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ねじめ正一『鳩を飛ばす日』

2021年01月03日 | 書評

ねじめ正一『鳩を飛ばす日』文春文庫。

     

 昭和30年代頃の、小学生の少年を主人公とした家族の物語。

 同級生からレース鳩を貰い、家で飼う。当時は子供でも鳩を飼うことが流行った。手作りの小さな小屋で飼えたが、レースに出すとなると費用も掛かり、小学生だけでは難しかったと思う。

 両親と一人息子の三人家族の家に、父の妹の娘が引き取られて暮らすことになる。両方の家はそれぞれに混乱し、子供たちは悩みつつ成長する。そんな家族の生活や思いが丁寧に描かれている。悲しくも、温かく美しい、感動の物語である。

 ただ、レース鳩についての基本的な記述に誤りがあり、その点だけが気になって仕方がない。

 例えば、「鳩は一度に3個たまごを産む」とあるが、2個の間違いである。

 また、鳩のレースでは、帰還した鳩が小屋へ入った時が到着の時間になり、順位が付けられる、とあるのも間違いで、実際のレースでは専用のタイマーが使用される。

 その少しのことを除けば、穏やかで温かな人情あふれる、良き時代の物語に、鳩のエピソードはぴったりだと納得できます。