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古い家とどう付き合うのか(3):古い家リノベーション

古い家とどう付き合うのか?・・

前の2回は、歴史的にも建築史的にも文化的にも価値があるような建物を残す事について書いてきました。

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古い家とどう付き合うのか?(1):九段ハウス

古い家とどう付き合うのか?(2):日本民家園

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個人で維持していく範囲を超えているものです。

「古い家とどうつきあうのか?」

今回が本題となります。

 

急激に人口が減少している今・・

(「しかたない事」なんて受け入れられない問題だと思っています。それについて個人的には言いたい事はあり!ここでは言いませんが。。)

空き家が増えています。

そんな空き家をどうすればいいのか?・・単純な答えはありません。

楽観的に言えば、使わないなら必要な人に渡してあげればいいのでは?と思います。

 

 

政治的にも建築業界的にも、建て替えて新築するほうがいいのです。

その結果、構造的にも強くて燃えにくく温かい家が増えます。それはそれでいい事なんだけども

同時に街も作り変えられていき「記憶や時間」というものも消し去られていきます。

新しく作り変えられる事で街に活気が生まれる・・・教科書的にそんな思考があります。

本当でしょうか?

たくさんの家が作り変えられた街は、活気に満ちてるでしょか?

 

古い家とどう付き合うのか?(1):九段ハウス で書いたのは

時間を経たものを使いながら同時に保存していく方法で、建物は生き生きとし訪れる人々も楽しめ、その街の「良い場所」が残っていくという事です。

それは、名もない一般の家だとしても、同じだと私は思います。

さびれた商店街が、そこにある建物をうまく使いお店をやる人達が増えていき活気が戻るという事は、いたるところにある話しです。

やはり「使う」という事はとても大切な事なのです。

 

古い家に対してどういう態度で向き合えばいいのか?・・書いてみます。

 

1)その家に惹かれるのか?気持ちをつかまれるような何かを感じるのか?

そもそも「好き」と思えない家に住み続けるのは苦しいものです。

または、改修工事(リノベーション)する事で家が変わる事を知っていて、そんな希望を持てるか?というのも、最初に必要な事です。

 

2)どこまでの工事をしたいのか?

一概には言えませんが、築30年を超えれば、耐震診断すると確実に「倒壊する危険あり」という結果になるだろうと思います。

木造であればたいがい、窓が多く壁が少なかったりして構造的に不利である場合が多いし、当然現在の法律の基準を満たすものではないからです。

古い家を改修する時、古い家を手に入れた時、状態に合わせて構造を強化する事は重要な事ですから、室内の天井・壁・床を壊すような工事になってきます。

構造を補強する事が「嫌だ」という人はいないと思いますが、それなりの工事になっていくので、予算を含めて考えなければいけません。

 

3)どんな姿にしたいのか?

構造補強するとなれば、ある程度室内を壊す必要があります。

そうすると構造材が見える「スケルトン」状態になります。天井がなく上の階の床の下地や梁が見える状態です。

それを「かっこいい!」とか「特に気にならない。天井が高くなって気持ちいい」と考える人には、「スケルトン」状態にするのは構造補強もしやすくうってつけですね。

それを「嫌、好きじゃない」人は、天井を作り直さないといけません。その分費用も掛かりますが、(やはりここでも)好きでもない上の階の床下を見て後悔するより健全です。

 

4)古さを温かい気持ちで見られるか?おおらかにな気持ちでいられるか?

昔の家は、今の法律や考え方と違い「家は風が抜けたほうがいいんだ」という思考があります。大規模に改修しない場合、家のほとんどを「そのまま」使う事になります。

昔の家は、やはり隙間が多く、寒いです。古いアルミサッシなんてまったく気密性がありません。断熱材もありません。あっても建築時の大工や工務店がその重要性を理解してなく(←これは仕方ない事です。誰もが「断熱気密」を理解していなかった、いや大量生産大量消費の時代に誰も気にしなかったのですから。)、断熱材の意味もなく壁の中をすきま風ビュウビュウ。とはいえ、仮にクロスを張り替えだけで(当初は)隙間が減るので「なんだか前より暖かくなった」ように気になります。年月が経ってクロスの継ぎ目が少しずつ開き、いつの間にか「隙間が復活」していても住んでいる人はその変化に気づきません。「なんか寒い」程度で。

ともかく、古い家の場合、隙間を埋めていく事だけでも温かさが改善します。古いアルミサッシの室内側に「内窓(インナーサッシ)」をつけるとかなり改善します。

手をかければそれなりに改善するのを楽しめるくらいの気持ちがあると、最新の「エアコン1台で快適な家」などと比較し後悔する事なく、暮らしを楽しめると思います。

古い柱の色や傷、古い建具の手間のかかる動作、今は作れないガラスやタイルや金物などなど、新築では作り出せない味わいや「時間」を楽しめるといいのですが。。

この4)は大きく言えば 1)と同じで、古い家の持つ雰囲気や味わいを好きか?という事と同じです。

 

