横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

葛根湯

2012-10-03 21:49:29 | 映画・テレビ

今日は1日ぐずついた天気でした。予定を変更して映画を見ました。ハンガーゲーム。昨年”ウィンターズ・ボーン”で凄い演技を見せたジェニファー・ローレンスが主演ということと、アメリカで大ヒットしたということで、期待はしていましたが、期待以上でした。この季節は、雨が降るごとに、だんだん涼しくなっていきます。あまりに長く暑さが続いたので、最近ブログで天気の話題が多くなりすぎています。天気の話題は無難な話題ではありますが、長い夏の話は、これで最後にしましょう。

数年前から漢方薬の勉強はしているのですが、飲み込めないところがあり、今のところ実際の診療では、ごく限られた使い方しかしていません。ある勉強会では、漢方治療を専門にされている講師の先生おふたりが、ひとりの患者さん(と言っても、一般の方ではなく、主催会社のスタッフの方)の診断を実演してくださり、おふたりの先生がその患者さんの証について全く違う診断をされていたので、専門家にも難しい証の診断が、専門家でもない者には無理ではないか、とも思えました。

正しい診断をすれば効くのかも知れませんが、普通の薬のようにはっきりした効き目が確認できる漢方薬は少なく、また漢方薬にも副作用はあるのです。しかし、一般の薬ではなかなか治らない病気というものはあり、また効く薬があっても薬を飲むことを心配され、漢方薬なら安全ではないかと考えられる方も多いので、何とか診療の中に取り入れられないかと、機会があるごとに勉強はするようにしています。専門家のような東洋医学的なアプローチは無理でも、漢方薬の有効成分から、西洋医学的なアプローチも可能ではないかとも思っています。

たとえば、麻黄です。麻黄の主成分はエフェドリンで、その作用機序もはっきりしています。エフェドリンは、交感神経興奮作用によって気管支を広げ、鼻の粘膜の腫れをひかせ、血圧を上げ、また筋肉の燃焼性と機敏さを上げるとも言われます。麻黄から抽出されたエフェドリンを、直接喘息や鼻づまりの治療に使うことは、他の薬がいろいろある現在、西洋医学では使われなくなっていますし、アメリカでダイエットのために多くの方が用いてたエフェドラという薬は、重い副作用が出たため、販売禁止になりました。エフェドリンは、覚醒剤の原料にすることもできます。このような薬ですので、麻黄の効果は即効性もあり、風邪の初期に麻黄が主成分のひとつである葛根湯を服用すると、非常に有効で、飲んですぐ悪寒がおさまり、元気が出ます。しかし一方、麻黄湯はインフルエンザに保険適応がありますが、高熱が出て体力が落ちているとき、これを服用して副作用は心配ないのでしょうか。

葛根湯は、桂枝湯(桂枝:シナモン、芍薬:シャクヤクの根、生姜:ショウガ、大棗:ナツメ、甘草)に麻黄と葛根(葛の根)を加えたものです。したがって、エフェドリンの他に、ジンゲロール(ショウガに含まれるカプサイシン様のもの。カプサイシンは唐辛子の辛味成分。感覚神経の神経伝達物質を枯渇させる働きがあり、感覚神経を介するいろいろな症状を抑えることが期待される)、グリチルリチン(甘草の甘み成分。甘草には他の薬効もあるそうだが、葛根湯に含まれる量では、それは期待できないか)、桂皮酸(桂皮は香料のシナモンのこと。漢方では温熱の作用があるとされる)、ダイゼイン(葛に含まれるイソフラボンの一種。エストロゲン様の作用がある)などが含まれます。これらの作用は、エフェドリンほど顕著には現れないので、実際の風邪に、どのような効果があるのかはっきりは分かりません。

自信を持って漢方薬を使いこなせるようになるには、まだ勉強が必要なようです。

 

 

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