神保町やネットでも文豪の初版本、希少本で高値を付けている物をよく見る、物によっては数十
万円、数百万円なんてものも見たこともあるが、私は全くそういう趣味が無いので読めれば初版
に拘らず、聴くことが出来ればアナログレコードもいつの発売とか気にならない。しかし、本書
で有名、或いはそれ程知られていない作家たちの手紙、ハガキ等が高値で取引されているという、
こういう世界があったのかと目からうろこでした。
例えば今でも絶大な人気のある太宰治は裕福な名家出身で、東京に出て自由奔放に生活し、金に
困った挙句「原稿二重売り」になりかねない愚行に走り、今でいえば10万円ほどを手に入れよう
としたが失敗し、その謝罪の四百字詰原稿用紙4枚ほどの「誓言手記」は1000万円近い値で取引
された(1994年当時)という。
日本文学に詳しいドナルド・キーン氏も有名、無名の日本人の日記、手紙の特異性を指摘してい
たが、市場での価値は高く、資料として、そしてその人となりをよく表している物として研究対
象になっているようだ。
斎藤茂吉や倉田百三という超有名な詩人、作家たちの実に男(私も含めて)と言うものはいつま
でたってもと思わせるエピソードも非常に興味深く、違った一面を知ることで、作品に対する見
方も少し変わるのでは。
著者を始め研究する人たちの熱意には頭が下がる、このことによって高尚なるものを一番とした
い文壇とは異なる面に光を当てるものだと思う。
古本探偵覚え書 青木正美 東京堂出版