いまし昇る秋の日へ摩訶般若波羅蜜多心経
山へ空へ摩訶般若波羅密多心経
山へ水へ摩珂般若波羅密多心経
心中が見つかつたといふ山の蜩よ
月から風が、籐椅子の酔心地
蜻蛉去れば蜂が来る書斎静心
凧を空に草むしりをる静心
お信心のお茶のあつさをよばれる
神信心も秋晴るゝ野に酔醒めて
炎天のポストへ無心状である
霙ふるポストへ投げこんだ無心状
水がちろちろ馬は一心に草食めり
青葉の心なぐさまない
抑ゆ心我のみに蠅のまつはりて
思ひはぐるゝ星月夜森の心澄む
衣かへて心いれかへて旅もあらためて
地図一枚捨てゝ心かろく去る
徹夜ほのぼの明けそめし心水仙に
燈油尽けは心食む夜と五月雨るゝ
山鳴り強き夕心うち納めたり(猟終る)
心あらためて土を掘る
心おさへて爪をきる
心とけた夕べの水をまく
心やゝにおちつけば遠山霞かな
凩のふけてゆく澄んでくる心
砂利を踏む旅の心
秋の風一茶心に思ふやう
心からしなのゝ雪に降られけり
長き夜や心の鬼が身を責(せめ)る
鳴雲雀水の心もすみきりぬ
寐心(ねごころ)や膝の上なる土用(どよう)雲
青梅や捧-心(ほうしん)の人垣を間(ヘダツ)
琴心(きんしん)もありやと撫(なづ)る桐火桶
月天心貧しき町を通りけり
燈心の細きよすがや秋の庵
みじか夜や同心衆の河手水(かはてうづ)
ゆく春やおもたき琵琶の抱心
夜を寒し寝心とはむ呉服町
折くるゝ心こぼさじ梅もどき
草の戸の心にそまぬ糸瓜かな
裾に置(おい)て心に遠き火桶哉
掴みとりて心の闇のほたる哉
冬ごもり心の奥のよしの山
椎の花の心にも似よ木曽の旅
野ざらしを心に風のしむ身哉
義朝の心に似たり秋の風
うら見せて涼しき瀧の心哉
夏馬の遲行(ちかう)我を繪に見る心かな
四つごきのそろはぬ花見心(ごころ)哉
朝よさを誰松しまの片心(かたごころ)
葉にそむく椿の花やよそ心
秋ちかき心の寄(よる)や四畳半
あこくそ(阿古久曾)の心もしらず梅の花
幾霜(いくしも)に心ばせをの松かざり
魚鳥(うをとり)の心はしらず年わすれ
落つかぬ旅の心や置火燵
中々に心をかしき臘月(しはす)哉
しばしかくれゐける人に申遣す
先(まづ)祝へ梅を心の冬籠り
夕顔の花に心やうかりひよん
石に腰を、墓であつたか(秋葉山中)
芽ぶく曇りの、倒れさうな墓で
山に白いのは新らしい墓で
なんとなくあるいて墓と墓との間
雪ふりつもる有縁無縁の墓と墓
小春日有縁無縁の墓を洗ふ
松のなか墓もありて
横浜居留地
夕風に外人の墓はいよいよ白かり
うらは山で墓が見えるかなかな
島にも家が墓が見える春風
はるかに墓が見える椎の若葉も
落葉松落葉墓が二つ三つ
小春日をあるけば墓が二つ三つ