東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

Relocation stressについて(朝の勉強会)

2015-07-06 01:57:44 | 勉強会
 一昨日の勉強会での内容をアップします。Relocation stressについて、外山先生がやってくれました。ちなみにリロケーション・ダメージという言葉は、英語ではないそうです。療養の場所が変わることによる高齢者への影響に関してよく使っていた言葉だったので意外でした。


 <Relocation stress について>
★Relocation stress syndrome:「別の環境に移ることの結果生じる生理的精神的な混乱状態」(Carpenito)。NANDA看護診断名としても採用。
Major characteristics(80-100%に出現):孤独、不安、抑うつ
Minor characteristics(50-79%):食習慣、睡眠パターンの変化、依存、危機感・不信の表出、胃腸障害、言語的な要求の増加、焦燥、悲嘆、引きこも                りなど

★リロケーションの悪影響出現と関連する因子・システマティックレビュー(Jolley et al, Age and Ageing 2011)
個人因子:男性、高齢、認知症、うつ病、不安、引きこもり、退行、視覚・聴覚障害、モビリティ低下、失禁、マルチプロブレム
状況因子:突然もしくは無計画の転居、医学的・心理社会的ニーズへの対応不良、つなぎの住居を経由する複数回転居、ケアの不連続、居住者や家族と      の相談の欠如、権利と選択肢についての情報提供不足、転居後の3か月間

★認知機能の保たれた高齢者のリロケーション・マネジメントに関するガイドライン(Heartz et al, J Gerontol Nurs 2007)
リスク因子:高齢(とくに80以上)、女性、低い社会経済状態(SES)、独居、賃貸居住、地方居住、在宅支援サービスが制限、世帯維持が重荷、自身や配偶者に慢性疾患あり、ポリファーマシー、最近の入院や施設入所、喫煙、運動不足、ADL・IADL低下あるが援助がない、視覚聴覚などの感覚障害、家族介護者などのソーシャルサポート不足(死別や離婚含む)
・・・・・原因?結果? 概念としてはまだ未成熟といえるか?

★高齢者において、転居は死亡率の上昇と関連(Laughlin et al, J Gerontol Nurs 2007):
突然のナーシングホーム閉鎖に伴い、リロケーションした高齢者とリロケーションを経験しないホーム入居者の比較。一年後の死亡数は転居+:38/83、転居-:17/90→転居そのもののみが死亡リスクと関連
★終末期患者は転居によるストレスにさらされるリスクがより高く、生命予後は新居に順応するまでに要する時間より短い(Porock, Palliat Med.1997)

★一般住宅に住む80代高齢者の、施設でない一般住宅への転居 と関連する因子(Grambom et al, Eur J Ageing 2014):
①清掃行為が自立している、②Perceived Functional Independenceが高い、③もともと戸建居住(集合住宅でなく)



 今回はリロケーションによる悪影響に関連するリスク因子などを中心にしらべてくれたようですが、実際にどのようにそのような悪影響を少なくしていくかの検討もあるようで、今後また勉強会などでやってもらいたいなあと思いましたし、やっていただけるとのことでした。実際に、在宅の患者さんで、療養の場について患者さんやご家族とお話しするなかで、今後施設も考慮している場合には入所もできる施設へのデイやショートをすすめたりすることもあります。急な入所などをきっかけに体調を崩したり、入院したりする方も時に経験するからです。「ならし」は大事だなと感じています。今回の勉強会では、リスク因子は多すぎるなと感じましたが、虚弱高齢者・認知症がある患者さんに関しては常にそのようなリスクがあるということかなと思いました。
やはり、そのような患者さんに関しては、折をみて療養の場について家族含めて相談していき、今後を見据えた在宅サービスの調整をしていくことが重要なのかなと感じました。今後の療養の場の話をどのようなタイミングで診療の場でしていくかも重要な課題ですよね。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