あすにゃん日記

500字程度のエッセイを書きます。

天災と松ぼっくり

2019-11-25 14:22:28 | 日記
30年以内に70%の確率で起きると言われている首都直下地震。少しでも被害を減らそうと、特集番組を予告する放送局も現れた。それによると、ここ30年来、天災の件数は、どんどん増えていっているという。
 天災も病気も突然やってくる場合が多い。健康のためにいくら運動をしようと、病魔は背後から襲ってくる。
 天災もしかり。準備をしていようとしていまいと、豪雨で家が流されたり、おぼれ死ぬこともあるし、地震で家屋の下敷きになったりする。

 絶望しかけるときに思い出すのは、松ぼっくりである。

 晩秋の山に落ちているこの松ぼっくり。拾ってみればわかるように、笠は開いている。ふだんの我々と同じように、無防備そのものである。
 だが、ひとたび水の中に放り込まれると、ジワジワと笠が閉じ、数時間後には完全に、小さな紡錘形のカタマリになってしまう。
 天災に遭ったときに、我々もまた、このカタマリのように、なすすべもない。
 松ぼっくりを、水から出す。数時間すれば笠は開く。
 天災に遭おうとなんだろうと、我々は立ち直り、生き抜かねばならない、と松ぼっくりは教えてくれる。

 秋が終われば冬も近い。
 冬来たりなば春遠からじと言う。
 日本の時代の空気も、晩秋にさしかかっているようである。四季を問わずやってくる天災のために、空気が冬にならぬことを願ってやまない。