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モバイルSuicaでICカードの境界駅を乗り越える旅

ICカード乗車券の「不便」が一歩改善

 これまで交通系ICカードは、JR旅客会社間の境界駅またはその前後の駅において分断されていた。東京駅から東海道線に乗っても熱海駅まで、静岡方面から乗ると熱海駅の一つ手前の函南駅までしか利用できず、熱海-函南間を含む乗車ではICカード乗車券は使えないという制限があった。
 2021/3/13から、定期券においては会社間をまたがる区間のICカード定期券の発行が可能になり、通常のICカード乗車券も境界駅まで利用できるようになっている。東海地区においてはJR東海とJR西日本の境界駅のうち、米原駅と亀山駅の取り扱いが変化しているので状況を確認してきた。

JR東海313系電車で米原へ


米原駅はTOICA改札機を追加設置

 大垣駅から米原駅まで特別快速でやってきた。米原駅はJR西日本の管理駅であり、これまで名古屋方面からは米原駅の1つ手前の醒ヶ井駅までしかTOICAエリアではなかったが、2021/3/13からは米原駅がTOICAエリアに含まれることになった。

米原駅の駅名標。JR東海の駅ナンバリングも表示

 米原駅の改札口をホーム側から見てみよう。
 「名古屋・岐阜・大垣方面から交通系ICカードでお越しのお客様は、左端の自動改札機をご利用ください」と足下に表示されているとおり、一番左にTOICA改札機が設置されている。つまりは一番左が「JC米原」の出場専用改札機で、残りは「JW米原」の改札機というわけだ。大垣駅からモバイルSuicaで乗車してきた私は一番左の改札機を利用することでTOICAエリアの精算が完結し正常に出場できる。入場においては、TOICA改札は利用できず、名古屋方面も京都・敦賀方面もICOCA改札機を利用することになるが問題はない。
 蛇足だが、足下の案内とTOICA出場改札機への誘導表示の色は、TOICAのカードと改札機の水色に合わせたのだろうが、JR東海のカラーであるオレンジのほうがわかりやすいとは思う。

JR米原駅の改札口


関西本線の車載型IC改札機を観察する

 関西本線は、名古屋駅から奈良県の加茂駅を経てJR難波駅までを結ぶ路線である。このうち名古屋駅から亀山駅までがJR東海の管理で、亀山駅の隣の関駅以西がJR西日本のエリアとなる。
 今回の行程では、米原駅から乗車した琵琶湖線を草津駅で下車し、草津線で南下して柘植駅で関西本線の非電化区間を走るキハ120系を捕まえ、奈良側から亀山駅に向かっている。

JR西日本キハ120系

 ICカード乗車券界隈では、この関西本線キハ120系も2021年のトピックの一つだ。加茂駅から柘植駅を経て亀山駅までは非電化の単線区間であるが、同じ2021/3/13から駅員配置駅のIC改札機とキハ120系に搭載された車載型IC改札機とを併用することでICOCAエリアが拡大され、ICカード乗車券が利用できるようになった。
 キハ120系の運転席の後ろには乗車用と降車用のIC改札機が、反対側の乗降口には乗車用のIC改札機が設置された。精算を行う運賃箱にもバスのような降車用のIC改札機があり、両運転台の車両1両に計8台のIC改札機が設置されていることを確認した。

キハ120系の車載型IC改札機


 無人駅に到着して乗車口のドアが開くと、乗車用のIC改札機には「乗車の方はICカードをかざしてください」と表示される。駅員配置の柘植駅では「駅に設置の改札機にタッチしてください」と表示されていて、二重に入場処理を行うことがないよう制御されていた。
 今回、車載型IC改札機を利用する機会は無かったが、この方式なら全ての駅にICカード簡易改札機を設置しなくても路線をICカード乗車券のエリアにすることができる。JR西日本では境線や七尾線などでも採用されているという。

乗車用の車載型IC改札機


亀山駅はICカード処理機で簡易対応

 亀山駅に到着した。私は米原駅で入場して草津線と関西本線を経由しているので、ICOCA改札機から出場する必要がある。JR東海管理の亀山駅ではTOICA改札機が基本形だが、改札口横の黒板にICカードで関・奈良方面、京都・大阪方面から下車する場合は窓口の精算用IC処理機にタッチするよう案内があった。つまり、この処理機が「JW亀山」の出場用改札機である。

亀山駅の案内板


 処理機は降車用の車載型IC改札機や出場用の簡易TOICA改札機と同じ黄色の外観だが、機器は駅窓口内にある処理機を箱に収めたようにみえる。「3秒タッチ 1・2・3 OK」という案内にも注目だ。「タッチ1秒」と表記されているmanaca改札機を見たことがあるが、3秒のタッチを促すこの処理機は精算に時間を要するのだろうか。さらに細かいツッコミを入れると、ICOCAの精算機なのに、TOICAのひよこのイラストを描いてしまったのは紛らわしい感じがする。
 亀山駅もこの処理機を使うのはICOCAエリアからの出場の場合のみだ。入場の際にはICOCAエリアへの乗車であってもTOICA改札機を利用する。

亀山駅のICOCA精算用IC処理機


エリアまたぎの連続乗車は不可

 さあ、モバイルSuicaアプリのSF利用履歴を確認しよう。
 大垣駅から米原駅は、JC大垣で入場しJC米原で出場。米原駅から草津線を経由して亀山駅までは、JW米原で入場しJW亀山で出場。さらにその先、名古屋方面の関西本線を利用した亀山駅から四日市駅までの乗車はJC亀山で入場しJC四日市で下車したと記録されている。米原駅と亀山駅の入出場記録にそれぞれJCとJWの事業者名表記があるのが専用改札機を通過した証だ。

モバイルSuicaアプリのSF利用履歴


 今回の行程では、境界駅で一旦出場することで単一のモバイルSuicaでの乗車を実現している。大垣駅から四日市駅までの乗車で支払った3区間合計運賃3,080円は、偶然にも紙の切符を通しで買った場合と同額だが、こうした分割購入は区間によっては割高になる可能性もある。
 ICカード定期券を除き、ICカード乗車券でのエリアまたぎの乗車は依然としてできないのが現時点での制限だ。このルールを念頭に置いて、乗車履歴を刻むモバイルSuicaの旅を引き続き楽しみたい。

エリアをまたいだICカードの利用は出来ません!

参考

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