花餅屋廼徒然書附帖

歌舞伎の世界に魅入られた男の、余りにも刺激的でグダグダ過ぎる日々…

壽 初春大歌舞伎 in大阪松竹座

2006年01月22日 23時32分15秒 | 徒然に歌舞伎噺なと…
行って参りましたっ!今年初歌舞伎!!!
いいですね~っ!
待ちに待った今日の此の日…食う物も食わず、飲む物も飲まず…ってことは無いが、じっと試練の日々でした…大袈裟だよ。

大阪松竹座での今年の初春大歌舞伎は、片岡仁左衛門&坂東玉三郎の二枚看板の座組です…。
毎年のような、上方役者中心の座組ではありません…。
まぁ、いつも中心となっている坂田藤十郎さんが、襲名披露で東京での公演だから…皆さん揃って中村鴈治郎家(当主は坂田藤十郎だが家の名称は中村鴈治郎家らしい)と一緒に東京でのご出演らしい…。
で、玉三郎さんと最近座組をしている澤瀉屋の方々との…ご察し下さいな。

今回は昼の部のみの観劇です。毎度、通しでは観ていられない(涙)
十一時開演で…十時半に集合のメールを打った本人が、電車ギリギリで約10分遅れたのは御内密に…(汗)
今回の一番乗りが紅染屋さん…先を越された(大汗)…で今一人が来ない…どうも遅れるので先に入っていてくれと…うぅぅぅん。
チケット持っているのは私なんだよね…どうする?
でも…どうも来そうにないし…構わずに入っていてくれとのメールが…涙を飲んで劇場入り…ごめんね…。
今回のお席は勿論一等席です。
一階席の右側…南座では桟敷席(特別席)の所ですが、ここ松竹座は一等席ですよ。
で、8番…。取り敢えず、前の方なんですが…舞台から離れていますね…でも、花道の鳥屋から本舞台まで見渡せる位置にあり、新しい発見もありですよね。

さて、今年の上方の幕開きは…『源平布引滝 義賢最期』から始まります。
仁左衛門さんの当たり役を、愛之助さんが初役で挑むというのが話題となっていますが…さてドウでしょう…見物ですよ。
『片岡仁左衛門 監修』と、ワザワザ書く意味はドウなんでしょうか…だって、初役の場合、先輩役者さんの所に教えてもらいに行くでしょ…。以前、愛之助さんが『女殺油地獄』を仁左衛門さんに指導して頂いているところをテレビで観ました…スゴイ怖い仁左衛門さん…でも、その時はそんな事書いていなかったのに…。
今までも、ワザワザ『○○指導』とか『○○監修』って掲げる舞台を観たことあります…それだけ熱を持っての此の舞台なんでしょうか…?
余計に期待大です!

少し遅れての入場…まぁ此の舞台は以前にも観ているので…ちょうど九郎助と小万親子が義賢屋敷にやって来て、御台と姫とに会っているところ…。
どうも小万の旦那が突然姿を消して七年経つらしい…どうやら此の屋敷にいると言う事なので旦那の暇乞いをしに三人揃ってやって来た模様…。
御台所の笑三郎さんに待宵姫の春猿さん背が高いですね…少し異様にも思えたり…綺麗なんですが…どうも大きいのは着物が大変そう(違)それ以上に、やはりアンバランスになってしまうって感じが…。
折平が帰ってきて、待宵姫との逢瀬…綺麗ですよ…でもねぇ…背が高いねぇ。
でも、この段治郎さんとのコンビ…よさげですね。
さぁ義賢の登場で…隣に座る奥様方から…
『似てるねぇ…』
誰が、誰に似ているのって言うのは…言わずもがな…。
うん、口跡はいいですね。大きさがあって…動きも綺麗だし。
流石は愛之助丈。
でもなんか…チト…大役に挑戦する愛之助さん…アリアリなんだけど、どうも少し…重過ぎるって感じもする。
義賢と折平との遣り取り…まぁ絵面的には男前同士でいいのですけども…なんと言ったらいいのか、軽く見えてしまう…(汗)
重くしようとして、かえって軽く見えてしまうって感じ…(汗)
源氏の白旗を長押に掛けて…深く追求しないしない…お話だから。
と言った所に、この白旗の詮議のために清盛の使者が差し向けられた…。
ここですごいのが、平治の乱で敗れた義賢の兄義朝の髑髏を取り出して、清盛に二心無いかどうか、髑髏を踏んでみろ!と言うんだけども…。
えげつないよ…こいつら…。
もちろん、平治の乱の時は袂を分かったが義賢だが、今は源氏再興を心に期す身…。
兄の髑髏を踏みつける事なんかできませんよ!!
ウン、わかる…でも…何故その髑髏を持って使者を殴るの???
少し疑問が…まぁ、いいか。お話しだから…>ヲイ!
平家方の使者を一人は斬り付けたが、今一人は逃がしてしてしまう…。
さぁ、討手がやって来る…義賢は折平いや正体を現した行綱に待宵姫を託しこの地より落とす…まぁ、これは良しとしよう…。
でもどうして、身重の葵御前を今し方来たばっかりの行綱の元嫁一家に託すのはどよ?
またこの夫の暇乞いに来たこの親子も親子…何故か戦っている…百姓一家なのに…。
待てよ…この親子…わが亭主が行綱だと知っているのかドウだか…?
全五段の内の二段目だから…初段に件があるかもしれないしなぁ…(汗)
さてここからがこの狂言の見ものとなります。
大紋長袴(番附には素襖と書かれているが…)に着替えて威儀を正しての立ち廻り。
大口の長袴での立ち廻りは大変そうです。
いや、動き難いでしょう…ただでさえ長袴って言うものは難儀なのに大口になると身動きが取り難くなるのでは…?
いや…それよりも、袴の腰紐の結び方がどうも気になって…ダランと垂らすなんて…見栄えがよくありませんよ
戸板の上に乗って、そのまま倒れるところは圧巻でしたね…一瞬間が空きましたが…その瞬間に…周りから…
ひゃ~
と言った声も聞こえたり…でもやっぱり間が空き過ぎだよね…あんなもんか?
ここで再び出てくる小万…結構女形の立ち廻りというのも面白い。
義賢から源氏の白旗を託されて、逃げるように言われるが…最期まで義賢の傍で…。
最後の『仏倒し』で御殿の上から階に正面から倒れるのだが…痛そうだったよ…。
勢いが附き過ぎたかもしれませんね…落ちて来て足が跳ね上がってしまっていたから…。
絶対に…今日のは失敗だったかも…勝手に思っている…。

