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四国・香川県でモバイルSuicaの乗車記録を刻む旅

 年の瀬に香川県に出かけてきた。
 「本場の讃岐うどんを食べに」とか「穏やかな瀬戸内海の島々を眺めに」など耳障りのいい目的も用意してあるが、主目的はモバイルSuicaの利用履歴を刻む旅だと言って差し支えない。さっそく、当日のモバイルSuicaアプリのSF利用履歴画面を見てみよう。乗車順に下から旅路を振り返っていく。名古屋駅から乗車したのぞみ号で、山陽新幹線の岡山駅に降り立ったところからスタートだ。

モバイルSuicaアプリのSF利用履歴画面


ICOCAエリアは海を渡る

 本州と四国を鉄路で繋ぐ通称「瀬戸大橋線」は、JR西日本の岡山駅からJR四国の高松駅までの宇野線、本四備讃線、予讃線の総称である。岡山駅からのファーストランナーは、瀬戸大橋線と土讃線を経由して高知駅まで走破する特急南風号に乗車することにした。
 2700系特急気動車で運行される南風3号は、いわゆる「アンパンマン列車」。岡山駅を発車した直後の車内放送第一声が「みなさん、こんにちは! ぼく、アンパンマン!」で思わず吹き出した。四国の歓迎は手荒い。

2700系特急気動車で運行する特急南風3号

 JR四国管内のICカード乗車券サービスはJR西日本が提供するICOCAエリアを拡大する形で展開されている。2022年12月時点で利用できるのは、児島駅から高松・多度津駅までの区間と、2020/3/14にピンポイントで追加された観光地アクセス駅7駅のみで、愛媛、高知、徳島県内のJR駅はICカードに対応しない。

ICOCA四国エリア
(JR四国のWebページから引用)

 岡山駅から瀬戸大橋を渡って約60分、こんぴらさんで知られる金刀比羅宮の最寄り駅・琴平駅に到着した。同駅には自動改札機が無く、改札口に簡易改札機が入場用と出場用それぞれ1台ずつ設置されていた。
 出場記録は「JS琴平」。ICOCAエリアだがJR四国の駅なのでJSという事業者符号が付けられている。モバイルSuicaアプリの利用履歴には「JW岡山」で乗車して「JS琴平」で下車という記録が残った。同じICOCAエリア内とは言え、現時点でJR地域会社をまたぐ利用履歴は四国エリアを含む乗車しか存在せず希なパターンだ。
 なお、琴平駅ではそれぞれのホームにも簡易IC改札機がカバーをかけた状態で設置されているのを見かけたが、後で調べてみると早朝や深夜の駅員が配置されない時間帯に発着する列車の精算対応用のようだ。

琴平駅の出場用改札機

ことでんIruCaエリアをモバイルSuicaで旅する

 JR琴平駅から200mあまり歩くと、琴電琴平駅にたどり着く。
 「ことでん」は高松琴平電気鉄道が正式名称で、ことでんグループの同社が運用するICカードがIruCaである。2018年3月から電車線で、2019年3月からことでんバスで、それぞれ交通系ICカードの全国相互利用サービスに片利用で対応しSuicaやTOICAなどの利用が可能になった。IruCaの名称は高松琴平電気鉄道株式会社のキャラクターであるイルカの「ことちゃん」とICカードに由来している。

琴電琴平駅

 琴電琴平駅には簡易改札機が設置されており、IruCaと共にSuicaやTOICAなども利用できることがシールで表示されていた。
琴電琴平駅の入場用改札機

 利用履歴は琴電琴平駅が「KD琴電琴」、栗林公園駅が「KD栗林公」で、琴電を「KD」で表現したあとに駅名を先頭から続けている。琴電琴平は「KD琴平」の方がわかりやすいと思うが、3文字目までが重複する駅名が同社に存在しないので命名ルールの統一を選択したのだろう。
 なお、IruCaで電車やバスに乗車する際には月あたりの利用回数に応じた回数割引や乗り継ぎ割引の制度があるが、他エリアの交通系ICカードでは適用されない。
1080形電車


