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交通系ICカード非対応エリアにモバイルSuicaで乗車してきた

名鉄線のmanaca非対応エリア

 名古屋鉄道(名鉄)は、ほぼ全線で交通系ICカードmanacaが利用できるのだが、2区間だけ非対応エリアがある。それが、蒲郡線の三河鳥羽駅~蒲郡駅間と広見線の明智駅~御嵩みたけ駅間である。
 ただ、このエリアも交通系ICカードでの乗車がまったくできないわけではなく、特例取扱いが設けられている。それぞれ境界にある吉良吉田駅と新可児駅以遠との区間を乗車する場合のみ、交通系ICカードの利用ができるのだ。今回は、広見線のmanaca非対応区間にモバイルSuicaで乗車してきた。

新可児発御嵩行の普通電車


新可児駅の「のりかえ改札口」

 犬山駅を起点とする広見線は、愛知県犬山市から岐阜県可児市を経て可児郡御嵩町までを結ぶ路線である。現在は全線を直通する電車がなく、犬山駅を発車した電車は全て新可児駅で折り返す。正式なmanacaエリアはこの新可児駅までだ。乗換駅となる新可児駅には御嵩方面の電車が発着するホームとの間に中間改札(のりかえ改札口)が設置されている。

新可児駅の御嵩方面のりかえ改札口

 のりかえ改札口に自動改札機はあるがICカードリーダーはなく、改札機にも「ICカード×」と表示されている。隣の係員窓口に目をやると「この先(新可児駅~御嵩駅) ICカード対応していません。ここで精算してください」と書かれていた。
係員窓口の精算案内

 この窓口で、新可児駅までの乗車に使用した交通系ICカードまたはモバイルSuica等が設定されたスマートフォンを係員氏に渡して広見線内の下車駅を告げると、この先の区間も交通系ICカードでの乗車が可能になる。もちろん、manaca以外の全国相互利用に対応する交通系ICカードやモバイルSuica等のモバイルICカードでも同じ対応を受けられる。
 今回は、終点の御嵩駅まで乗車することにした。すると係員氏はスマートフォンを窓口内のカードリーダーに載せて何やら処理をしたあと、スマートフォンとICカード精算済み証と書かれた紙を渡され、係員通路を通るよう言われた。この紙が切符の替わりになるという。


ICカード精算済み証とは

 車内でICカード精算済み証をじっくりと確認してみる。

ICカード精算済み証

 ICカード精算済み証は感熱紙タイプの用紙に打ち出された簡易なものだ。一番上に「他駅出場明細」とあり、申告した下車駅「御嵩」が表記されている。乗車に利用したモバイルSuicaのSuica番号や乗車駅に続いて、乗車駅である金山駅と下車する御嵩間の運賃1,190円が精算済みであることを示している。
 そうなると気になるのが、モバイルSuicaのSF利用履歴だ。Android版アプリでは翌日を待たなくてもリアルタイムに反映されるので、さっそく確認してみると…。

モバイルSuicaのSF利用履歴には既に御嵩駅での下車記録

 入場駅に名鉄金山駅を意味する「TP名鉄金」、出場駅には「TP御嵩」と御嵩駅の名前が表示されている。新可児駅精算のような記載ではなく、manaca設備のない御嵩駅の駅名が表示されたのは驚いた。


交通系ICカード非対応エリアからの乗車

 では、逆に交通系ICカード非対応エリアから乗車する場合にはどういう手順になるのだろうか。広見線の終点・御嵩駅から1駅分歩いて、御嵩口駅にやってきた。
 路線図の下の掲示を見ると「ICカード(manaca)で、新可児駅以遠へご利用の方は、自動券売機にて「乗車駅証明書」をお受け取りのうえ、新可児駅の係員にお申し出ください」とある。

ICカードで新可児駅以遠へご利用の方は自動券売機にて「乗車駅証明書」をお受け取りのうえ、新可児駅の係員にお申し出ください

 自動券売機は最低限の機能のシンプルなものだが、タッチパネル画面右下に「乗車駅証明書」というボタンがある。
御嵩口駅の自動券売機と右下に「乗車駅証明書」発行ボタン

 ボタンを押して発券された「乗車駅証明書」には、「当駅で乗車されたことを証明いたします」と記されている。発券は無料だ。
御嵩口駅の乗車駅証明書

 この証明書を、乗車に利用する交通系ICカードやモバイルSuica等が設定されたスマートフォンとあわせて、新可児駅で係員窓口に提示すると、乗車駅証明書と引き換えに今度は乗車駅が書き込まれてICカード等が返却されるというわけだ。実際に新可児駅で乗り換え、新鵜沼駅で下車した履歴が以下の画面である。こちらもmanaca設備のない御嵩口駅の駅名がしっかりと表記されている。
御嵩口駅の入場記録

 この特例はあくまでmanaca対応している新可児駅以遠との乗車に限る点がポイントだ。御嵩、御嵩口、顔戸、明智駅の4駅の相互区間では、(理論的には可能と思われるが)ICカードに乗車駅や降車駅を書き込む係員窓口がなくこうした対応は行っていない。
 新可児-御嵩間は、manacaの前身であるプリペイドカードによるSFカードシステム「トランパス」の導入がされず、2011年にサービスが開始されたmanaca設備も導入されないままだ。というのも、名鉄は2007年にこの区間を廃止する可能性を地元自治体に示している。これに対し、地元自治体は活性化協議会を設立し、利用促進事業とあわせて名鉄への財政支援を行って維持している路線である。
御嵩駅に到着した名鉄6000系電車

 駅や車内に簡易改札機を導入してICカード利用エリアを広げている路線もあり、また岐阜県内のバス事業者では新規にICカード導入が進んでいるが、広見線のこの区間は現在の人的な対応で交通系ICカードの利便性を維持する利用状況にあるということだ。


参考

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