誰かのエッセイ本に、飼い犬について書かれていた。”仔犬の時は、かわいい、かわいいとちやほやするくせに、成犬になると雑種とばかりに外で繋ぎっぱなし”。例によって、詳細な記述は覚えていない。ざっくりとしたイメージだけ。(そこへ来ると、ウチの犬なんて雑種ながらリビングでぬくぬくと生き、朝夕の散歩は欠かされず、常に家人にベタベタされ、嫁曰く、バブル犬である。)
犬は、ちやほやされた挙句、外で繋ぎっぱなしかもしれないが、人間も大したことはない。子供の頃は、”うちの子だけは”とばかりに甘やかされ、或いは厳しくされ、期待され、中学・高校あたりで、”夢を持つ事はすばらしい事”、”がんばれば夢は叶う”と刷り込まれ、本人も現実離れした漫画やアニメにその気にされ、大人になれば喰っていくだけで精一杯。
今みたいな厳しい時代でも、大人はやたらと、子供に夢を語らせる。息子は、どういうわけか、小学生の頃から、そういう大人受けする夢というものが無く、その種の作文や発表の際は、毎度ネタ作りに苦慮したものです。彼の、現時点での将来の目標は、”職業なんてなんでも良いから、早く、カネを稼ぎたい”ということ。一年でも早く、一円でも多く。
『そんなことを言っても、賃金が安かったりサービス残業ばかりで、世の中厳しいぞ。』
と言うと、
『それでも、カネになるのなら、がんばる。』
とのこと。別に、それ程、息子に生活苦を感じさせた覚えは無いのだが、彼がそういう想いなのであれば、それはそれでOKだと思っている。こういう事を書くと、変わり者扱いされると思うが、例えば、プロスポーツなんて美化され過ぎ。サラリーマンより収入が少なくても、俺はこの競技で一番になりたいっていう子供や中高生って、どの位いるんだろう。別に、芸能や音楽でも一緒。カネと夢とは別モンというか、本当は、真逆のハズなんだけどね。カネ持ちなアスリートって、何を語ろうが白けた目で見てしまう。
イマドキの中高生、バブル期が青春だったオレ世代の大人が思う以上に、直観的に本当の事がわかっているのかもしれない。
刷り込まれた夢なんて見ない方が良い。