
横手市増田地区交流センターが主催する5回にわたる里山講座が終了した。
特に5回目の最終回では、スタッフ3名を入れて11名という少人数であったが、話の途中でいくらでも挙手して意見や質問を出しても良いという条件を出したところ、ばんばん質問や意見が出され、結局予定していた90分を超え、ほぼ2時間に渡る講座となった。にも関わらず、参加された皆さんが里山の魅力のみならず課題を自分事ととらえ、積極的に参加してくれたことが大きかったと思う。感想はまだ見ていないが、自分としてはとても満足した講座となった。
振り返れば、里山講座を提案したのは、私自身であった。
昨年度から身近な里山に起きている問題は、かなり私たちの生活に直結していると考えていたし、気候変動など大きな環境問題につながっていると考えていたからだ。
ただ、講座を開催するにあたっては、乗り越えなければならない課題も多かった。そもそも自分自身が、まとまった時間を確保してそれだけの十分な内容を話せるのか、「里山講座」などという硬いテーマにどれだけの人が集まってくれるのか、いつの時間帯にやれるのかなど。
主催者となる増田地区交流センター環境部の部会でも自分自身の気持ちや実施する意義などについて語った。幸い、部員も同意してくれた。当初は、毎月1回などという途方もないことを言い出した私であったが、さすがにそれは主催者側にとっても負担は大きいだろうということで、5回に収めることとなった。とはいえ、やはり不安は先行した。そこで、まずは、講座の時間は控えめにして1時間。内容も私が調査し続けているニホンリスの生態とニホンリスが里山に果たしている役割からスタートすることにした。リスの話なら参加者にとっても興味の尽きない話題だろうと考えたからでもある。しかしながら、現実は甘くはなかった。時間設定は、平日の夜7時から1時間ほど。6月の初旬であったが、予想通りというべきか参加者はスタッフをいれても一桁台。ただ、自分に言い聞かせた。「いったい、誰が参加者が一人でもやるのだと意気込んだのは。まして、私は、研究者でもその道の専門家でもない、地域の一人の自然大好きな人間なのだ。それでも身近なマイフィールドである真人山には、誰よりも通い続けている、そして誰よりも里山について語り合いたいという気持ちは誰にも負けないつもりだ。そう考えたらできるはずだと。」幸い2回目、3回目はスタッフも併せてかろうじて2ケタ台の参加者となった。4回目のフィールドワークは、21名の参加者となった。結局5回合わせて延べ人数の参加者は70名となった。1年目にしては上出来かもしれない。あとは内容である。今回は、リスや植物や野鳥、それに昆虫を通してその魅力や里山でのつながりについて話したのだが、触れてはいたが、松枯れやナラ枯れそれに本来出会うべきでない動物、具体的には、ツキノワグマやイノシシなどについて深く言及することはできなかった。もっとも今年のツキノワグマの出現は異常で、誰にも予想できなかったことなのだが。今後は、専門家からの知見も加えて何かしらの発信ができたらと思う。
最終回の講座で冒頭に話したことは、次のことである。
私たちは、横手盆地の中に住んでいる(実際、参加者は皆そうであった)。では、いったん外に出てみるとどちらの方角を見るであろうか。もしかすると今日は鳥海山が見えているかなと西側を見ることが多いのではないだろうか。実際、横手盆地からの鳥海山はコニーデ型で美しく積もった雪の姿から四季の変化を楽しめる。では、東側の風景はどうだろうか。東側には奥羽山脈の前方に位置する里山が広がっている。これらの里山は、私たちの命につながる里山である。田んぼの水を潤し、扇状地系にはリンゴやサクランボなど果樹地帯が広がる。山菜やキノコなども取れる。かつては、薪炭林が取れる場所であった。子どもの遊び場でもあっただろう。それが今はどうだ。その里山の重要さはどれだけ感じられているだろうかと。
それから、1回目は170日間調査し続けたニホンリスのこと、2回目は草花や樹木など植物のこと、3回目は野鳥や昆虫に関することと進めてきた。
4回目はフィールドワークで、5回目はそれらのまとめだった。
もちろん、生き物だけを扱っているように見えてすべてが里山の機能とつながっているし、それがゆえに課題も生まれているのである。
ともあれ、今年度初の取組であった里山講座は終了した。主催者がらみのこともあり、来年もまたという確約はできないが、できたとしたらより多くの参加者を交え、それこそ参加された皆さんと意見交換しながら、自分たちの里山について考える機会がでてきたらこれほどうれしいことはない。
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