 高松市内を運行する路線バス(コミュニティバスを除く)は、ことでんグループのことでんバスと大川自動車が運行する大川バスがあり、どちらもIruCaで乗車できるが全国相互利用に対応しているのはことでんバスのみだ。
 ことでんバスに栗林公園前から高松駅まで乗車したあと、モバイルSuicaアプリの履歴を見ると、種別が「バス等」で利用場所が「ことバス」と表示された。この「ことバス」という略称を市内で見かけなかったので調べてみると、香川県には、ことでんバス株式会社とは別に「琴平バス」という観光バス・タクシー事業を営む会社があり、こちらは従前から「コトバス」を名乗っている。ことでんバスの履歴表示は、ひらがな交じりの「ことバス」と表記することで区別することにしたのだろうか。

ことでんバス


小豆島にモバイルSuicaの履歴を刻みに行く

 IruCaを採用している交通機関のうち、2022年12月時点で他エリア交通系ICカードを受け入れている事業者が香川県内に、もう一社ある。
 それが小豆島オリーブバス株式会社だ。その名の通り、小豆島でバス事業を営む事業者である。ここまで来てチャレンジを見送る手はないだろう。モバイルSuicaアプリに利用履歴を刻んで同社の事業者表記を確かめるため、高松港フェリー乗り場に向かった。
 高松から小豆島に向かう航路は複数あるが、高松市に近い島の南西側にある土庄とのしょう港へのアプローチが本数も多く乗りやすい。小豆島フェリー株式会社が運航する高速艇の乗船切符はIruCaでは購入できるが、他エリアの交通系カードには非対応だったので現金で購入した。

小豆島フェリー株式会社 小豆島土庄ゆき高速艇きっぷ売り場

 モバイルSuicaアプリをインストールしたGalaxy S21 Ultra 5Gを握りしめ、高松港から22kmの海路を約35分で結ぶ高速艇のシートに身を預けた。

オリーブマリン

 小豆島に上陸したのち、高速艇乗り場に近い「平和の群像前」バス停から小豆島オリーブバスに乗車。島内観光地の一つエンジェルロード前の「国際ホテル」バス停で下車すれば、いよいよクライマックスである。

小豆島オリーブバス

 「オリーブ」か「小豆島バス」という表記を予想しながら、開いたモバイルSuicaアプリの利用履歴画面で見た文字列は・・・
モバイルSuicaの乗車履歴は「ことバス」


 ことバス!
 小豆島オリーブバスがことでんグループでないことは事前に確認していた。ただ、IruCaを採用していることから「ことでんバスと同じかも」という予感がゼロだったわけで無かったけれど…。まさか、まさかの「ことバス」表記だった。あとから両社の乗車用リーダーライターを比べてみれば、たしかに同型。おそらく同じシステムを利用しているのだろう。

ことでんバスと小豆島オリーブバスの乗車用リーダーライターを比較


 小豆島には、映画「二十四の瞳」のロケセットを改築したテーマパークや、オリーブをテーマにした公園、日本三大渓谷美と称される寒霞渓、潮の満ち引きによって現れる砂の道エンジェルロード、島内各地に点在する映画「魔女の宅急便」のロケ地などがあり、とても1日では周りきれない魅力あふれる島です。
 小豆島オリーブバスのモバイルSuicaアプリでの履歴表示が「ことバス」であることは、私が代表して確認しましたので、これから島を訪れるみなさんは安心してゆっくり観光してください。

エンジェルロード


 最後にオチは付いたが、日常生活圏から足を大きく伸ばしての旅は見るもの全てが新鮮で満足いくものだった。
 讃岐うどんをすすりながら、早くもモバイルSuicaを使った次の旅行先に思いを巡らせている。

本場讃岐うどん 上原屋本店で、かけうどんとエビ天


【参考】

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