気紛れ書評

かなり偏りがありますが、それでもよろしければ・・・

赤い長靴

2006-11-03 19:57:49 | 小説(国内)
著者:江國 香織
出版社: 文藝春秋 (2005/1/15)



勝手に短編集かと思って手にした本ですが、違いました。
主人公とそのご主人(旦那と言うよりご主人と言うほうが合っている)の話。
時々ご主人の視点で描かれる。

そこに描かれていることが幸福なのか不幸なのか、それともなんでもないのか
私は結婚を経験していないので分からない。

主人公の言葉がまるで通じていない夫の背中に向かっておしゃべりのように喋り続ける日々。
夫と一緒に居ない時のほうが、夫を愛していると感じる。
なのに夫のいない世界に不安を感じる。
 夜が味方だった頃を思い出すのが怖い。。。


一緒にいるべき人・一緒にいなくてはいけない人との関係は
大概そういうものかもしれない。
一人で言葉を完結させながら話さないと成立しない会話も
案外不幸でもないのかも。そういう関係性を持てないほうが可哀想かもしれない。

笑うことは泣くことに似ている

この作品の意図とはちょっと違うかもしれないが
この言葉が出てきたとき
大人になった自分が、悲しいときに笑っているということを思い出した。
悲しくて泣いているときも笑っているようなときもある。
悲しいとき、腹立たしいときに笑った方が人間関係は穏やかに進む。
けれど、泣き虫だった子供の頃のように、泣きたいときに泣くことが
もう出来なくなっているんだと思うと少し悲しくなった。



時々パートに出る主婦が主人公なので
ドラマチックな展開はありません。
主人公と夫との的が外れたキャッチボールを追っていくことは
ちょっと悲しくなる感じもしますが、最後の主人公の衝動が
やっぱりいいものだなと思わせる。
出かけないと決めた休日に、のんびり一気に読みたいような本です。