時代は変われど、わが子が東大に合格したら親は鼻高々だし、早慶上智に滑り込めれば御の字だ。もっとも、大学全入時代になったからといって、有名校のレベルが下がるわけじゃない。中途半端に偏差値にこだわるより、就職に強い大学に押し込むのも一手だ。
●入り口の偏差値よりハイレベルな出口
「こんな大学で学びたい! 日本全国773校探訪記」(新潮社)を上梓した大学研究家の山内太地氏はこう言う。
「国内すべての大学(09年度現在)に足を運んだんですが、難易度が低い割に就職に強い大学が意外にあることが分かりました。共通するのは、入学後もキッチリ勉強させている点。マンモス大学にありがちな〈ほったらかし〉とは無縁なんです。無名に近い大学であっても、教員の大半は難関大OBですから、教育レベルは申し分ない。著書では16校を紹介しているのですが、特にオススメしたいのが東京都市、日本文化、清泉女子、大同、阪南の5校です」
【東京都市大学(東京・尾山台)】
旧武蔵工業大で、言わずと知れた東急グループの関連校だ。東急電鉄や東急建設などのグループ企業に毎年10人以上を送り込んでいる。代々木ゼミナールによると、偏差値は最難関の工学部機械工学科が51。
「研究室単位でOB会があり、タテヨコの結束が固い。そのツテでグループ以外の有名メーカーにも多数就職しています。文理融合型の環境情報学部はIT系にも強い。文系受験できるのですが、理工学部並みの環境で理系教育を受けられるのが売りです」
【日本文化大学(東京・八王子)】
法学部のみの単科大で、1学年はわずか200人。偏差値45なのだが、就職者の35%が公務員になる。09年3月卒業生は70人が公務員試験に最終合格した。
「公務員というのがミソなのですが、知る人ぞ知る〈警官になれる大学〉です。高校生向けの学校説明会には警察OBが来て指導にあたり、新入生への記念品が公務員試験問題集だったりと、徹底している。今春は警視庁に27人、神奈川県警に15人が採用されました」
【清泉女子大学(東京・五反田)】
最難関は文学部日本語日本文学科で、偏差値56だ。金融・保険業界に強く、例年3割がその道に進む。
「歴史ある伝統校の強みで、〈清泉枠〉を設けている企業があります。サークルレベルでは有名校の男子学生との交流も盛んで、ダンスは成蹊大、合唱は東工大と近く、くっつくことが多いようです。大事な娘に変な虫がつく心配は少ないかもしれません」
【大同大学(名古屋・南区)】
旧大同工業大で、最難関は情報学部情報デザイン学科かおりデザイン専攻。偏差値44だ。特徴的なのが1年次の担任制。学生一人一人に〈専門〉と〈教養〉の指導教員がそれぞれつき、ドロップアウトしないようにサポートする。
「学力不足だった学生を立派なエンジニアに育て上げて送り出しています。そもそも、大同製鋼(現大同特殊鋼)を中心とした地元産業界の後押しで誕生した経緯があるため、地元企業とのパイプが非常に太い」
【阪南大学(大阪・松原)】
男女問わず、CAやグラウンドスタッフの就職率が高いことで知られているが、地元企業からの人気も高い。最難関は国際コミュニケーション学部で、偏差値51だ。
「3年次に始まる『キャリアゼミ』は企業や地域社会の課題解決を目標とする授業で、地元と密接な関わりを持ちます。その流れで大学側といい関係が築かれ、地元企業が積極的に採用に動いているんです。有名大の学生をはじいてでも阪南生を採用するという企業は少なくありません」
就職がすべてではないが、徒労は小さいに越したことはない。
(日刊ゲンダイ2010年5月18日掲載)
(niftyニュース、http://news.nifty.com/cs/headline/detail/gendai-000113504/1.htm)