東埼玉病院 総合診療科ブログ

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虚弱高齢者において可逆的な経口摂取不良は?

2016-01-06 18:40:28 | 勉強会

 在宅や施設の患者さんたちの「食べられない」という問題は非常にコモンなプロブレムの1つです。当然、認知症や老衰、がんなど病状の自然経過に伴って食べられなくなっている場合も多いのですが、それ以外に可逆的な原因で経口摂取不良になっている場合もあります。経験的にはいろいろあるのですが、今回はその裏付けも含めて勉強会で調べてみました。

<虚弱高齢者において可逆的な経口摂取不良は?>

•Landiらの報告(J Am Med Dir 2013)

イタリアのナーシングホーム患者1904例が対象。12%に食欲低下や経口摂取不良認めた。多変量解析で、咀嚼の問題・便秘・PPI内服・オピオイド内服・うつ病などが2倍のリスクであった。 

•Mudge AMらの報告(Clint Nutr2011)

65歳以上の入院患者134例が対象(平均年齢80歳)。経口摂取低下に関連する因子として多変量で、がん・感染症の診断、せん妄。

•Engel JHらの報告(J Am Med Dir 2013)

60歳以上の施設入所者292例が対象。うつのスコアと食欲不振のスコアとの関連について調査し、うつと関連あり。

•Lee JSらの報告(J Nutr Elder 2006)

ADLのよい70~79歳の高齢者が2169例が対象。12%に食欲低下。多変量で、視力障害・うつ・喫煙・咀嚼の問題が関連あり。

 

 これらをまとめると、(横断研究が主なので因果関係の解釈は慎重にする必要があるとは思いますが・・・)

 便秘・うつ・薬・せん妄・視力障害・咀嚼の問題などは可逆的となりうるか。(ただし、それらに介入して改善したというような研究はみあたらず)

 これらは普段、自分たちも経口摂取不良の患者さんをみたときにチェックする項目として、よくカンファレンスでも話題になる項目だなと感じました。

•それでは、食形態の調整はどうか?

Nieuwenhuizen WFらのシステマティックレビュー(Clint Nutr2010)

経口摂取を促進する食形態→少ない量・高カロリー・液状のもの

•ポジショニングの調整は?

文献見当たらず・・・探し方の問題?

•環境要因(食べる場所や状況)に関しては?

Pilgrimらのレビュー(Nurs Older People2015)

環境を改善することは重要であるが、食事の際の環境がどのような改善を及ぼすかを検討した研究はない

ただし、上記のNieuwenhuizen WFらのシステマティックレビューで、施設でのテーブルクロス・いい食器の使用、(他者が容易に邪魔しないような)守られた食事の時間は、体重増加や経口摂取量の増加をきたしたという報告はあり。

 

 経験的には、食事の際の環境は、高齢者、特に認知症がある患者さんに関しては重要ななのかなと感じています。経口摂取不良でも、自宅や施設に帰ると摂取量が上がる患者さんは結構多いように感じます。高齢者の「食べられない」という問題は今後さらにコモンプロブレムとなると思うので、ノウハウを蓄積していきたいものです。

 


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