か：はちゃん、これから「旅」にでるよ！ハヤも行くよ！
は：・・・うん？ ・・・・！たびっ！
か：今回は、ちょっと長いよ。
は：どのくらい？
か：ちょっと。４、５んちウロウロしてこようかね。
は：はぁい。かあさん、とうさん、さあいくよっ
とうさんが写真を撮る。
パソコンに取り込み、パラりと流す。一瞬、輝るハヤコの表情に視線とマウスを操作している手が止まる。
なんと、ハヤコが私に視線を向けている写真。
少し驚くほど、綺麗すぎる視線を私に向けている。
いつも、この視線と目を合わせているのに、カメラで、私でない者が撮った写真には、私からは見えない角度でハヤコの視線が写っている。
ついでに、やはり、私の表情も驚くほどやさしい。いつも思うことと一緒だ。
私は人間に同じような表情ができる自信がない。
ハヤコは、本当に、魔法の使い手だ。
ハヤコが魔法を使った写真は、秘密の写真♪
乗り気でない誘いに、断る権利も低く、意図もよくわからないまま食事会の人員の一人となっていた。
やけくそでアルコールを入ればいいという訳ではない、むしろ、アルコールは、入らなくなる。なにせ、はやく帰りたいのだから。
時間が経つにつれて、いつも使わない脳みそと精神が悲鳴をあげ始めた。
情けないことに、私は、つまらない時間を過ごす術を、あまり持っていない。普段、どれだけ勝手に過ごさせていただいているか、痛感させられる。
そんな中、思考に耽った。
ハヤコは、よく「「いいこ」でいるが、我慢をしているのだろうか？
私はハヤコに、しなくていい我慢まで強要しているのだろうか？
今の無用な我慢の私みたいに、ちっとも楽しくなく、ただ、よくわからないまま我慢をしていること、あるかな？
あるかもしれない。無用に、ただ、我慢をさせていること、それを「いいこ」と自分の悦にすり替わっていること、ある気がしてきた。
ハヤコは、賢い。
故に、ハヤコの精神を曇らせないよう、私は、もっと考えなければいけない。
疲れて帰り、ハヤコを傍にする。
私は、薄ら涙が浮かんだ。
夕方から、予報どおり雨が降り出した。
私の思考は、迷わず残業へと向かった。
ハヤコは、雨が大嫌いだ。雨の日はとかくおとなしい。
エネルギーが暴発されやすいこの季節、ハヤコにとっていくら気温が適温でも、雨はエネルギーをも湿らせる。
私は散歩に心を惑わされない。予定より少し遅めに帰宅。
やはり、ハヤコはおとなしい。
しっとり、穏やかに、なんとも女らしい。
これは、雨の日だけのこと。
雨は、ハヤコを女にさせる。
ハヤコは、扉が開くまで、待つ。
扉を開けろと、決して吠えない。ただ、扉の前で待っている。
たしかに、いつか、開く。
誰かが、いつか気づくのだ。
おそらく、平気で５分、１０分はじっと待っている。
それでも、吠えも唸りも悲鳴さえもあげない。
いつか、開く。ハヤコの自動扉。
かあさんね、はるになったのに、おそくにかえってくるの。
アタシ、かあさんがかえってきたらすごくうれしくってね、かあさんがおどろくぐらいはしったのっ！！
はるはね、ちっともさむくないからね、アタシすきなんだ。おそとにいてもさむくないの。
かあさんはね、「お目め」がいたたっていってた。
おしごと、「お目め」がいたたになるんだって。でもね、いつもは「お目め」がいたたなんていってないんだよ。
「お目め」がいたたなんだったらさ、はやくかえってくればいいのにね？？
かあさん、いたたなんでしょ？
勇、隼、ハヤ。全てハヤ。
昨日、重大な誤りに恐縮した。
ハヤコが私の犬娘となるきっかけをくれた「隼人さん」、「勇人さん」だった。
勇人さん、「ワシの字は隼でなくて勇」。
・・・うぬっ！、確かに！そう言われるとその通り！勇人さんに代り「勇人」と必要書類に入力したことあった、あった。そうだ、「勇人」だ。
勇人さん、ごめんね。
・・・しかし、なぜ「隼人」になった？？？
それが一日経った今日、分かったのだ。ああ、すっきり。
そもそも、ハヤコの名前は勇人さんのハヤから来ている。
私の犬娘となる縁をいただいた勇人さんの頭文字に女のコなので、「コ」をつけただけ。
その時は、確かに「勇人さん」だった。
ちなみに、名前の選択肢として「ヨシコ」があった。勇人さん同様に犬娘となる縁をいただいた方の芳にコ、で「ヨシコ」。うふふふふ。
それからしばらくして、ハヤコの同胎兄弟の「ハヤト君」の家族とも縁をいただいた。ハヤト君の名前は、ハヤト君のおかあさんが、俳優「市原隼人」がとてもかっこよくて好きで、「ハヤト」とつけたことを知った。
ここだ。「勇人」から「隼人」に私の頭の中ですり替わっている。
ああ、ブラザー。
勇人さん、ハヤト君、ハヤコ。
魂を感じる。
それにしてもハヤト君。市原隼人、無理がある。
ハヤコと１時間歩いた。
私は普段、車で通勤をしている。車で約１５分て距離か。
訳があって、昨日は車を借りている駐車場に置いて帰った。
今朝、ハヤコと一緒に徒歩で車をとりにいった。
私の速度できっかり１時間の距離。
前にも一度ハヤコと同じように車をとりにいったことがある。
前の時も思ったのだが、やはり今日もだ。
家を出発して３０分くらいはとても元気がいい。
出かけることがうれしくて仕方がないらしい。 私ととうさん以外の者とは出かけないくせに。
「ハヤコ、待って。」
とにかく「ハヤコ」と「待て」を口にすることが多い。
私の速度に合わせることになかなか辛抱がきかない、匂い嗅ぎも旺盛。
リードはひどく引っ張らないが、逸る気持ちを抑えきれないのだろう、常に前。
が、３０分くらい経つと、私の速度に合ってくる。さほど、私も困らない。
そうなると、リードは横。
さらに、４５分くらい経つと、ハヤコ休憩。ベロを完全に出している。
ハヤコが休憩の間、リードは後ろ。
「もうちょっとだ、はちゃん。行こう。」
ハヤコ、のそりと歩き出す。
１時間かけて車に辿り着く。ハヤコは水を飲み、自分の車ハヤ号にさっさと乗り込む。
ハヤコ、力はあるが、持続力はあまりない。
しかし、少しの時間で、また力を増幅させる。
力の消耗と回復する時間が共に短く、疲れと癒えの差が見かけ以上に激しい気がする。
ピットブルとは、可笑しな犬だ。
