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詩はここにある(櫻井洋司の観劇日記)

日々、観た舞台の感想。ときにはエッセイなども。

映画『ダンシング・ベートーヴェン』を観て

2018-01-13 21:48:30 | 日記
早く観ないと終わってしまいそうなので、早起きして有楽町ヒューマントラストシネマでわ映画『ダンシング・ベートーヴェン』を観ました。

「第九」といえば20年ぐらい前までは歌うものでした。20代から30代にかけて20回ぐらいは歌ったでしょうか。母校の管弦楽団の記念公演に紛れこんで?サントリーホールでも歌いました。

成田楽友協会の海外公演の一員としてポーランドの南部、クラクフの近郊の街、カトヴィチェで歌ったのが最後だったかもしれません。

ゲネプロが終わってから、夜の本番まで時間があったので、バスでアウシュビッツ収容所の見学に出かけました。あまりのショックに「歓喜の歌」「人類皆兄弟」と歌うのがためらわれました。まして、ポーランドの方々の前でドイツ語で歌うのは、彼らもナチスに酷い目にあっているので特別な感情があると聞いていたので余計です。結果は大成功でした。

でも帰りに寄ったウィーンのベートーヴェンのお墓。快晴だったのに、ベートーヴェンのお墓にお参りした途端に、雷鳴轟く集中豪雨になってしまい全員ずぶ濡れ。バスに戻ると晴れという不思議な体験。絶対に「第九」の出来が気にいらないベートーヴェンに雷を落とされたのだと思いました。

今はもっぱらチェロで第4楽章の有名なメロディを弾くだけになってしまいました。映画の中ではモーリス・ベジャールの傑作バレエとして『春の祭典』『ボレロ』と並んで紹介されていました。日本で上演されたパリ・オペラ座の公演と今回の上演を2回観ているのですが、大掛かりで上演が困難という事で、持ち上げられているだけで、ベジャールとしては普通の作品だと思います。

東京バレエ団の50周年記念公演として上演。主催は日本舞台芸術振興会。東京バレエ団の生みの親、佐々木忠次さんが日本舞台芸術振興会を作ったので、まあ同じ団体です。ミラノ・スカラ座やウィーン国立歌劇場を招聘する事業を通じて大儲け?映画にも出てきますが目白の東京バレエ団の本拠地はお城みたいです。

映画では語られませんが、佐々木忠次さんの人脈でモーリス・ベジャールのバレエ団、ズービン・メータ指揮イスラエルフィルとの夢の共演が実現したのです。佐々木忠次さんの功績、夢の実現だったのです。オペラの客はオペラしか観ない。バレエの客はバレエしか観ない。クラシックの客はクラシックしか聴かない。そんな風潮も打破したかったのだと思います。

映画は現在の芸術監督であるジル・ロマンの娘が様々な人にインタビューしていき、リハーサルの映像が挟まれていきます。実は本番よりリハーサルの方がずっと面白いと思いました。映画では退屈だったり珍妙な部分は映さないので。いいとこどりなので非常に楽しめる映画となりました。

会場がNHKホールなので渋谷のスクランブル交差点は当然のように登場します。ホテルは新高輪プリンスホテル。イスラエルフィルのリハーサルはNHKホールの北側のロビー。

残念だったのは、バレエ評論家の三浦雅士さんと東京バレエ団の当時に芸術監督だった飯田宗孝さんのインタビュー。あまりに浅薄な理解しかしていなくてベジャールと禅宗を強引に結びつけようとする馬鹿馬鹿しさ。恥ずかしいやら笑えるやら。俗っぽくて嫌になります。

ダンサー達は誰もが美しく真剣に踊っています。リハーサル場面のバレエが面白くて大満足でした。今も踊り続けるエリザベット・ロスやジュリアン・ファブローも見られました。でも、ベジャールのバレエは古い。悲しくなるほど陳腐だったりする。昨秋の来日公演を観ていても魅力的なダンサーがいませんでした。「希望は常に勝利である」っていうベジャールの言葉も思わせぶりなだけかな。

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