月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

186.シンプル+繊細。淡路市平林貴船神社の布団だんじり(月刊「祭」2019.9月13号)

2019-09-15 08:35:01 | 屋台・だんじり・神輿-装飾の工芸、新調、改修、修復-

●淡路市野島平林貴舩神社のだんじり
少し高いところにある神社拝殿と本殿では、 宮座?の神事が行われていました。そして開いていたのは、だんじりの収蔵庫。しっかりと飾り付けがされていました。

 
 
見学したのは、敬老の日の前の土曜日(2019・09・14)です。この日はだんじりの公園内ねり回しが午後3時から、そのあと弓打ち、相撲と続いていました。次の日曜日は、かつてはだんじりを運んで別の神社の集合に参加していたそうですが、ここ何年かは人手不足で行けていないそうです。


淡路市平林貴舩神社(アクセス)
祭礼日 敬老の日の前の土日。

日曜日は野島八幡神社(アクセス)に集合していたそうですが、他の地域のだんじりが集まります(上田氏のご教示)。


●二代目黒田正勝の彫り物

目を引くのは彫り物です。黒檀彫の欄間(狭間)と井筒彫刻は播州でも活躍していた二代目黒田正勝だそうです。


↑だんじりでも活躍した黒田正勝ですが、布団だんじりの彫刻に適応するために、より人物が小さめに彫られています。


↑井筒も富士の巻狩りなど人物の彫刻が入っています。



↑井筒端は植物が複雑に入り組んだもので、向こう側が透けて見える籠彫が徹底されています。硬い黒檀をここまで彫れる技術の高さが伺えます。

 


↑さらに、金具は牡丹のまわりも一つ一つ点がうちこまれています。この打ち込みが光の反射によって微妙な濃淡がでます。

 


↑雀が斗組についています。




↑欄干の下にも、景色の彫り物があります。



●刺繍

↑水引幕は龍のシンプルな作品で、丁寧に作られています。淡路志筑の梶内製の特徴である口の黒い線がありますが、逆に梶内製の特徴である目の金の輪がありません(後に友人から教えてもらった内容によると、梶内製であっても昭和初期ころのものは、目が二重のわになっていなかったとのことで、その写真を見せてもらいました。)。高欄がけはついていません。

 


↑そして、提灯です。題材は日清戦争。清の旗が見えます。
2代目黒田正勝の活躍した時代は、戦勝祝いの雰囲気に国内が満たされていた時代です。人物ものが縫われているのも珍しいですが、日清、日露戦争の題材が残っているのはさらに珍しいものです。管理人のようなマニアが訪れた時も一様に驚くとのことです。


↑浮き物刺繍というよりも山車の刺繍に近いものですが、顔の表情はちょび髭以外は伝統的で整った顔立ちで縫われています。馬のたてがみがリアルに表現されています。地面は違う色の糸が巻きあっており、微妙な色の違いを表現しています。馬の糸が細く首のあたりはたてがみに近いところとそうでないところの色が微妙に違います。違う色のいとをより合わせて一本の糸をつくる「糸より」の技法が使われていると思われます。


シンプルかつ繊細な屋台
屋台の形態としてはオーソドックスで、華やかなものとは言い切れません。しかし、よく見ると細かいところまで細工が凝らしてあることがわかります。
一見シンプルに見えるけど、実はよくできているだんじりは味わい深いものです。

謝辞
関係者の方々が忙しい中にもかかわらず、様々なことを教えてくださりました。この場を借りてお礼申し上げます。



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