女子はアザレンカ、クヴィトバをはじめとした新世代の台頭、男子は相変わらずの4強の強さが目立った全豪でしたが、なんと言っても錦織選手の活躍が、本当に嬉しいものでした。
2008年の春にツアー初優勝で突然注目され、その年の全米オープンでもベスト16になった錦織選手でしたが、その後2009年春に肘を故障して、ほぼ1年間試合に出られませんでした。2010年の春には、ランキングが付かない(ポイントが0点)状態でしたが、この年は下部ツアーのチャレンジャーで3大会で優勝してポイントを稼ぎ、全米でもベスト32となり、半年でランキングを100位台に戻しました。
そして昨年2011年秋、上海マスターズで準決勝まで、スイスインドアではジョコビッチを破って決勝まで進んで、ランキングは20位台になりました。もともと強かったフォアハンドだけでなく、バックハンドも強い球が打てるようになっており、鋭い角度のあるショットからオープンコートに打ち込むパターンが目立って多くなって、身長が低いのをカバーしようとして多用したというエアーケイも、もう必要なくなっていました。
昨年秋行われた、かつての世界2位である中国系アメリカ人のマイケル・チャン氏と錦織選手の対談は面白かったです。チャン氏は公称175cmですが、錦織選手と並んでもかなり低く、170cmそこそこの身長だと思われます。錦織選手の、アジア人の身長が低いのでという質問に対してチャン氏は、”高い打点からビッグサーブを打つことはできないので、自分が何ができないかは認識しなければならない。しかし、背が低いことは、素早く動けるので、テニスには有利なのだ。”と答えていました。
また、スイスインドアの決勝でフェデラーに対して、君は大きなミステイクを犯したと指摘。”フェデラーを尊敬し、試合ができるだけでワクワクすると、試合前に語っていたが、とんでもない。コートの外なら尊敬することもかまわないが、コートの中では、相手が誰であってもただのじゃま者だ。優勝するのは自分だ。じゃませずにどけ。今までの実績など何も関係ない、今現在は一対一で向かい合う、対等な関係なのだ。”と思わなければならないと。
この全豪では、サーブが素人目に見ても昨年秋に比べて格段に良くなっており、ビッグ4以外なら、互角以上に戦える力を見せて、ベスト8です。360ポイントを得て、昨年の全豪ベスト32で得た90ポイントが消えるので、差し引き270ポイントが加算されますから、来週のランキングは20位以内が確実です。昨年前半はさほど勝っていなかったので、今年の前半は失われるポイントがあまりなく、勝てば勝つほどランキングは上がりますから、秋までにトップ10入りも、現実的な目標です。昨年秋のポイントの貯金が消えていく秋以降が、錦織選手の本当の勝負になるでしょう。楽しみです。
そして、全豪は、ジョコビッチとナダルの、6時間に及ぶ死闘で、幕を閉じました。解説者が、”限界までやることは誰にでもできる。勝負は限界をさらに超えたその後だ。”という、アイルトン・セナの言葉を引用していましたが、まさにそのような試合でした。錦織選手が、彼らのレベルに届く日が、いつか来るでしょうか。