東埼玉病院 総合診療科ブログ

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がん性疼痛に対する鎮痛補助薬の使い方

2017-01-07 15:02:20 | 勉強会
 11月に短期間の緩和ケア研修に行っていた斎藤先生が、その時の臨床経験をもとに文献的な考察も加えてまとめてくれました。今日はその内容をのせたいと思います。
 
 
<がん性疼痛に対する鎮痛補助薬の使い方>
 
◎抗けいれん薬 
作用としてはガバペン®>リリカ®
鎮痛補助薬の中では最もエビデンスが証明されていると考えられている
 
1)プレガバリン(リリカ®)
Mishraらによる無作為化比較試験:実薬群で有意に疼痛減少、特に異常感覚に有効
開始量:25〜50mg 維持量:50〜600mg
 
2)ガバペンチン(ガバペン®)
Caraceniらによる無作為化比較試験:オピオイドとの併用で、オピオイド単独群に比べ著明に疼痛改善が認められた
末梢神経障害によく効く
開始量:若年者200mg 高齢者100mg 効果あれば少しずつ増量
※200mgで効く人、2400mg(max dose)で効く人があり読めない薬
 
3)クロナゼパム(リボトリール®)
神経障害性疼痛+『気持ちの辛さ』がある場合、気持ちもあげてくれる
 
◎抗うつ薬 
『じんじんする灼熱感』などに有効
 
4)三環系抗うつ薬
Mercadanteらによる無作為化クロスオーバー試験:オピオイドとの併用でオピオイド単独群に比べ著明な疼痛改善が認められた
アミトリプチリン(トリプタノール®)10mgより開始
ノルトリプチリン(ノリトレン®)10mg
 
5)四環系抗うつ薬
ミアンセリン(テトラミド®)若年者10mg 高齢者5mg
鎮痛補助薬以外で用いることが多い 深睡眠増加作用あり、睡眠薬無効の不眠や高齢者のせん妄予防にも効果的
 
6)SSRI/SNRI
がん浸潤による神経障害性疼痛を認める患者に対する質の高い研究論文はないが、非がん患者の神経障害性疼痛ではある程度の鎮痛効果があることが確認されている
デュロキセチン(サインバルタ®) 1C1×朝→2C2×へ増量
『何となく嫌な感覚』に効果あり 少しドキドキする程度で副作用少ない
 
◎抗NMDA受容体拮抗薬
7)ケタミン(ケタラール®)
がんによる神経障害性疼痛については、効果が否定的な無作為化比較試験もあるが、臨床的な効果は強いと考えられている
せん妄になりやすく、鎮静とともに使用することが多い
 
8)セロクラール®
特に副作用なく使用できる 6錠〜9錠分3で使用
 
◎抗不整脈薬
Ellemannらによる無作為化比較試験:神経障害性疼痛に対する有効率がプラセボに比べ有意に高い
 
9)メキシチール® 『腹腔神経叢由来の腹壁や腹膜の痛み』に効果がある
10)タンボコール® 『じんじんした手足のしびれ』に効果がある
 
■オピオイドの中では、神経障害性疼痛にオキシコドンが有効と言われている
Controlled-release oxycodone relieves neuropathic pain: a randomized controlled trial in painful diabetic neuropathy Watson CPN. et alPain 105(2003):71-78
 
 鎮痛補助薬はその患者さんにあうもの試行錯誤しながら使うことが多いかと思いますが、どの薬から使えばよいかなと迷うことも多いかと思います。経験がものをいうところでもあると思われ、個人的には非常に参考になりまいした。