気紛れ書評

かなり偏りがありますが、それでもよろしければ・・・

鞄屋の娘

2006-11-20 23:53:39 | 小説(国内)
著者:前川 麻子
出版社:新潮社 (2000/06)



嫌いじゃない感じの話。

鞄職人の愛人の娘の話なのですが
鞄職人はまるで旅人のようで、ひとつ所に落ち着かない。
次の居場所に旅立てば、二度と元へは戻らない。

そういう形の家族に身を置いていた主人公は
やはり大人になって自分が家族を持つことになっても
なんだかしっくりこない。
仕事やら子供やら鞄やらのおかげで
欠けてた何かをみつけられるんだけど


全体を通して話も面白いと思うのだが
前半から中盤の淡々とした文章が長々続いていたのと
表現の仕方等がちょっと私の好みではなかった。

淡々とした感じは主人公の子供の頃から親になるまで続くが
たぶん、主人公の「欠けている」感を出したかったのだろう。
でもそれがなんだかわざとらしい気もする。分かっちゃうだけに。長いし。
そういう主人公の内面を描くのであれば、もう少し
ちがう描写で魅せてくれたらなぁと思った。

構成などはわりと好きな感じなので
そのありきたりな文章の前半が残念でした。

美人画報ワンダー

2006-11-19 21:02:44 | 女性著者
著者:安野 モヨコ
出版社:講談社 (2003/11)


シリーズ最終巻だそうで、前2巻とも読んでいた私は
かなり期待して読み始めました。


・・・
著者の考え方とか好きなので、書かれてある事はいいんだけど
今までの2巻よりも、美に対する姿勢やライフスタイルなどの話が中心で
商品や美容法やが少なかったのが残念。
私としては美容の未知のネタは何かないかな~と探すために読む本だったからイマイチでした。


構成上、今までの「まとめ」的な感じにしたほうがいいってことなのかもしれないけど。

マイ・ハウス

2006-11-19 20:43:13 | 小説(国内)
著者:小倉銀時
出版社:産業編集センター (2003/11)



表紙の絵の感じ、意外に好きです。

競売にかけられた物件をめぐっての女の戦い。

無職の旦那と引きこもりの息子と反抗期の娘のためにヘルパーとして働く(決して社員じゃない)女が
一戸建てを夢見て競売物件に手を出す一方
家族に逃げられ家が競売にかけられていることも理解できず一人で居座る女。
それらをエサに金を得ようとする女。

それぞれの切羽詰った感じや競売についてなど結構リアルですし
笑えないイタイ問題ばかりですが
登場人物の馬鹿さ加減や全体を通しての関西弁の感じなどが
あまり悲惨な感じにならず、笑える感じで読み進められます。

文体が軽いので、長編なのにすぐ読み終わってしまいます。。。
でも、中年女性の執念と悲しさを面白おかしく読めるので、楽しいとは思います。

瀬戸際のオンナたち

2006-11-18 12:02:46 | 小説(国内)
著者:梅田千津子
出版社:熊本日日新聞社 (2005/11)


自分も瀬戸際だしね~と思って戒めのために手にしました。
瀬戸際と言っても今の恋愛に対してではなく、年齢的に。。。

短編の恋愛小説。
しかも恋愛の終わりのはなし。
どれも男に騙されたりして
ちょっと惨めな女性の話。

うんうん。あるある。そーなんだよねー。
って呟きが聞こえてきそうな話ばかりです。
でも、劇的に悲惨な話もそうないので
多分これを読んで、がんばるか!と思う人が多いのでは。
その手の話、もういいよ。と途中で思っちゃう人も多いかも。
もともと連載されてたものを単行本化したものらしいから
連続して読んじゃうとね・・・さっき同じようなの出なかったっけ?とか感じてしまう。

どんなに分かっていても、好きなんだよね・・・
に尽きる本です。

調子のいい女

2006-11-18 11:46:18 | 小説(国内)
著者:宇佐美 游
出版社:新潮社 (2000/06)


表紙からして「調子いい」様子です。

女性はちょっと調子がいいくらいが可愛げがあっていいと思ってますが
たまにホントに腹が立つほど調子のいい人に出会うことがあります。

ここに描かれる女性は二人。

元銀座のホステスで男性を騙してもらったお金で留学した女性。
不倫の清算にかこつけて援助してもらい、整形と留学を果たした女性。

どっちも調子がいいように見えるけど
片方は調子のよさを最後まで貫き通せず、なぜかいつも自分が悪者に。
もう片方は人の好意をいただくだけいただいて、当たり前だと思ってる。

二人とも極端な例だけれど
完璧に調子のいい女ともいえない感じ。
多分腹が立つのは当たり前に人の好意をいただく方。
でもその女性だって馬鹿を見ることはいっぱいあって、それに自分で気付くことも無い。
あきれるけど、ちょっとかわいそう。