この演目は二回目です。
前回は勿論のこと、仁左衛門丈の義賢に、梅玉丈の行綱、秀太郎丈の小万…。
物凄い迫力だったことを覚えています。
しかし、今回は…どうも前評判の割には軽く感じました。
まちまちと言うか…アンバランスな配役に…愛之助さんの熱演は十分伝わって来ますが、義賢といった武将が何故礼装に着替えてまでの立ち廻りなのか…重みを出して欲しかったですね…。
でも…ホンマに丸本歌舞伎って難しいですね…。

ここで幕間です…。
遅れて来た燃えるお能の人を劇場内に招き入れる…。
で、以って即座にお昼です…。今回この時間しか幕間はないのですよね…少しキツイです。

で、次の演目は初めてです。
『十六夜清心』です。本外題は『花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)』と言い、黙阿弥の世話物です…。
どう言った黙阿弥らしい因縁めいた話になっているか…。
今回は通し狂言となっていますが、半通しと見た方がいいかも…?
幕が引かれると…暗いよ…大丈夫か?>ヲイ!
花道を遊女が走って来る…あぁ艶やかな…七三の辺りで止まる玉三郎さん演じる十六夜。
ややあって本舞台へ…今度は仁左衛門さん演じる清心が…現れる。
綺麗ですねぇ…お二人さん。
上手の道具がバタンと開いて清元連中さん御一行…。
あぁ…清元の高音の…長~ぃ浄瑠璃が…それに合わせてお二人さん…なんやらやっているのですが…どうも…きつい…。
睡魔が…暗いし、あの清元の何とも言えない響き…おまけに食事後ときたら…薄目を開けながら喰いしばっていました(滝汗)
何やら…お二人さん錦絵のようで…ポスターの如く美しい…で、手をつないで…跳びましたよ!
その瞬間に浅黄幕が落ちて来て…暗転…。入水ですよ…そう、身投げです。
舞台替えの音で完全に目が開きました…(汗)
この後、話は単調に…全般的に暗く…退廃的に…どうも黙阿弥独特の因果めいた話への導入みたいですね…。
十六夜は白魚釣りの網に引っ掛かり、俳諧師の白蓮に助けられる…その後、見受けられて彼の妾となる…。
清心は清心で幼い頃からの水練が仇となって水死できない…面白いことだよ。
ちょうど通りかかった寺小姓の求女に手を掛けて殺してしまう…懐中に忍ばせていた五十両に目がくらんで…。
そこで開き直るのが…黙阿弥らしい展開ですなぁ…。
『一人殺すも千人殺すも、取られる首はたった一つ…』
この場に、十六夜を伴った白蓮が通るのだが…ちょうど『だんまり』となる…歌舞伎のエッセンスもチャンと忍ばせて…。
さて十六夜は、本名のおさよに戻り白蓮に囲われていたが…剃髪して諸国を父と周る旅に出て行く…清廉ですね…。
玉三郎さんの坊主頭も…少し以外でしたが、やはり綺麗です…(汗)
ここで話が終われば、何と無いお話で終わってしまうが…ここからが黙阿弥の本領発揮です。
花道をやって来るドウも一癖も二癖もありそうな…夫婦連れ。
死んだと思っていた二人が生きていて、また偶然に箱根の山でバッタリと…で会っちゃった…。
強請り騙りを生業に…落ちるところまで落ちましたねぇ…。
先程まで美しかったお二人さん…イガグリ頭で…阿婆擦れ…おさよの変わりようったら…大爆笑となりますよね…。
完全に…おばちゃんになっているというか…何でしょ?
こう言ったところが好きなんですよね…歌舞伎のわけのわからんところ。
またやってのける玉三郎さんのワールド!
善人だった人が揃いも揃って悪人となり…また下男だった人が役人だったりと…正体を現す現す…何処まで行くねん!!
最後は捕手が乱入して、やや立ち廻りがあって幕です…。
しかし笑いに笑い…ここまで計算してのものだったのでしょうか…黙阿弥さん?

