気紛れ書評

かなり偏りがありますが、それでもよろしければ・・・

パイロットフィッシュ

2006-10-29 15:17:11 | 小説(国内)
著者:大崎 善生
出版:角川書店 (2001/10)


結構前に、書店で平積みで置いてあったなぁと想い、読んでみた。
当時読まずにいたのだから、きっと興味をひかない内容だったのだろうとは思いつつ・・・


やっぱりちょっとスッキリしない。
内容は主人公の大学生からの回想と同時並行で40代の現在を描く
青春小説っぽい感じ。
誰でも一度は書きたいかもね~、というストーリーです。
青春小説は好きなのに、なぜかスッキリしなかったのは
なんとなく著者が自己満足して終わっちゃったのでは?と思えるような
内容の消化不良気味な感じが否めなかったから。

回想の長さとタイミングが、あまり心地よくない気もするし
主人公を囲むいろんな登場人物も、多すぎて効果が薄くなってしまっている気がする。
エピソードも多すぎ。確かに生きてたらいろんなことがあるけれど
全部書いてたらまとまらないよ。というか、本物の人生だったらまとまりなんか無いしね。
無理していろいろ盛り込むより、いくつかに絞って心地よく読ませて欲しかった。

期待して深く読むと肩すかしをくいます。
反動で2~3冊別の本読まないと気が済まなくなるので注意。
ストーリーや題材は、誰しもありそうな話なので共感しやすく読みやすいとは思うので
さらっとなんとなく読むにはオススメできるかも。

東京湾景

2006-10-21 18:07:50 | 小説(国内)
著者:吉田 修一
出版社: 新潮社 (2003/9/26)


ドラマになったので良い話なんだろうなぁと思いつつ
いまだ手を出していませんでした。
もちろんドラマも観ていないのですが・・・

基本的に、私の好みとして
小説を読んでいて風景が思い浮かぶ作りがかなり好きです。

それは、へんにモデルルームや雑誌に出てくるようなオシャレな暮らしをしている話だったり
登場人物の感情の動きが、まるでドラマみたい(?)に現実離れした面白いくらい思い通りの展開だったり
そんな話を読んでいるときは、風景が全然浮かんできません。
多分、風景なんてどうでも良くなるくらい流し読みしてしまうんでしょう。。

この本は、タイトルを見ただけで風景をモチーフに書かれている話とわかります。
なので、全然面白くなかったら最悪だ・・・と思い、なかなか読もうとしなかったのですが・・・

やっぱり著者の作品はいい・・・!
東京湾の風景もまた、話によく合う。
(私の活動拠点も近いところにあるので、尚更よく思えるのかもしれませんが・・)
話の始まりは出会い系で知り合った女性と会うところから。
だからといって必要以上に出会い系サイトがどうとかこうとかいうことは書かれていない。
その後の二人の考え方や恋愛感、そういうものの変化が現れるときにちょっと顔を出すような程度。
基本は、恋愛に対して期待しなかったり、なんとなく真剣に向かい合うことをしなくなったりした男女が
恋愛をする勇気が出たり必死に相手を求める気持ちをまた思い出したりする過程を
東京湾周辺の風景に乗せて描かれている。


あんなに愛してたのに、それでも終わる。人は飽きる。終わらないものってあるのか?

愛だの恋だの、馬鹿みたいだと思ってたのに、その愛だの恋だのに出会えた自分が嬉しくて・・・でも怖くて

終わるのが嫌だから始まらないようにしてたんでしょう?始まるのが怖くて目をつぶったまま抱き合ってただけ。

こういう葛藤、大人になってからの恋愛ではよく感じる。
最終地点が見えているのに、見ないようにしたり、見えていないように思い込もうとしたり
でもきっと、本当だったらそんな恋愛は予想通り、終わりがやってきてしまう。
終わりが見えた時点で、二人の関係はグズグズになってしまうもの。
わかってはいるんだけどね・・・と思う私には、この小説のラストはちょっと嬉しい。

最後の主人公二人の会話は、思わずニヤけるくらい可愛いです。

男と女パンとワイン

2006-10-13 21:15:22 | 小説(国内)
著者:吉村 葉子
出版社: 廣済堂出版 (2001/11)


真っ赤な表紙が素敵。
前回書いたミシンの青を片手に持っていたため
内容をあまり確かめもせず手にしました。
タイトルも内容が想像できるストレートなものだったので、どうかなぁと思いつつ
あまり重くないものを選びたかったので。

短編集。
ワインを素材に描かれる男女の話。
恋愛小説ですが、幼稚でもないしドロドロもしていない
オシャレなストーリー。
もちろんリアルな話ではないので
こんな展開、ありえないよね!とか、ぅわ~気障!!と思ってしまうような場面もしばしば。
フランスのワインやファッションなどが雰囲気作りをしているので
なんとなく許されてしまっているけれど・・・
だからこの本は泣きたいときや自分の恋愛を無理矢理肯定したいときに読んだら全然面白く無いのでは。

この本を読むのに一番のオススメは
恋人を待つカフェの15分
進行形で愛し合っている時期に


ミシン

2006-10-13 20:57:38 | 小説(国内)
著者:嶽本 野ばら
出版社: 小学館 (2000/10)

