昨日届いた英語学会のNewsletterで、著名な言語学者
黒田成幸先生が亡くなったことを
知りました。
もちろん本人にお会いしたことはありませんが、書かれた論文はいくつか読んでいます。
特に、僕が卒論を書いているときに読んだ、
"Whether We Agree or not: a comparative syntax of English and Japanese"は
その分析の美しさに驚嘆した覚えがあります。
英語にはwh要素の明示的な移動があり、日本語にはない。
日本語は語順が自由だが、英語は決まった語順がある。
日本語はトピックが明示的に表わされるが、英語はそうではない。
日本語は二重・多重主語構造をもつが、英語はもたない。
日英語間の類型的な違いはこのようにさまざまだが、
これらをすべて、単一のパラメータの違い、すなわち
「英語はAgreementが強制されるタイプの言語であるのに対し、
日本語は強制されないタイプの言語である。」
という違いに帰することができる。
一致と移動という全く異なる統語現象を統一的に扱うというのが
とても野心的で、読んでいて本当にワクワクしました。
UCSDに留学した
友人が、黒田先生の授業を受けたというのを聞いて
羨ましく思いました。
黒田先生のご冥福をお祈りいたします。