫に思い、
数人の韓国の子供を養子として連れ帰ったことがきっかけとなり、
児童福祉施設を設立して、
海外養子が流行のように盛んに行われたようです。

戦火のためだけでなく、
戦争後の混乱の中で生まれた私生児も、孤児となりました。
女性たちは、家父長制の強い韓国社会の中で激しい差別に合い、
多くの子供たちが捨てられたのだそうです。

ドラマに登場するシチュエーションも、そんな事情からなのか。。。

日韓問題として、靖国参拝や従軍慰安婦など、
第二次大戦の後遺症が取りざたされますが、
それ以上に、本当は、
朝鮮戦争の傷こそが、生々しく残っているんじゃないだろうか。
包帯で覆い、それを取ることさえできないくらい生々しくて、
癒えないままの傷。

何よりも、南北に分断したままなのですから。


海外養子として連れて行かれた子供は、20万人以上。
アメリカだけではなく
ヨーロッパの各国へも広がり、
町単位で韓国人孤児を引き取っている所もあるそうです。

ユンは、5歳のとき、町を一人でさまよっていた時に、
警察官に保護されて施設へ入りました。


やがて、4人の子供を持つベルギーの一家に引き取られました。
家庭内では分け隔てなく育てられた姿が描かれています。
もう一人、年下の女の子も同じ家に引き取られたり、
同じ街には、他にも韓国人の養子が暮らしていました。
 

この映画の面白い点は、ユン氏のアニメーションだけでなく、
一家が撮影した実写フィルムが、時折織り交ぜられている所です。
ユンが初めて家に来た日のフィルムもありました。
こちらは、アニメーション部分。
これが、実写フィルムと混じります。



家族が分け隔てなくても、
ユンは色々な悩みにぶつかるようになります。
中学生ともなれば誰でも思春期で難しい時期になるもの。
自分自身のアイデンティティを探す時期とういか。
そういう時期に、複雑な思いがさらに複雑さを増す。
同じ街の韓国人養子を見て、自分自身の異質さを感じたり、
本当の母親を思い描いたり。


驚いた事に、ヨーロッパでは日本のポップカルチャーが大流行していたようで、
アニメなどが浸透していたようです。
「俺は日本人なんだ」と思い込もうとする
思春期のユンが描かれていました。


本筋とは関係ないのですが、
日本のアニメ文化の影響ってすごいなぁ、と改めて思ったり。

そういえば1992年に卒業旅行したとき、
パリのテレビで『キャプテン翼』が放送されていたなぁ。
翼がフランス語でしゃべりながら、サッカーをしていました。^^

ベルギー、フランス地域のマンガは、バンデシネ(BD)と言うそうです。
『タンタンの冒険』などもその一つらしい。

ユン氏はBD作家と出会い、挿絵ライターとして出発したとのこと。
自分の思いを吐き出す場所があって、
彼は、自分自身のアイデンティティーを確立して。
それでも、生まれた場所である韓国への思いは、
断ち切れるものではなくて。
韓国人でもなく、ヨーロッパ人でもない自分を抱えたまま。


多くの海外養子たちが、その悩みを抱えていると言います。

アイ・ファーザー』も、海外養子の実話を描いた秀作でした。

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ジェネオン エンタテインメント


かわいらしい画風と、心地よいフランス語のセリフ。
時折織り混ざる、家族を映したホームビデオ。
そして、今のユン氏の姿。
「灰色の自己体験の表現をはちみつ色で中和して見せた」
↑これは、文化庁の贈賞理由からの言葉です。
的確な表現!

日本の第17回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門で大賞を受賞しました。
アニメーション部門 - 第17回文化庁メディア芸術祭

韓国のドラマや映画を楽しませてもらっているけれど、
そのパワーの下には、こんなに困難な歴史があった。
隣国でありながら、知らなかったことが、まだまだたくさんあります。
贈賞理由がその通り!と思ったので、抜粋させていただきます。

【贈賞理由】
昨今流行りの“自分探し”物語とはひと味もふた味も違う作品である。
肌の色の“はちみつ色”に込められた意味は
多分に苦みも含まれていて複雑である。
朝鮮戦争による特需で戦後日本が潤う中、
韓国では戦争孤児が生まれた。
その多くが欧米に里子に出されていた事実を隣国の我々は知らない。
いやその想像力すら欠けていた。
主人公「ユン」=作者が、捨てられた(のかもしれない)祖国=生母への思慕と、
ヨーロッパ人家族(里親たち)の中の生活で独り異質である自らの心のゆがみを、
作品は描いている。
戦争や祖国の儒教的呪縛からもたらされた不運に対しても、
また他人の不幸に手を差し伸べる確信的善意への反発をも、
作者は抑制の効いた表現にとどめている。
灰色の自己体験の表現をはちみつ色で中和して見せたのは
作者の力量であろう。
時代背景である事実の表記を実写映像が、
作者自身の記憶と心情を
アニメーションが織りなす形で綴られていく表現は巧みである。(大井 文雄)

