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詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

オペラ座&ロイヤル バレエ・スプリーム Bプロ 2017年3月30日 文京シビックホール

2017-07-30 17:22:39 | 日記
毎年夏になると有名バレエ団のスターを集めたグループ公演が行われる。3年に一度の世界バレエフェスティバルを別にすれば、音楽の音源は録音、舞台装置もほぼ無し。あとは出演メンバーと演目にいかに知恵を絞るかというのが勝負となる。

今年の一番の注目は、日本舞台芸術振興会主催の『バレエ・スプリーム』だったよう。日本出身ながらパリオペラ座バレエ団のプルミエール・ダンスーズ、権威あるブノア賞を受賞したオニール八菜。エトワールに昇格したばかりの若手三人、ユーゴ・マルシャン、レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェ。人気のミリアム・ウルド=ブラームスとマチアス・エイマンのオペラ座組。

人気のスティーヴン・マックレーとヤーナ・サレンコ。プリンシパルの高田茜、フランコ・ボネッリ、フランチェスカ・ヘイワードらの英国組が同じ舞台に立つというのが人気だったのだろう。

第1部はパリオペラ座が3演目、第2部はロイヤルバレエが4演目。最後が合同で『眠れる森の美女』のソリストが踊る部分の名場面集といった構成。

第3部は結論から言えば、全く愚劣な演目だったとしか言いようがない。音源が録音で一応時系列に並べてはあるものの繋ぎ方が滅茶苦茶で、チャイコフスキーの音楽を聴くのに苦痛を感じてしまった。衣裳の好み、様式もバラバラで耐えられないレベルだった。

ダンサーに純粋なフランス人を集めて様式美を追求するパリオペラ座と国際的に多彩なダンサーを集める英国ロイヤルバレエでは、ダンサーの統一感もないし、振付の妙味もほとんど感じる事ができなくて残念。

そうした中にあって、パ・ド・ドゥの中の王子のヴァリエーションを踊ったパリオペラ座のマチアス・エイマンはヌレエフを想起させるような端正な踊りが際立っていて、バレエを観る喜びで満たしてくれた。ヌレエフが得意とした演目で、舞台を一周二周。回転しながら止まると足は5番のポジションに決め、何事もなかったかのように微笑む。大袈裟なポーズも封印して奥床しい。

バレエに何を求めているかで観客の反応が違っていたように思う。超絶技巧を次々に披露すればいいのかという想いがある。スポーツを観るような爽快感はあっても感動はないのではないか。スタンディングオベーションで大騒ぎの客席の中で暗然とした気持ちになった。

五反田のゆうぽうとホールが無くなってしまい、オペラカーテンのない会場に中割れ幕を持ち込んだらしい主催者には拍手を。

以下に各演目の寸評。

『グラン・パ・クラシック』オニール八菜とユーゴ・マルシャン。優美なバレエを観た。美しい人が美しく踊るのだから当然といえば当然。シンプルな舞台なのに豊かな世界が広がった。日本にルーツを持つダンサーがパリオペラ座バレエ団の最高位に登りつめる夢は夢でないのかも。

『ロミオとジュリエット』第1幕パ・ド・ドゥ。レオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェ。ヌレエフ振付だけあって超絶技巧と演技力が求めらるが若い二人は見事に表現。二人の気持ちがひとつになっていく過程、口づけを交わすまでに昇華されていく愛の姿を見事に表現した。

『チャイコフスキー・パ・ドゥ』ミリアム・ウルム=ブラームとマチアス・エイマン。バランシン振付の有名な作品で色々な組み合わせを観てきたが、エイマンのヴァリエーションは今までで最高。技術に走ることなく振付を忠実に表現すれば別次元のバレエになる事を証明。凄かった。

『真夏の夜の夢』。高田茜とベンジャミン・エラ。アシュトン振付。シェイクスピアの国のバレエらしい演目。音楽の優美さに比べて振付はスピーディーなのが面白い。ちょっと皮肉な部分もあって如何にも英国らしい味わい。日本とオーストラリア出身のダンサーが踊るのも英国的。

『タランテラ』 フランチェスカ・ヘイワードとマルセリーノ・サンベ。バランシン振付。陽気で楽しいバレエを体現したダンサー。踊る喜びが全身から溢れでるようだった。ロイヤルバレエの多様性を示す存在でもあると実感。あらゆる国の踊り手を受け入れることは素晴らしい。

『白鳥の湖』第2幕パ・ド・ドゥ。金子扶生とフランコ・ボネッリ。イワーノフ振付。お祭り騒ぎのような演目に挟まれて気の毒な面も。金子は容姿に恵まれていて成長が楽しみなダンサー。ボネッリはサポートに終始していて、その佇まいだけで勝負だった。絵に描いたような王子。

『ドン・キホーテ』ヤーナ・サレンコとスティーブ・マックレー。ほぼ英国雑技団?バランス、回転、跳躍に次々と超絶技巧を投入。それが嫌味にならないのは二人が紛れもないスターだから。真夏の猛暑の中、深く考えないで楽しんでくださいという姿勢が潔い。文句のつけようなし。

『眠れる森の美女』ディヴェルティスマン。ソリストが入れ替わり立ち替わり登場して踊りまくる名場面集。音楽はフィギアスケート?と思うくらいぶった斬りで滅茶苦茶。何が面白いのか意味不明。そんな中にあってマティアス・エイマンの王子ヴァリエーションが素晴らしかった。


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