東埼玉病院 総合診療科ブログ

勉強会やカンファレンスでの話題、臨床以外での活動などについて書いていきます!

家族による疼痛評価・管理について

2016-05-04 19:45:48 | 勉強会
 がん終末期の在宅医療においては、疼痛管理は1つの重要な在宅医の仕事の1つです。患者さんが十分に状態を伝えられる人であれば、直接疼痛の状況を聞きながら薬剤の調整を行っていくことになりますが、時として認知症があったり、せん妄があったりで直接患者さんから情報収集できない場合もあります。そのような場合、家族からの情報が重要となりますし、疼痛管理についても家族と協働しながらすすめていく必要があります。家族によって、だいぶ疼痛の評価や管理が異なることは印象としてあり、そこをどのようにうまく協働してマネージメントしていくかは難しい部分があると感じています。今日は以前勉強会であつかった家族による疼痛評価・管理について書いてみます。
 
 
<家族による疼痛評価・管理について>
 
•医療者は家族の疼痛評価をあてにしている?

村上ら(Palliative care research 2012):患者の訴え以外に医師が痛みの評価で重視している項目⇒「家族・介護者の意見」が88%程度(患者の「表情」の次に多い)

•家族は、本人の苦痛の評価をできているのか?

MacMillanら(Cancer Nurs 2003):疼痛・呼吸苦・便秘ともに家族のほうが(本人よりも)症状が重いと判断

•家族は、疼痛管理に関してどのように感じているのか?

Debraら(J Pain Symptom Manage 2008):Caregiver Pain Medicine Questionnaire(CPMQ)において、最も同意された内容:「鎮痛薬を投与する時に何か間違えないかが怖い」  最も同意されなかった内容:「鎮痛薬による副作用より、痛みを我慢してもらったほうが容易だ」

•家族は、どのように疼痛管理を行っているのか?

Anitaら(Journal of Palliative care 2010):「過去の経験に基づく」、「プランを戦略化する」、「疼痛に対処するよう努める」、「最もよい状況を模索する」の4つのカテゴリー   (詳細下記)

 24家族への半構造化面接をグラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した質的研究

 ★「過去の経験に基づく」

疼痛管理の以下のパズルの背景を与えている

 ★「プランを戦略化する」

“責任性を認識する” 

“疼痛管理の関係性を確立する”(Ptとヘルスケアチーム)

“疼痛や疼痛管理に対する情報を探索する”

 専門職からの情報不十分:役に立たない(副作用の情報重要) 

 家族・友人・ネット・本など複数のものから入手

 ★「疼痛に対して対処するよう努める」

 “疼痛の特徴を決定すること” 

言語的:寛解・増悪因子  非言語的:様子、表情、ムードなど

 “疼痛解放への戦略を行う” まず、薬物療法 でも薬だけではだめ

薬以外⇒「気を散らす」、マッサージ、ポジショニングなど(強くない痛みに)

 ★「最もよい状況を模索する」 パズルのはてはめ

 

 個別化が当然重要であるのは前提ですが、家族は症状を重く見積もりがちなのかもしれません。その背景には、疼痛があることに対して家族としてうまく対処できているか、また間違いなくうまくできるかといった不安もあるのでしょう。家族がそのような不安を持ちながら疼痛の評価や管理を行っていること・様々な模索をしながら対処していることをまず理解することが重要なのかなと感じます。そのうえで、薬物療法以外の対処方法などもきちんと指導していくことが重要なのでしょうね。