もう17年前のことになるが、プライベートでアメリカ・ヨセミテ国立公園をハイキングしたことがある。
その際、公園内にあるロッジに宿泊したのだが、フロントで部屋内は停電になっていることを知らされた。
聞けばカリフォルニアの大規模な森林火災の影響だという。
その時は、毎年のように頻繁に起こるカリフォルニアでの森林火災のことであり、日本では無縁なことと思っていた。
それから20年近くが経過したが、まさかお隣の県でこれほどまでの大規模な森林火災が起ころうとは夢にも思わなかった。
確かに身近なところでも山火事は起きていた。
ただし、それは焚火の不始末であったりたばこの消し忘れ等が原因によるものでほとんどはすぐに消し止められていた。
ところが今回の大船渡の森林火災はどうだろう。
大船渡市の外観調査によると、被害を受けた住家のうち76棟が全壊。農業や漁業の多くの作業場も全壊と判定され、全地域の避難指示があった。
原因が何であれ、あまりにも大きな被害になっているではないか。
現在は、避難指示解除が出されたが、それでもまだ避難されている方はいる。
避難所の環境状況や健康管理を思えば、自分事のように心が痛むし、微力ではあったが横手青年会議所を通じて、支援物資をお届けした。
今後は、一日も早い日常を取り戻し、なりわいを再建していくための支援が求められていくだろう。
ところで、これほどまでに延焼が拡大した要因として、どんなことが考えられるのだろう。素人ながら、樹種や環境について考えてみた。
周囲は、やはりスギやヒノキなどの針樹葉が多かったようだ。
スギやヒノキといった針葉樹は、樹皮が薄く、燃えやすい。
スギの葉は着火剤にも使われる。
それが空気の乾燥した状態ではどうなるか。
針葉樹だけではない。
様々なニュースによると周囲には落葉樹が混じっていたという。
落葉樹そのものは燃えにくい樹種もあるが、秋に落葉した葉が乾燥していたらどうなるだろうか。
また、専門家の話によると周囲はリアス式海岸のため、斜面勾配がきつい。
それが延焼方向と斜面の勾配が合った結果、延焼速度があがった可能性があるという。
さらに、地表にある落ち葉が延焼し、火の勢いが強くなると樹木の葉まで焼ける「樹冠火」というものが起こるようだ。
これによって、飛び火まで発生し、さらなる延焼が拡大したという。
斜面がきつければ消火活動も困難であっただろう。
この時期の太平洋側は、乾燥しそれでありながら強風も吹く。
様々な要因が重なったのだろう。
では、転じて私が住む日本海側特に多雪地域ではどうだろうか。
近年の温暖化に伴い、初雪の時期が遅くなったり雪解けが早まったりしている。
それに異議を唱える方でも近年のソメイヨシノの開花が早くなったり紅葉の時期が遅くなったりしていることは否めないだろう。
つまり、乾燥する期間がそれだけ長くなっているのだ。
まして、近年の夏場の猛暑は、異常を通り越してもはや日常になりつつある。
台風もまた年々巨大化しつつある。
つまり森林火災の起きやすい、広がりやすい条件が増加しつつあるということだ。
現に、近年は先述したカリフォルニアのみならず世界各地で大規模な森林火災が起きていることはニュースで知られる通りである。
このままで推移すれば世界の森林はどうなるのか。
国連環境計画(UNEP)が2022年に発表した報告書がある。
それによれば、地球温暖化によって森林火災の発生リスクは2030年までに14%、2050年までに30%に急上昇、2100年には50%に達するとされている。
今回の大船渡森林火災は大変な事態であった。
同時にこれはどの地域でも起こりうる事象だと捉えられないだろうか。
※手前みそな宣伝になりますが、5月31日午後1時半より横手市十文字庁舎において、「多面的な森林機能」も含めた「あきた里山サミット」を開催します。シンポジウムでは、森林組合の方も発表されます。今の森林や里山について考える良い機会だと思います。どうぞ、たくさんの方においでいただきたいと思います。