いつもルーペを使ってコインを見ているが、これまでは普通の折りたたみ式の一般的な物を使用していた。
しかし夜に蛍光灯の下でルーペをかざしてみても暗く良く見えなかったし、小さなコインをつまんで見るのも不便であった。
そこで最近サンバイザー式のLEDライト付きルーペを購入。さっそく使ってコインのデティールを観察している。
今までのものより倍率が大きく、ライトで照らすことができより鮮明に細部を見ることができる。
当然、今まで気がつかなかったデティールを発見し観察するべき細部がまだ残っていたことに気がつかされ再発見となり面白みも増してくる。
安い買い物である。
絵が精緻なのは既出のロシアのコペイカ貨類。もちろん一円銀貨、モルガンなども改めて見直すと楽しい。
帝政ロシアの銀貨類についてはその精緻な文様を以前大げさに激賞したと思うが、ロシア革命以後のソ連時代の
コイン類も初期の物は帝政期の技術を受け継いでいたのか完成度は高いと思う。
年代的にいえば1920年代であろう。
ソ連のごく初期のコインは、革命直後は帝政期のコインを使用していたようだがボルシェビキの支配が強まりロシア内戦が終了するなど共産主義支配体制が整うにつれて紙幣、硬貨ともに整備されていった。(革命直後は帝政時代のルーブル銀貨の皇帝ニコライ2世の顔を削り、打刻を加えて間に合わせの銀貨を使用していた時期もあった。また、各地の反共勢力の臨時政府は独自で紙幣を印刷していた。)
1922年にロシア内戦が終了し、ソビエト社会主義共和国連邦(CCCP・エスエスエスアール)が成立。1924年に初めてCCCP名の入った硬貨が作られた。それまではボルシェビキ改め共産党はソ連邦名ではなくロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(PCΦCP・アールエスエフエスアール)での銘で発行していた。ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国がソビエト連邦内では最大の構成国家で中核であるにせよ、内戦中は極東やシベリアに白軍勢力が臨時政府を作って抵抗しており全土統一とはなっていなかった。1922年に白軍勢力を一掃し極東地域までをも支配下におさめ、1917年に始まった足掛け5年にわたる内戦を終了させソ連邦誕生となったのである。
それから少したって、1924年にレーニンは死去するが、この年に一挙に貨幣類が整備される。いずれもCCCP名入りの新しいコイン類で、堂々としたコイン類の登場であった。当時の共産党のソ連邦発足の意気込み、喜びが表されていよう。多くのロシア人が共産主義の理想を信じていた。
1924年に登場した新しいコインシリーズは、1ルーブル、50コペイカなどの高額面の銀貨類と5コペイカ以下の青銅貨類の2種に大別される。
で、今回のコインは1924年様式のソ連・3コペイカ青銅貨、2コペイカ青銅貨である。
刷新された新しいコインはリニューアルされ、ソ連邦の国章・下にCCCP表記。周囲に縁にそってロシア語「Пролетарии всех стран, соединяйтесь!」(ソ連の標語/万国の労働者よ、団結せよ!)が期待感一杯に誇らしく書かれている。
サイズも大振りに作られており堂々としたものである。ソ連の国章もキッチリとしている。ユーモアはないが勢いというか、気迫があるコインだ。表面の数字の周囲の環状の文も、麦の穂の茎が下部で交差し環状を形作っておりいい意匠だ。飾り気は控えめだが。
気迫のある堂々としたコインで気にいっている。
しかもこの1924年様式はサイズが大きすぎたと反省されたのか、わずか1年で中止。すぐ翌々年あたりからもっと小ぶりに変更され作りなおされた。なのでこの大サイズのコイン類は貴重なのだ。2コペイカ青銅貨は24mm、6.25g。3コペイカの方は27.7mm、9g。
1925年は製造がなく、1926年にはアルミ青銅貨でサイズダウンされてしまう。
1924年。登場した新型コインは堂々とし意気軒昂さを表しているが、当時のソ連はすでに陰惨な一面が蔓延していた。
GPUの暗躍と粛清、強制収容所である。すでに人権はロシア革命の時点で蹂躙されていた。ソ連はスタートから血生臭く、
犠牲を当然あるべきものと国民に強制していたし、人命は軽視されていたのである。しかも反対的な思想や発言は密告による逮捕、粛清もしくは収容所での死であった。拷問も行われていた。
レーニンは残酷な一面を持っていた。博愛主義、人権思想はなく、暴力を肯定していた。第一次世界大戦、白軍との内戦、内部抗争など抜き差しならない状況をボルシェビキを率いて革命を成し遂げるには暴力しかなかったのであろうか。
結局暴力をもって支配することをやめることはできずその手法はスターリンに引き継がれ30年代の大粛清、収容所での悲惨と第二次世界大戦中のソ連国民の膨大な人命の浪費を生むことになる。
ロシア内戦、革命後ロシアを直撃した飢饉、そして大粛清と第二次世界大戦。
正確な犠牲者数は神のみぞ知るところだろう。
長々と書いたが、こういう背景も知るとコインを深読みできよう。今一度、ルーペで眺めてみよう。また違って見えてくる筈だ。
