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中平卓馬 火|氾濫 展

東京国立近代美術館で開催中(2024.4.7まで)の「中平卓馬 火/氾濫」展 を観に行った。

正直に言うと、写真家の展覧会に積極的に行きたいという気持ちがあまり起きない。
でも今回は、なんとなく行ってみた。近代美術館の所蔵作品展(MOMAT展)が好きで、私にとってはそちらがメインで企画展がオマケという感覚。
なので何かを期待して「中平卓馬展」に行ったわけではなかった。
でも…
ガツんとやられてしまった。
「アレ・ブレ・ボケ」と名付けられたスタイルのモノクロ写真にも、なのだが、数々の言葉に胸をドンと突かれた感じだった。
そんな言葉をご紹介。
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1968年、「挑発する」という意味の タイトルを持つ同人誌 『Provoke』の創刊に参加します。
中平らが同誌に発表し た「アレ・ブレ・ボケ」と称される、既存の写真表現の常識を逸脱した写真は、 その「挑発」的な姿勢を体現するものでした。
創刊に際してかかげられた次のよ うな言葉には、その「挑発」が、どのような対象に向けられていたかが示されて います。
言葉がその物質的基盤、要するにリアリティを失い、宙に舞う他ならぬ今、 ぼくたち写真家にできることは、既にある言葉ではとうてい把えることのできな い現実の断片を、自からの眼で捕獲してゆくこと、そして言葉に対して、思想に 対していくつかの資料を積極的に提出してゆくことでなければならない。

『Provoke』は第3号をもって雑誌の刊行は休止する。 その後、『まずたしからしさの世界をす てろ』(1970年)の出版を最後に、同人 の活動は約1年半で終わりを告げた。


写真は本来、無名な眼が世界からひきちぎった断片で あるべきだ

1973年の評論集『なぜ、植物図鑑か』のために書き下ろされた論考 「なぜ植物図鑑か」は、新たな実践のための宣言文でした。そこでは自らの初期の写 真が厳しく否定され、「(写真家が主観的にいだく) イメージを捨て、あるがまま の世界に向き合うこと事物(もの)を事物として、また私を私として、この世界内に正当に 位置づけること」こそ目指すべき方向であり、そのための方法として「白日の下 の事物をカラー写真によって捉え、植物図鑑に収めて」いくことが宣言されます。
「なぜ、植物図鑑か」には次のような一節があります。「都市は氾濫する。 事物(もの)は氾濫し、叛乱を開始する。大切なことは絶望的にそれを認めることなのだ。そ れが出発である。」
世界と対峙することとは、世界の側からの視線が私に向かって投げ返されるこ とであり、「私の視線と事物(もの)の視線とが織りなす磁気を帯びた場、それが世界な のだ」と中平は記しています。《氾濫》は、あるがままの世界に向き合うことの困 難さを再確認する試みだったのかもしれません。
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中平は、自身の情緒を外界に投影し てきたかつての写真を否定し、自身の 内面を介在させることなく、事物を事物 のままにとらえる「植物図鑑」としての写真を目指すことを宣言した。

まずたしからしさの世界をすてろ
1960年代・・・
敗戦後アメリカに取り込まれ日本が大衆化し均質化されていく事に抵抗し異を唱え「反乱」する人達が 写真に限らずいろんなジャンルでたくさんいた。
1960年代に生まれた私がそんな空気を感じる事はなかった。よってその「反乱」に共感も理解もなく(そんなレベルではなく)、ただ表面的な「反抗的態度」になんとなく憧れを持つ程度でしかなかった。
それは、ついこの前まで。
2020年11月、東京都庁が真っ赤にライトアップされ、コロナパンデミックの狼煙が上げられた。不安と同時に違和感のスイッチが入った瞬間でもあった。
そして見えてきたのは、この世界の不確かさ。
不確かな層が幾重にも重なり「不確か」がさも「確か」であるかの様相を作り出している事を理解した。
この『中平卓馬展』を見て言葉を知り、この数年の状況が、1960年代からあったんだ!と気づかされた。
「 まずたしからしさの世界をすてろ 」
まさに今、それが必要な事だ。私たちに必要な事だ。
この言葉を見た瞬間からずっと心がざわついている。
アレ・ブレ・ボケ」というモノクロ写真にも心つかまれたのだが、その中で一番私が惹かれたのは、これ。
辻堂団地(神奈川県藤沢市)の写真。1964年から入居が始まった大きな団地。海側に、巨大な壁を作ったかのように建物が連続しているのがわかる。
高度成長期の力強さと明るさ、そして均質化の始まり。
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