東埼玉病院 総合診療科ブログ

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認知症のスクリーニングの利益と害について考える

2020-04-23 19:11:28 | 勉強会

診療を行っていて、認知症のスクリーニングを行うことの意義について考えさせられることがあり、認知症のスクリーニングの利益と害について、勉強会で調べてみました。

 

<認知症のスクリーニングの利益と害について考える>

  • USPSTFは、地域在住の65歳以上の高齢者に対する認知症のスクリーニング検査に関するエビデンスは不足していると結論    (JAMA 2020)
  • Fowler NRらの報告(J Am Geriatr Soc 2020)

  インディアナ州、プラマリ・ケアセッティングの65歳以上の患者4005名を対象としたRCT

  2008名を介入群としてMemory Impairment ScreenかMini-Cogでスクリーニングを行う(コントロール群は1997名)

  結果:12か月後の健康関連QOLで有意差なし(P=0.81)

     1か月後のうつ、不安の症状にも有意差なし

スクリーニングの利益や害は現時点でははっきりしないが、利益も害もないかも? いずれにしてもエビデンス不足 個別性が大事?

  • どのような人にスクリーニングの害についてより気をつける?

 ★Boustani MAらの報告(J Am Geriatr Soc 2011)

 インディアナ州、プラマリ・ケアのクリニックに通院中で認知症の介護経験がある81名と経験がない125名(ランダムサンプリング)を対象に調査した横断研究

 結果:年齢・性別・人種・教育などを調整して解析した結果、介護経験群は非経験群と比較して、認知症スクリーニング検査に対してacceptance scoreがより低く、 suffering scoreがより高かった。

 認知症の介護経験は、認知症スクリーニングを受け入れに影響を与えるかもしれないと結論。

 ★Stites SDらの報告( J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci 2017)

 Penn Memory Centerの患者で認知機能正常、MCI、軽度のADを含む259名を対象とした研究。

 結果:MCIやADの診断を認識している人は、認識していない人と比べて、QOLや幸福感が有意に低かった。また、今後悪化することを予測している人は、そうでない人と比べて、QOLが低く、より高いストレスを抱えていた。

 MCIやADという診断のラベルや予後を認識している人は、そうでない人と比較して低いQOLとなっていたと結論。

認知症の介護経験があったり、識があるような人にはスクリーニングの意義を考えて慎重に行う必要あり?

 

  • 診断後のことも考えてみる⇒MCIや軽度のADに対して介入することはそもそも意義があるのか?

 USPSTFによるシステマティックレビュー(2020)

 MCIや軽度~中等度の認知症に対しての介入をレビュー

 薬物的介入:AChEIsやメマンチンは、軽度~中等度の認知症(特にAD)においては認知機能スコアの改善を認めるが、臨床的に意義があるとは言い難い程度である。

 非薬物的介入:介護者への複合的な心理的教育的な介入は、介護者の負担やうつの軽減に少しの利益を認めた。

cognitive stimulationは、MCI・認知症ともに短期間の認知機能の改善は認めた。

これらの介入の臨床的な意義については、まだ明らかでないと結論。

 

今回、調べてみて思ったのは、それぞれの患者さんにおいて、認知症の診断をつけることの意義を今一度考えることが必要だなと思いました。また、害について、個別に医療者が自覚的に考える必要があるのではないかと思いました。

そのうえでのスクリーニングであり、画一的にスクリーニングすることには慎重でありたいなと感じました。


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