しかし夜に蛍光灯の下でルーペをかざしてみても暗く良く見えなかったし、小さなコインをつまんで見るのも不便であった。
そこで最近サンバイザー式のLEDライト付きルーペを購入。さっそく使ってコインのデティールを観察している。
今までのものより倍率が大きく、ライトで照らすことができより鮮明に細部を見ることができる。
当然、今まで気がつかなかったデティールを発見し観察するべき細部がまだ残っていたことに気がつかされ再発見となり面白みも増してくる。
安い買い物である。
絵が精緻なのは既出のロシアのコペイカ貨類。もちろん一円銀貨、モルガンなども改めて見直すと楽しい。
帝政ロシアの銀貨類についてはその精緻な文様を以前大げさに激賞したと思うが、ロシア革命以後のソ連時代の
コイン類も初期の物は帝政期の技術を受け継いでいたのか完成度は高いと思う。
年代的にいえば1920年代であろう。
ソ連のごく初期のコインは、革命直後は帝政期のコインを使用していたようだがボルシェビキの支配が強まりロシア内戦が終了するなど共産主義支配体制が整うにつれて紙幣、硬貨ともに整備されていった。(革命直後は帝政時代のルーブル銀貨の皇帝ニコライ2世の顔を削り、打刻を加えて間に合わせの銀貨を使用していた時期もあった。また、各地の反共勢力の臨時政府は独自で紙幣を印刷していた。)
1922年にロシア内戦が終了し、ソビエト社会主義共和国連邦(CCCP・エスエスエスアール)が成立。1924年に初めてCCCP名の入った硬貨が作られた。それまではボルシェビキ改め共産党はソ連邦名ではなくロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(PCΦCP・アールエスエフエスアール)での銘で発行していた。ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国がソビエト連邦内では最大の構成国家で中核であるにせよ、内戦中は極東やシベリアに白軍勢力が臨時政府を作って抵抗しており全土統一とはなっていなかった。1922年に白軍勢力を一掃し極東地域までをも支配下におさめ、1917年に始まった足掛け5年にわたる内戦を終了させソ連邦誕生となったのである。
それから少したって、1924年にレーニンは死去するが、この年に一挙に貨幣類が整備される。いずれもCCCP名入りの新しいコイン類で、堂々としたコイン類の登場であった。当時の共産党のソ連邦発足の意気込み、喜びが表されていよう。多くのロシア人が共産主義の理想を信じていた。
1924年に登場した新しいコインシリーズは、1ルーブル、50コペイカなどの高額面の銀貨類と5コペイカ以下の青銅貨類の2種に大別される。
で、今回のコインは1924年様式のソ連・3コペイカ青銅貨、2コペイカ青銅貨である。
刷新された新しいコインはリニューアルされ、ソ連邦の国章・下にCCCP表記。周囲に縁にそってロシア語「Пролетарии всех стран, соединяйтесь!」(ソ連の標語/万国の労働者よ、団結せよ!)が期待感一杯に誇らしく書かれている。
サイズも大振りに作られており堂々としたものである。ソ連の国章もキッチリとしている。ユーモアはないが勢いというか、気迫があるコインだ。表面の数字の周囲の環状の文も、麦の穂の茎が下部で交差し環状を形作っておりいい意匠だ。飾り気は控えめだが。
気迫のある堂々としたコインで気にいっている。
しかもこの1924年様式はサイズが大きすぎたと反省されたのか、わずか1年で中止。すぐ翌々年あたりからもっと小ぶりに変更され作りなおされた。なのでこの大サイズのコイン類は貴重なのだ。2コペイカ青銅貨は24mm、6.25g。3コペイカの方は27.7mm、9g。
1925年は製造がなく、1926年にはアルミ青銅貨でサイズダウンされてしまう。
1924年。登場した新型コインは堂々とし意気軒昂さを表しているが、当時のソ連はすでに陰惨な一面が蔓延していた。
GPUの暗躍と粛清、強制収容所である。すでに人権はロシア革命の時点で蹂躙されていた。ソ連はスタートから血生臭く、
犠牲を当然あるべきものと国民に強制していたし、人命は軽視されていたのである。しかも反対的な思想や発言は密告による逮捕、粛清もしくは収容所での死であった。拷問も行われていた。
レーニンは残酷な一面を持っていた。博愛主義、人権思想はなく、暴力を肯定していた。第一次世界大戦、白軍との内戦、内部抗争など抜き差しならない状況をボルシェビキを率いて革命を成し遂げるには暴力しかなかったのであろうか。
結局暴力をもって支配することをやめることはできずその手法はスターリンに引き継がれ30年代の大粛清、収容所での悲惨と第二次世界大戦中のソ連国民の膨大な人命の浪費を生むことになる。
ロシア内戦、革命後ロシアを直撃した飢饉、そして大粛清と第二次世界大戦。
正確な犠牲者数は神のみぞ知るところだろう。
長々と書いたが、こういう背景も知るとコインを深読みできよう。今一度、ルーペで眺めてみよう。また違って見えてくる筈だ。