いい思いはしたいけれど
決して二人の様にはなりたくない。
調子のよさだけで成り立ってる人なんていないだろうけどね。


「あ~もう馬鹿なんだから・・・」
という心のつぶやきがいっぱい出てきました。
調子のよさに対してでもあり、人の良さに対してであり。

重くもないし、畳み掛けるような悲惨さもないので
安心して軽く読めます。

とことん調子のいい女を見たいなら違う本を探した方がいいかな。

水の繭

2006-11-04 23:48:02 | 小説(国内)
著者:大島 真寿美
出版社: 角川書店 (2002/07)


なんかこんな半透明っぽい紙
むかし便箋にあったなぁと思った表紙です。
今は結構ありきたりだけれど、あの頃はめずらしくて可愛かった。


変わった人がたくさん出てくる話。

父親が死に、独りになった主人公と
家出常習犯の従姉妹
親の離婚で離れ離れになった双子の弟(兄)
死んだ子供が今でも見える女の人・・・

嫌なものは見ないように生きる人や
よさそうな方を選び続けて行きたい人や
いろいろ生き方は違えど
みんな少しづつ孤独や寂しさを抱え
埋めあい支えあっている。

主人公が独りぼっちになってから
感じないように蓋をしていたことに
一歩づつ歩み寄っていく話です。

前半、やや長いか?と思うところもありますが
我慢して読んで、まぁよくなってきたかなという感じ。
後半から不思議な雰囲気色が強くなってくるので
そこからは面白いと感じました。
読みはじめから前半がもっと惹き付けられる描かれ方だとよかった。。

赤い長靴

2006-11-03 19:57:49 | 小説(国内)
著者:江國 香織
出版社: 文藝春秋 (2005/1/15)



勝手に短編集かと思って手にした本ですが、違いました。
主人公とそのご主人(旦那と言うよりご主人と言うほうが合っている)の話。
時々ご主人の視点で描かれる。

そこに描かれていることが幸福なのか不幸なのか、それともなんでもないのか
私は結婚を経験していないので分からない。

主人公の言葉がまるで通じていない夫の背中に向かっておしゃべりのように喋り続ける日々。
夫と一緒に居ない時のほうが、夫を愛していると感じる。
なのに夫のいない世界に不安を感じる。
 夜が味方だった頃を思い出すのが怖い。。。


一緒にいるべき人・一緒にいなくてはいけない人との関係は
大概そういうものかもしれない。
一人で言葉を完結させながら話さないと成立しない会話も
案外不幸でもないのかも。そういう関係性を持てないほうが可哀想かもしれない。

笑うことは泣くことに似ている

この作品の意図とはちょっと違うかもしれないが
この言葉が出てきたとき
大人になった自分が、悲しいときに笑っているということを思い出した。
悲しくて泣いているときも笑っているようなときもある。
悲しいとき、腹立たしいときに笑った方が人間関係は穏やかに進む。
けれど、泣き虫だった子供の頃のように、泣きたいときに泣くことが
もう出来なくなっているんだと思うと少し悲しくなった。



時々パートに出る主婦が主人公なので
ドラマチックな展開はありません。
主人公と夫との的が外れたキャッチボールを追っていくことは
ちょっと悲しくなる感じもしますが、最後の主人公の衝動が
やっぱりいいものだなと思わせる。
出かけないと決めた休日に、のんびり一気に読みたいような本です。

空中ブランコ

2006-11-01 21:02:30 | 小説(国内)
著者:奥田 英朗
出版社: 文藝春秋 (2004/4/24)


前出のインザプールのシリーズモノと知りつつ
サーカス小屋のキラキラした装丁に惹かれてつい手に取ってしまった。
短編で軽く読めるものを探していたのも理由の一つ。

前回のパイロットフィッシュのモヤモヤ感を一掃したかったのもある。。。


大きな期待はしていなかったのだけれど(失礼な話だが)
主人公伊良部と患者がインザプールよりもっと魅力的に描かれている気がした。
伊良部ってもっと違和感のある人物だったような・・・
もしかしたら私が変な医者に慣れてしまったのかもしれない。

今回も様々な問題を抱えた患者が伊良部によって回復していくのだが
インザプールのときは患者の抱える問題が現代特有の問題のような色が強い気がして
少々説教くさかった。
今回はもっと単純に、一緒に問題を探って一緒に伊良部に翻弄されて
一緒に問題を解決していく、という過程を楽しめるようになっている気がする。


だからといって、二度三度と繰り返してこの作品を読むかといわれたら、NO!
あくまで前回同様、娯楽作品というカテゴリーに属させます。
娯楽作品は私が息抜きしたいときにちゃんと息抜きさせてくれるものじゃないとダメ。
中途半端な娯楽じゃダメなんです。
だから空中ブランコはインザプールよりちょっと上位にランク。