5)完璧を求めず、自由な感覚で家を考える

個人宅でも歴史的文化財的な価値がある家をのぞき、「保存しなければ」という意識を持つ必要はありません。古くても高価なものではあるけれど、料理に例えれば「食材のひとつ」と考えてもいいのです。

数ある器の一つ、とも言えます。

あの家がこんなふうに変わった!と楽しめるのが、古い家を改修する楽しみです。新築は新築の喜びがあるけれど、「こんなふうに変わった」という楽しみ方はできません。

その家の良さを理解し残してみるのもいいし、自分の好みをどう表現するかを試行錯誤するのもいいのです。

古い家を目の前にして、これがどう変わるのか?変えられるのか?を想像するのは難しいかもしれません。元の家の構造材が残るのだからまったく自由に作れるというわけではありませんが、おおむね「自由に作れる」と思っていいと思います。どうしても変えられない柱や壁などがある時は、それを元に発想を変えてみれば、思いもしなかったおもしろい事ができるかもしれません。完璧を求めず否定もせず、自由に家づくりできるんだと、直観したりわくわくできるなら、古い家を使った家づくりはお勧めです。

 

 

新築は、構造も温熱環境も現在の基準に合うものが作れます。ゼロから作るのだから、いろんな条件をクリアーして「理想」の形を実現できます。

古い家に住む場合には、現在の法律に合うようにするのは大変な部分があります。特に地盤についてはなかなか対応するのが難しい。でも、建築法規をクリアーする事ができないから「ダメなもの」という考えもちょぅと行き過ぎに思います。この世の中に「絶対の安全」なんてないのですから。ですから、どこまで対策したいのか?という部分と、「この家に住みたい、この街に住みたい」という部分の折り合いを、ご自分がつけるしかありません。

古い家に対して、上記に書いた5つの視点に立って考えられるなら、古い家を元に家づくりを考えるのは 良い事 だと考えます。

(終わり)

 

**

築50年を超えていた家のリノベーションをご紹介。



sato*sato 2 ( サトサト2 ):築50年の家をリノベーション #50代からの家づくり



 

施主が購入したのは約・築50年の家。

 

家と言っても、1階を洋服店、2階を倉庫や休憩室として使われていたものです。

お隣りとは20cmほどしか離れてなく、雨漏りの影響が大きい箇所もあったり、いろいろ問題がありました。施主は建て替えるつもりで考えられていたんですが、裏側が崖地で建て替えるとなると法律的制約があり、思い描くものができない事がわかりました。

最初に見た時『1)その家に惹かれるのか?気持ちをつかまれるような何かを感じるのか?』というのはありませんでした。

その後「ここに住んでは?」という話しになりました。それまで住んでいたところと比べ駅近になり、お仕事が忙しいご夫婦やお子さんの通学を考えると「それもいいかも」という事になり、この家を大規模にリノベーションする事になりました。

この時点で施主の感覚は『5)完璧を求めず、自由な感覚で家を考える』に該当しました。そんな施主の様子に私も「この家をなんとかしたい!」という気持ちが起きたのです。

 

▼工事前

▼工事後

外壁塗り替え。サッシはすべて取り換え。最終的に屋根も塗り替え。


 

前の持ち主は、住宅として使っていなかったので、家に起こった事に対する危機感は薄かったのかもしれません。

特に雨漏れは相当ひどかった箇所があり、柱や梁が痛んでいた箇所がいくつかありました。シロアリもいましたし。

それ家すべてに影響してたわけではないけども、天井や壁をはがして、見て、既存の「屋根や床の構造をそのまま表しにしたい!」という気持ちに、ちょっとなれませんでした。

これが『3)どんな姿にしたいのか?』という事であり、設計の提案の方向が決まりました。

 

▼工事前

▼工事後


 

元の家は、1階の店舗の奥に台所とトイレがあり、その台所を通って2階に上がる階段がありました。風呂はありませんでした。

この家のリノベーションでは、住宅としての玄関を作り、1階に風呂、洗面、トイレ、寝室を作りました。階段の位置を奥から玄関側に変えています。2階にキッチンを作り、LDKのワンルームに変えました。

2階の窓は数も減らし大きさも小さくしたのですが、ワンルームにした事に加え新しい階段の上部にトップライトも作り十分に明るいです。明るすぎないのがまたいいのです。

 

▼工事前

▼工事後


可能な限りの構造補強をしています。基礎の補強や新しい基礎の追加もしています。もちろん、断熱材もしっかり入れました。

細長い平面の家ですが、以前と比べれば、安心感が違います。

ガスストーブを使われるのですが、ストーブひとつで2階は十分に温かいと言われています。

 

その他写真はこちらをご覧ください

sato*sato 2 (サトサト2)

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