美杉の小さな庭でおきていること ~カフェ葉流乃音のつれづれ~

 町ナカ(大阪府堺市)から
 山ナカ(三重県津市美杉町)に移住した店主夫婦が
 日々のアレコレを写真とともに綴ります

「川べのちいさなモグラ紳士」

2019年02月05日 | 本を紹介


作者はフィリパ・ピアス。
ピアスといえば、「トムは真夜中の庭で」が有名ですが、
「川べのちいさなモグラ紳士」は彼女の晩年の作。
なんと、2004年、ピアスが84歳の時に出版されたものです。
(ピアスはその2年後、86歳で亡くなっています)

設定は完全なファンタジーなのですが、
人物造形や感情の動き、自然描写など、
さらりと描かれているのに、内容は実にリアル。
読者を作品世界に引き込む力は、一流だと思います。

ストーリーは、ひょんなことから魔法にかかってしまい、
不死となり、知性を持つことになってしまったモグラと、
生後まもなく母親に捨てられ、祖父母に育てられている少女が
出会い、友情を育て、そして別れてゆくまでを描いたもの。

300年という時の長さを生き抜いてきたモグラですが、
次第に明らかになる彼の唯一の望みというのが、
「当たり前の普通のモグラ」に戻ること。
少女の協力で、最後にその望みは叶うのですが、
それは同時に、二人の友情の終りを意味します。

少女が、モグラとの友情に応えて別れを決断するシーンや、
別れた後の描写には、胸に迫ってくるものがあります。
全体としては、かわいらしいお話なのに、
生きる意味なんてものまで考えさせられてしまうんです。



それで、久しぶりに「トムは真夜中の庭で」を読みたくなって、
葉流乃音の本棚に並べてあるのを引っ張り出してきました。

これまで何度か読んでいるはずなのに、細部などはすっかり忘れていて、
初めて読むような気分で、一気に読んでしまいました。
(歳をとって得だと思うことのひとつが、
 同じ本を何度も新鮮な気持ちで楽しめること!笑)

最後にトムとハティおばあさんが抱き合うシーンがあるのですが、
物語の描写のすべてが、そのシーンに向かってゆく、
その感じがあまりにも見事で、“素敵”としか言いようがありません。
やっぱり名作は、何年経っても名作ですね!

ピアスが「トムは真夜中の庭で」を書いたのは、
1958年、38歳のときです。
同じ年、日本では東京タワーが竣工され、
はるのん1号・2号が生まれました(^^)/


いやぁ~児童文学って、ホントにいいもんですね!
ではまたお会いしましょう。
サヨナラサヨナラサヨナラ

                  はるのん1号


コメント (15)
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