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日常・民話など

伝説・民話 ヘビ杉

2022-04-28 12:27:42 | 昔っこ・民話

久しぶりに 秋田の伝説を… お孫さんと一緒にお楽しみくださいね~

 

昔々、船岡の庄内に 松兵衛という木こりが住んでいた。身の丈6尺(約2メートル)もあり、10人力という

まるで、仁王のような大男だった。また、大変な大酒飲みだった。

木こりのくせに、木を切るのは面倒だと 近くの山から 立ち木を根こそぎ抜いてきて 根元の方から

囲炉裏にくべるので 端の方は家からはみ出し、垣根を越えて道をふさいでしまった。

 

ある時、松兵衛は村人に頼まれて ブンナ森の大きな杉を切ることになった。この大杉は庄内からも

見えるほど高く天にそびえていた。村人たちからは、神様の住む木のように思われ 恐れられていた。

松兵衛は、大きなにぎり飯を腰につるし、大マサカリを振り回して、杉の木を切りにかかった。

静かな山々に まさかりの音がこだました。しかし、いかに10人力の松兵衛でも 大人4・5人でも

やっと抱えるような大杉を、一日で切り倒すことは出来ない。日暮れまでかかって

やっと半分、切り込むのがやっとだった。 次の日、松兵衛は朝早く起きて山に向かった。

             

 

「きょうは、必ず倒してやるぞ、こんな杉に3日もかかったといわれては、俺さまの名がすたる」

ところが山に着いてみてびっくりした。昨日確かに半分切り込んでおいたはずの杉の木が

元通りになっているのだ。松兵衛はあまり不思議なので、杉の木にさわってみたり、ぐるぐると

回ってみたりしたが、傷跡一つついていない。 松兵衛は、しばらく首をかしげていたが、やがて大まさかりを

持ち直して、一振り、ふた振り 力任せに切りつけた。昼休みもとらないで、頑張ったがその日も

半分ほどで日が暮れた。 3日目の朝、杉はまた元通りになっていた。

「ややっ、なんとしたことだべ。こんたらごとしていたら、1年かかっても切り倒すことはできねぇ。

 なんとも困ったこった。何としたらええべ」

 

松兵衛は、杉の根元に腰をおろすと、腕組して考えこんだ。やがて昼近くになったころ、松兵衛は

膝をたたいて立ち上がった。松兵衛は近くから杉の葉や 枯れ枝を集めて火をたいた。

ぼうぼうと燃え盛ると 松兵衛は大まさかりを振り上げた。杉の幹はみるみる切り取られていく。

松兵衛は、その切り取られたコッパ(切り取った木片)を、燃え盛る火にくべる。

その日も、半分切り取ったところで終わったが、松兵衛は「これでよし!もう、焼いたから

 元通りにはなれねべぇ。だども、念には念をいれておぐべ」 松兵衛は沢に下りて、

一抱えもある大石を探し出し、それを担ぎ上げて、いままで切り込んだ傷口に どっかと押し込んだ。

その日の真夜中、大地震のような山鳴りがしたかと思うと、家が揺れ、柱も折れるかと思うほど

きしみだした。松兵衛は飛び起きた。見ると恐ろしい大蛇が、家を3巻き、4巻きにし、

大きな目を輝かし、口からは、炎のような舌をはきだして、松兵衛をにらんでいた。

      

              まさかり・へびは、無料イラストよりお借りしました

 

一度は驚いたが、元々力自慢の男だったから、土間にとび下りると、大まさかりを手にして 外に出た。

そして、襲い掛かる大蛇の目をめがけて切りつけた。戦いは2時間以上も続いた。

松兵衛は、最後の力を振り絞って、切りつけた。さすがの大蛇もその一撃で力尽きて倒れた。

松兵衛は、大蛇の死骸をマキのように、プツン、プツンと切って積んだ。それは、高さ4尺(約1.2㍍)

横6尺(約1.8㍍)もある、大きな釜に7杯半ぐらいもあったという。

 

さて、1度はマキのように積んだ大蛇の死骸を 松兵衛は、近くの沢に捨てた。

ところが、その沢に とても美味そうなキノコが生え出した。松兵衛は、きっと大蛇の死骸に生えたものに

違いないと思い、初めのうちは食べなかった。キノコは、年々増えて、いい匂いをまき散らした。

ある年、酔っぱらった松兵衛は、とうとう我慢できなくなって、そのキノコを食べてしまった。

すると、たちまち腹痛をおこし、転げまわって苦しんで、死んでしまった。

村人たちは、大蛇のたたりだと口々に言いあった。

今も、ブンナ森には、大杉の切り株と、切り口に押し込んだ大石が残っている…  

          ―仙北郡協和町―     秋田県国語教育会編

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