白蓮の正体が盗賊の大寺正兵衛…極楽寺の祠堂金を盗んだ張本人。
その祠堂金の盗難と十六夜の女犯の罪で寺を追い出された清心…。
この正兵衛と清心が兄弟だったなんて…ホンマお芝居みたいな話…お芝居だよ!
清心が殺した求女は十六夜の弟で、懐中にあった五十両は親兄弟が十六夜が世話になった清心に届けるものだった…ヲイヲイ!!
で、求女が殺されたのでそれを悼んで父親が出家した…。
その父親が十六夜を剃髪した屋敷が正兵衛の屋敷…。
因果だよねぇ…。

しかしこのままで終わってしまったのならば…どうも今一つですので…。
今回演じられなかった最終段では、自分たちの因果に驚き哀れみ、今度こそ二人は心中するのであった…その日は十六夜と清心が稲瀬川百本杭で入水したちょうど一年後だった…。
またまた因果ですよね…。
あ~ぁ、怖っ。

面白かったですよ…。
ホンマに世間って広いようで狭いもんですよ…って、殆んど黙阿弥の世界はそのようですね…。

今回はこの昼の部で劇場を後にしました…。
今年初めての初春大歌舞伎…うぅぅぅん。
何でしょうか?
上方系が無かったのと、ホンマに御祝儀めいた出し物も無かったのとで…。
まぁ、十六夜清心は面白かったです、ハイ。


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6 Comments

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Unknown (りゅう)
2006-01-25 22:59:45
前評判の割りに軽く感じたのは、やっぱり期待が大き過ぎたからじゃないでしょうか?



わくわくしながら観に行った映画が期待はずれって結構ありましたから。σ(^_^)
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Unknown (太夫元)
2006-01-26 01:31:03
こんばんは。



>前評判の割りに軽く感じたのは、やっぱり期待が大き過ぎたからじゃないでしょうか?



それも大でしょうね…皆様のブログとかで観賞記録を読んでいたりすると…余計に期待が膨らんで…。

それと、松嶋屋贔屓がそうも思わせているのかも?

応援しているからこそ…かな?



>わくわくしながら観に行った映画が期待はずれって結構ありましたから。σ(^_^)

あはは…これはよく有りですね…(大汗)



でも、今回の歌舞伎は『ハズレ』ではなかったですよ~。
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Unknown (オカジ)
2006-01-26 02:16:01
こんばんは。



黙阿弥といえば「因果」のもたらす「悲劇」なのですが、「十六夜清心」もあそこで幕になると、単に大笑い(…)で終わっちゃうんですよね。難しい…というか、太夫元さんがおっしゃるように、ああいう上演方式の可能性について、黙阿弥が考えていたかどうか、聞いてみたいところです。また、彼が生きてるうちはどんな風に上演してたんでしょうね。
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Unknown (太夫元)
2006-01-27 00:47:12
いらっしゃいませ。



>黙阿弥といえば「因果」のもたらす「悲劇」なのですが、「十六夜清心」もあそこで幕になると、単に大笑い(…)で終わっちゃうんですよね。

ですよね。黙阿弥の独特な退廃的な世界を観るにはやはり…通しが必要になってきますね。

でも時間的なものもあるでしょうね…結構今回は、幕間が少なくキツイ面もあったように思えますし…。



>また、彼が生きてるうちはどんな風に上演してたんでしょうね。

これは是非とも観てみたいものです。当時の世相を映して…上演禁止になるくらいの演目ですから…。
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Unknown (ちゃくら)
2006-01-30 22:19:32
赤文字になってるぅ~~~(涙)







今度はぜひ~!また語りましょう!

つか、夕飯のために「語り」も「問い」も控えていたというに~!

とかいいながら次回カラオケつきもいいな~なんて・・・♪
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あはは~ (太夫元)
2006-01-31 01:09:33
どうも。



>赤文字になってるぅ~~~(涙)

いやはや…(汗)深い意味はありませんので…。



>今度はぜひ~!また語りましょう!

>つか、夕飯のために「語り」も「問い」も控えていたというに~!

>とかいいながら次回カラオケつきもいいな~なんて…♪

ハイ!絶対語り合いましょう!どうも不完全燃焼ですしぃ♪

ホンマ…お店も色々と考えていたのですが…またの機会ですね。

質問ですか?受けて立つほどの度量は有るか否か…頑張ります!!

カラオケもいいですね~♪それこそ、皆で行きましょう!
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