1993年の6月、留学から帰国して大学で仕事をしているころ、フィラデルフィアで学会がありました。ヨーロッパの国際学会では、英語が母国語ではない先生方も多いので気が楽なのですが、アメリカの学会で発表するのは初めてで、けっこう緊張したものです。懇親会はフランクリン協会科学博物館で行われたと記憶しています。ヨーロッパの学会でも、ノーベル賞の記念舞踏会の会場とか、古城の中とか、工夫が凝らされた懇親会に出たことがありましたが、博物館で懇親会というのは初めてでした。
フリータイムには、独立記念館も自由の鐘も見に行かず、一路美術館へ。フィラデルフィア美術館の正面階段は、映画ロッキーでトレーニング中のロッキーが階段を駆け上がっていくシーンで有名です。展示されている作品ではルノワールが印象的でした。しかしもっと印象的だったのは、館内のレストランです。実は、隣接するカフェテリアと間違えて入ってしまったのですが、美術館の中にこんなに本格的なレストランがあるとは。美術館内のレストランとしては、私の知る限り最高です。その分、値段も高かったと思いますが。
学会が終わったあとも、7-8月には夏休みをとらないという条件で、数日余分に休みをもらいました。鉄道(アムトラック)でニューヨークへ。ニューヨークでは2泊して、昼は美術館(メトロポリタン、MoMA:ニューヨーク近代美術館)、夜はブロードウェイのミュージカル(オペラ座の怪人、レ・ミゼラブル)。メトロポリタンはルーヴルや大英博物館と並ぶ巨大ミュージアムです。そしてMoMAには、好きな絵がいろいろありました。
その後ナイアガラを見物して、国境を越えカナダへ。トロントで一泊して、その年ワールドシリーズを2連覇することになるブルージェイズのナイトゲームを観戦。チケットはすぐ手に入ると言われていたのですが、チームの状態がよいと人気も上がります、完売でした。このためにトロント来たので、必死の思いで、スタジアム(スカイドーム)の周りにいたダフ屋から、値切ってチケットを手に入れました。
最後はミネソタへ。ミネアポリスには、Dr.パパレラという耳科学の大家がいて、彼のところには当時、大学の後輩で現在独協医科大学の教授になっている春名先生と、私がスウェーデンでお世話になり、今はカロリンスカ研究所・フディンゲ病院の教授になっているDr.Pontus Stiernaがいました。縁のあるふたりが、同じところにいるのですから、訪ねないわけにはいきません。ミネソタではパパレラの”神の手”の手術や研究室を見せてもらいました。
充実した旅行になりましたが、この時以来アメリカには行っていません。