日本の文化庁も、やるやん!
ユン監督のコメントも、日本人として誇らしくなる、
嬉しい言葉なので、抜粋させていただきます。

【受賞者コメント】
ユン
過去には宮崎駿氏、大友克洋氏といった有名な監督の作品が受賞している、
この栄誉ある賞をいただけたことを光栄に思います。
そして大変感激しています。
この度の受賞は、日本のアニメーションの大ファンである私にとって、
大きな喜びそして誇りであり、特別な意味を持ちます。
本作でも紹介していますが、

幼少期の私がアイデンティティーを形成する過程において、
日本文化の存在はとても大きく、
当時恥ずべきことと感じていたアジア人であることを
受け入れるきっかけになりました。
そして私のルーツが韓国にあることを誇りに思えるようになったのです。
本作は、韓国からの国際養子に焦点を当てています。
私はこのテーマを取り上げることで、
ポジティブなメッセージを伝えたいと思っています。
養子になることは必ずしも不幸な運命ではない、
私たちは運命を変えることができるのです!

日本が誇るアニメ文化と、
それを広げていくアジアのエネルギーに拍手。
!^^!

ただいま、ユン監督は来日中!

2/8(土)に、シネマート六本木でトーク付きの上映会が行われます。
事前申込制なので、今から参加はできない、かな。

今日、2/7(金)は、ユン監督が来日して、
ポレポレ東中野にて、舞台挨拶&サイン会付き特別上映だったようです。

日本を楽しんでいただきたいです。

もうひとつ。
ラストに流れる曲は、ユン監督の娘さんが、
13歳で作詞作曲した「Roots」。
16歳でアレンジして、収録したものだそうです。
現在17歳。
素敵なエンディングでした。♪

小さなアニメ作品ですが、あちらこちらで上映の機会があると思います。
ぜひ、ご覧になってみてください。


 あ、もうひとつ、パンフレットを読んでへぇと思ったことを追記。

日本のアニメは、出来上がった動画に合わせてアフレコをしますが、
欧米は逆。
先に収録した音声に合わせて、
アニメーションを制作するそうです。
その違いを感じるのも、面白いかも。


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2 コメント

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知らないことばかりでした (tubana)
2014-02-11 18:35:38
hoppenさん 雪は大丈夫でしたか?

なれないと危険がいっぱいですね
早く元に戻りますように
って まだまだ 雪の中で暮らす私が言うの
可笑しいですが・・

この記事も 目からウロコの連続でした
↑で挙げられたドラマは全部見ていますが
何で 韓ドラには 海外養子 とか 施設出身が
こんなに多いのかな?と
不思議に思うだけでした

朝鮮戦争のことを知らなかった・・というか
いわゆる 韓流ブームというのが無かったら
隣国である韓国や北朝鮮についての知識も
情報も 乏しいままでした

私自身の 開眼?きっかけになったのは
ビョンホンさんの「遠い路」でした
ドラマで お父さんが北にいる親族を探すという
話に 分断されたことを思い出し
床に座って新聞を読む姿とか
お弁当に海苔巻を作る 等々
日本と同じだ!!と思ったり
驚いたのを覚えています

hoppenさんの記事の切り口
いつもながらいいなぁ・・と
感心しながら読みました
いつも 新しいことに
心を開かせて下さって有難うございます

機会があったら是非観たいと思いますが
こういうものは放送には乗らないのでしょうね
返信する
>tubanaさんへ (hoppen)
2014-02-11 23:12:17
大雪の日、仙台のビョンホンssiのファンミに行ってたんです。
仙台もすごーい雪でしたが、ファンミが楽しくて苦にならず!
家はえらいこっちゃで、夫が何度も雪かきをしてくれたらしい。
幸い、日曜日の午後に帰ってきたときには、陽の当たる道は溶けてました。
tubanaさんの所はまだまだ雪ですよね。
雪は大変ですし、くれぐれも怪我などに気を付けてくださいね。

私は、ミーハー心からビョンホンssiにはまり、
ビョンホンssiの出演作から出発して韓国映画の面白さ深さにはまり、
映画から、たくさんのことを学ぶようになりました。
私の扉を開いてくれたのはビョンホンssiで、
仙台ファンミでも、感謝の気持ちがこみ上げてきて、涙がでちゃいました。
ビョンホンssiも最後は涙で。
遠かった隣国だったのに、
俳優とファンの間でも、こんなふうに友情を分かちあえるって、
本当に幸せだなぁと思いました。

仰るとおり、韓国と日本は似たところがたくさんあって、
知るほどに親近感を覚えます。
同時に、映画やドラマを見るだけでも、
韓国には、島国・日本からは想像できない苦難の歴史が繰り返されているように感じます。
陸続きであるが故に、常に大国・中国からの脅威にさらされてきていたし。
「王になった男」でも描かれていました。
近年の苦難は、今だに、メジャーな映画では表現することさえ難しいくらい、生々しい傷なんじゃないかと思います。
ようやく、小さな作品で表現され始めた所なのかも。
この映画は、自主上映も可能なので、お近くでも機会があるかもしれません。
文化庁受賞作品ですし、上映や放送の機会もあるかも。
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