先入観なく、何気なく観ていましたが感動しました。リストの難曲「ラ・カンパネラ」をフジ
コ・ヘミングが弾いたのを聴いて、当時52歳だったのり漁師の徳永義昭さんは、この曲を弾
きたいとピアノを始めました。画面いっぱいに映る徳永さんの手は見慣れているピアニストの
手ではなく、長年漁師をしてきた武骨な分厚い手でした。それまで一日8時間もパチンコを漫
然としてきたのが一転ピアノを8時間~10時間の猛練習という日々。
子どもたちに聴いてもらうために演奏前に、恐竜(ティラノサウルス)に乗っている風の着ぐ
るみを着て、中学生には手品まで披露するサービスぶり、おそらく徳永さんはテレもあるのだ
と。そして「ラ・カンパネラ」を弾き終わるや否や拍手の嵐。今では日本各地のコンクールに
も出る程になりました。画面からはコンクール出演直前にみせる緊張もこちらまで伝わってく
るようで、そっと寄り添うピアノ講師の妻千恵子さんの物語でもあり、引き込まれました。
徳永さんの佐賀弁がとてもよく、朴訥とした人柄が実によく表れていました。コンクールで日
本各地を夫婦で回るロードムービーのようで楽しく、漫画の題材にされたのもよく分かります。
良質なドキュメンタリーでした。