一橋MBAブログ 「くにたち」な日々

HMBA有志による非公式リレーブログ

少子化な時代

2006-09-09 11:10:46 | 人事組織のハナシ(学級委員長)
「少子化要因は育児世代の長時間労働」「1899年以来初、人口が自然減 」「厚労白書に初めて「働かせ方」 」「40歳以上の出産、2万人超える」。ネットのニュースにこんな記事が踊ります。

少子化対策。この文脈に乗ると、まず第1に考えられるのが「いかにして出生率を回復させるか」になります。そうすると労働環境の是正やら、行政の支援やらが浮かび上がってくるわけですが…。

「いかにして少子化に耐えうる社会を作るか」。これは、この間日経新聞の「やさしい経済学」の欄で紹介されていた少子化に関する記事に書かれていたことです。これも1つの考え方です。ある程度人口が減っても、経済規模を縮小すればむしろ豊かになる可能性も残ります。もちろん、社会インフラの問題や技術革新の問題など、これはこれで課題が残りますが。

さて、もっとミクロな視点から企業の人事的立場から考えるとどうでしょうか。企業自体は常に競争の渦中にありますので、単に社会的な貢献の為に競争力を犠牲にすることは出来ません。ですから優秀な能力を最大限効率的に利用するインセンティブを企業は常に持っています。優秀な人材にはできる限り長時間、高い成果を出し続けさせることが企業には有利ですし、それ以外の人材は出来る限り低コストに抑える分、長時間働かせて一定レベルの賃金を確保する。結局長時間労働のインセンティブは常に存在するわけです。

ここに中国のような成長著しい新興国があります。そこに日本に比べれば低賃金で、さらに猛烈に働く沢山の労働者がいたとします。今や世界的な競争ですから、こうした国とのグローバルな戦いは避けられません。当然、競争に勝つには賃金格差を上回る生産性を実現するか、賃金を下げて格差を埋めるか、彼ら以上に猛烈に働くか。生産性や付加価値の格差が縮まるほど、ここにも長時間労働へのインセンティブは存在することになります。

こうした必然ともいえる流れが、場当たり的な少子化対策で変わるわけもなく。だったら少子化を前提に社会を組み立てる必要もあるのかなと。ふと、そんなことを感じたのでした。