心愛(みあ)ちゃん事件が痛ましい。
千葉県野田市の小学生、栗原心愛ちゃんが実の父親から真冬に冷水シャワーを浴びせられるなどの虐待を受けて亡くなった事件である。
生前、心愛ちゃんは学校で実施されたアンケートを通じて教師に助けを求めていた。
「お父さんにぼう力を受けています。(中略)先生、どうにかできませんか。」
B4のアンケート用紙の冒頭にはこう記載されていた。
「ひみつをまもりますので、しょうじきにこたえてください」
「なまえをかきたくないばあいは、かかなくてもかまいません」
それでも心愛ちゃんは正直に自分の名前を書いた。
学校からの通報を受けて児童相談所も心愛ちゃんを一時保護するなどしたが、野田市教育委員会は怒鳴り込んできた父親の剣幕に脅え、児童相談所に相談することもなく、「ひみつをまもります」と約束したはずの心愛ちゃんのアンケートを父親に見せた(コピーを渡したとの報道もある。)。
父親は心愛ちゃんに「あのアンケートに書いたことは嘘です」という内容の書面を書かせ、これを児童相談所に提出。
児童相談所は「心愛ちゃんの本心ではない可能性が高い」と判断していたにもかかわらず、一時保護していた心愛ちゃんを両親のもとに帰した。
その後、心愛ちゃんはエスカレートした父親の虐待でわずか10歳の命を奪われた。
父親の逮捕後、母親まで父親の虐待に加担していた事実が発覚。母親も逮捕された。
心愛ちゃんには1歳の妹がいる。
時を同じくして麻生副総理が少子高齢化問題に絡み「子どもを産まなかった方が問題」と発言、その後謝罪に追い込まれた。
麻生さんの発言の経緯についてコメントすることは今回の記事の目的ではないので割愛するが、いまさら失言大臣に言われるまでもなく、この国の出生率は絶望的に低い。
街角や路地裏から子どもたちの遊ぶ声が消えて久しい。
若い夫婦が子どもを育てられるような環境にない、
子育てを支援する社会的な体制が整っていない、
社会全体が「自分さえよければいい」という風潮に覆われ、苦労することが分かっている子育てをしようとする人自体が減った、
いやいや、そもそもこんなお先真っ暗の借金大国で子どもを作ろうなんて考えない
等々、いろんな人が、いろんな所で、いろんな原因究明や対策を論じておられるので、興味がある人はググってご自身で勉強されたい。
さて。
昔こういう話を聞いた。
子どもというのはこの世に生まれてくる前は皆、天国にいる天使だ。
時が来ると、神様に呼ばれて尋ねられる。
「お前が生まれる予定の家庭はこういう家庭だ。お父さんはこういう人。お母さんはこういう人。兄弟姉妹はこういう人。さて、お前はこの家に生まれたいか?」
どれほど貧乏で、どんなに苦労ばかりの家庭でも、両親が将来離婚することになっていても、兄弟姉妹が将来犯罪に走ることになっていても、天使たちは、
「はい!」
と喜んで答えるという。
それほどの覚悟をして、それでも自分たちを親として選んで生まれて来てくれたのだから、親は生まれてきた子どもを全力で愛さなければならない。
命に代えても子どもを守り抜かなければならない。
どれほど不幸な運命を定められていてもこの国に生まれてきてくれたのだから、社会は、全員で、全力で、子どもたちを愛して、守らなければならない。
子どもは、すべてに優先する。
かつてオードリー・ヘップバーンは言った。
「子どもより大切なものって、この世にあるんでしょうか?」
心愛ちゃんは、父親と母親に殺された。
助けを求めた教師と教育委員会には裏切られた。
児童相談所は父親の嘘を知りつつ、心愛ちゃんを地獄に送り返した。
「お前は学校の先生には見捨てられる。社会には裏切られる。生まれて10年で実の両親に殺される。
それでもあの日本という国の栗原という家に生まれたいか?」
と神様に尋ねられて、天使だった心愛ちゃんは、
「はい。それでもいいです。」
と答えてこの世界にやって来た。
別に見てきたわけではないのでここから先は私の推測だ。
実は、最近、あまりに下界の荒れようが酷いので神様と天使の問答に新しいルールが導入されたんじゃないだろうか?
「自分が生まれる国と家庭の様子を聞いた天使には、
『私、生まれたくありません。この天国にいます。』
と出生を拒否する権利を認める」
子育て制度を充実させても、評論家や国会議員がどれだけ議論を重ねても、この国に子どもが増えないのは、こんな新ルールが天国にできたからじゃなかろうか?
私が天使なら、こんな世界、こんな国、こんな大人たちがいる世界に生まれたいとは思わない。
心愛ちゃんの死に責任を負うすべてのクソ野郎な大人たちと、私を含むすべてのクソったれた社会へ。
恥を、知れ!
心愛ちゃん、ごめんな。
もう、天国に着いたよね。
また神様に問われたら、今度は遠慮なく言っていいよ。
「神様、私、そんなところに生まれたくないです。」
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