薄い本ですが、真っ青の表紙がきれいです。

著者の作品はかなり独特な感じがして、食わず嫌いでした。
ですが、映画「下妻物語」のストーリー(実際観ていませんが)が
案外面白そうで、試しに読んでみようかと思い、手にしました。


確かにちょっと独特。世界観や文章等。
でも毛嫌いするほどではありません。

二つの話が入っていますが、表題作よりも
『世界の終わりという名の雑貨店』のほうが好きです。
どちらの話にも共通しているのは、純粋で高潔な人たちのそれぞれの愛。
リアルな世界観ではないけれど
御伽噺のような美しい話ばかりではなく、人間の負の部分や見たくないところも描かれている。
悲しい結末もある。けれど、本当にそれが悲しいのか疑問も沸く。
むしろその方が幸せなのかも・・・

物語の雰囲気を作る、ファッションにも注目。
もともと私自身が好きな感じだったので、想像して楽しかったです。


『世界の終わり・・・』のなかに出てくるフレーズ
「解ったのです。私には貴方が必要であることが。難しいことを考えずともよかったのです。雪が降っているのを見て、それを貴方に伝えたいと思った。」

私はこの人のことを本当に好きで良いのだろうか・・・
そんなこと難しく考えても仕方ない。
雪が降ってて幸せな気持ちになったの、と伝えたいと思った人なのだから。
真っ先に、顔が浮かんでしまうのだから。
難しいことなんか、かけがえの無い人の前では無意味であることを
改めて感じさせる言葉でした。

あなたと読む恋の歌百首

2006-10-02 23:26:59 | 女性著者
著者:俵万智
出版社: 朝日新聞社 (1997/07)

著者の短歌の大ファンで
歌集は随分読んでいます。

ただ、著者が訳したものや解釈本にはあまり興味が無く
今回の本も、書店をフラフラしていた時
著者の短歌が読みたい気分だったけれど、たまたまその場に
未読の本が無かったから、たまにはこういうのもいいかなぁと思って
手にした本です。

この百首(性格には百一首。著者の一首もウレシイおまけでついています)
やっぱりこの選者ならこういう百首になると思えるものばかり。
難しい技法や難しい言葉ではなく
ストレートに今の私に響く言葉で構成された歌が多いです。
素材も身近に感じるものが多く
他の誰かエライ人にとっておきの恋の歌を100首選んでくださいって言ったら
「安っぽいし、ありきたりな簡単な歌じゃない」とはじかれるような歌も選ばれています。
(実際、全く安っぽくなんか無いんですけどね)
だけどその 「すとん」と心に入ってくる表現が
大人の小難しさに逃げようとしていた私を、逃がさないように捕まえる。
まるで、目を逸らすんじゃありません!と言わんばかりに。

こういう風な感覚は、著者の歌集を読むといつも感じることであるが
こんな風に感じるようになったのもこの頃で
もっと若い頃はこんな風にちょっとした後ろめたさを伴ったりせず
ストレートに自分の感情を投影できていた。
こんな読み方をできるのが嬉しくもあり、悲しくもあり・・・


短歌は好きですが、この本に挙げられている100人を全て知っているわけではなかったので
この人、こんな歌を詠むんだ・・・とか
これから歌集を選ぶにあたっての、見出しのような役割にもなるのでは。
かなり幅が広がった気がします。

一首ごとの著者の解説も、もちろん著者なりの解説ですから
好き嫌いはあるかもしれませんが
著者の様々な恋愛エピソードも盛り込みながらで
思わず自分に投影して、にやけたり切なくなったりしてしまいます。
逆に、恋の様々な段階を、選ばれた歌を通して解説されているような。
さすが恋愛ミーハー(文庫本のあとがきに、野田秀樹氏がこう表現していました)

最後の一首に、著者の歌が出てくるわけですが
その一首もガツンと私や私の隣に居る人に一発食らわせます。
その一首の収められている歌集についてはまた別に場所を設けます。



かんたん!勝負ごはん

2006-10-02 16:49:16 | 女性著者
著者:小栗左多里
出版社: ヴィレッジブックス (2006/09)


『母に習えばウマウマごはん』のほうはまだ読んでいませんが
お母さん世代の人が作るにしては
ちょっとオシャレな感じに見えます。
(写真の撮り方、コーディネート等にもよるんでしょうけれど)

どれもちゃちゃっと作れそうで、見栄えが華やかな
まさに簡単勝負ご飯。

レシピ本のつもりで買ったのですが
途中にはさまれてある解説やマンガもほぼちょうどいい分量。
(ホントはもう少しレシピを多くしてくれると、もっと早く買ったんだけど)
マンガばっかりだったらレシピ本としては失格ですが
彼女の作品のダーリンシリーズ(?)以外のもの同様
ただ読んでても楽しく、活用もちゃんとできる本でした。
母に習えば・・・のほうも読んでみる気になります。
トニーが料理しているのも珍しくて面白い。


余談ですが
彼女の漫画自体は1冊も読んだこと無いのですが
ダーリンシリーズは好きで
文化・捉え方・考え方の相違点や共通点をを楽しく読んでいました。
こういう漫画なら大人が読んでもおもしろいよね~と思いながら。

でも、『こんな私も修行したい!精神道入門』を出版されたとき
「えーー!!もしかして宗教本??」と思い
著者への関心が少々薄れました。
別に宗教を布教するような中身じゃないので、私の勘違いでしたが・・・