私は経営の神様と言われた松下幸之助さんのファンである。・・・ファン心理が高じ、中島孝志さんが主催されている“松下幸之助経営読書会”の栄えある?第一期メンバーだった。(私は夏で卒業し、現在は第二期)
この勉強会では、中島さんが集められた松下さんの秘蔵ビデオや社員向けの秘蔵文章などをふんだんに見せてもらったり、裏話をきかせて頂いたり、本だけではうかがい知れない経営者の人となりをじっくり学ばせてもらった。
・・・それはさておき、
松下電器(現Panasonic)が大赤字というニュースを見て、他人事ではあるが、あの天下の松下電器でさえ苦しんでいる・・・ということに少し驚いた。
ロイター(10/31)の記事によると
パナソニックは31日、2012年3月期の連結最終損益(米国会計基準)を4200億円の赤字(従来予想は300億円の黒字)に下方修正し、2年ぶりの最終赤字に転落する見込みだと発表した。
・・・前年同期は740億円の黒字。薄型テレビ工場の処理など構造改革費用を5140億円(従来計画1100億円)に積み増すことが響く。過去最大の当期純損失を計上した02年3月期の4278億円に次ぐ最終赤字額になる。
・・・今期に実施する構造改革の積み増し分4040億円のうち、薄型テレビと半導体の改革費用で3240億円。テレビ事業の改革費用は2650億円で、パネルの 生産体制を再編し、プラズマ製造は尼崎第2工場(兵庫県尼崎市)、液晶パネル製造は姫路工場(兵庫県姫路市)のそれぞれ1拠点に集約する。
・・・プラズマの最新 鋭の尼崎第3工場の生産は休止して減損処理するほか、尼崎第1工場も設備の中国・上海への移転を中止して稼働を停止する。液晶パネル製造は、茂原工場(千 葉県茂原市)の工場を休止。液晶で唯一の生産拠点となる姫路工場は一部で減損処理する
・・・とのこと
なぜ、そこまで赤字になったのだろうか?
・・・まったくもって、余計なお世話だが勝手に考えて見た。
主力事業であるがゆえの弱み?
薄型テレビはこれまでPanasonicの主力事業だった。そのため、多くの経営資源を投入し、優秀な社員の人達が、市場分析やら、競合分析やら、他社とは比べものにならないくらい緻密にやってきたのではないかと推測される。
同時に、コモディティ化により、製品上での差別化がしずらくなったため、コスト競争に打ち勝つため、数の論理で、需要予測の上限まで製造ラインを動かし続けたのではないだろうか?
つまり、コスト競争というチキンレースをギリギリまでやってきたのである。
そこに、世界不況と、円高の波がまともに来てしまった。
主力事業としてのプライド、競合の動きへの敏感な反応、製造力によるコスト対応力。
これらは、突然弱みに変わってしまった。
主力事業であるがゆえ、大胆に生産ダウンを言い出すことは、はばかれる。
競合の動きに敏感であるがゆえ、市場より競合への対応が優先される。
製造力によるコスト対応力があるがゆえ、勝者なきチキンレースに参加してしまう。
・・・強みを盲信すると、思わぬ落とし穴に陥ってしまう。
小さな変化の兆しを見つけても、なかなか、言い出せない。あるいは、動き出せない。・・・現場は知っていても、幹部には伝わらない。・・・希望的観測が独り歩きしてしまう。
もしかして、そういう状況に、知らず知らずのうちに陥っていったのではないだろうか?
あの天下の松下でさえ、ちょっとしたことで、こういう状況になってしまうのである。
他山の石として学ばせてもらわなきゃ・・・。