ハヤコの怪力を知り切っていたつもりだった。
それは私の大きな誤認だったようだ、ハヤコはド怪力どころではない、私は心から驚いた。
秋が随分顔を出しているこの頃、ハヤコはやたらと力を生産させる季節に入っている。
これから真冬到来までのハヤコは、遊びの誘いはしつこい、私ととうさんに遊びに期待の目を光らせて、ずっと、相手にしてもらうまで誘う。
昨日の夜もそうだ。
私ととうさんは、ハヤコと少し遊んでは「終わり!」を繰り返していた。だが、ハヤコはまだまだ期待して「遊ぼう」と誘う。
私は、ついには真面目にじゃれた、「そうだ!ハヤコを羽交い絞めにしてやろう!ええいっっ」。本気でハヤコを押さえつけてやろうとハヤコとプロレスじみた行動に出た。
だいだいそういう私の行動が不可解に思われるであろうが、実はハヤコは普段、私に抱き付かれたりわざと覆いかぶさられたりすることはよくある、「ハヤコぉハヤコぉ」と私は体と心を預ける、ハヤコはいつも受け入れてくれる、のほんとしている。
だが、昨日はどうだ、ハヤコのフトンが一気にリングと化し、私は身動きが取れないようにしてやろうと遊んだつもりが、ハヤコに背負われ80㎝移動し、ハヤコには振り逃げられた。
ハヤコはそのあと、全く怒っていない私に、ごめんと、ごめんなさいと、すみませんと、近寄り肩を落として、そういう。
たぶん、ハイテンションに私を振り切ったあと「はっ」っとしたようだ。
驚く私は「怒ってないよ」とハヤコに笑って言う、だがハヤコはすまなそうだ。
私は、まさかハヤコに、犬に背負われ自身の体が浮き位置が動くなど、それも、あっという間の移動に、改めてハヤコの力の膨大さを、いや、まだまだ力を持っていることを、思い知らされた。
ハヤコは、いつも手加減してくれている、そういうことだ。
ハヤコの力は、どれだけあるんだろうか、そして、どれだけ私たちに合わせて力を抜いてくれているんだろうか。
ハヤコは、本当に、強くてやさしい。
ピットブルの力を、人間の力では、ただ力づくだけでは、制御できないよ。
だから、銃殺されたり、軟禁されたり、見捨てられたり、とんでもないことが起こる。
ピットブルだけが悪いのか?そうなのか?そうなのか?
ピットブルは、本当に強いよ、そしてやさしいよ。