市場の女
南大門市場近くの歩道脇でビニール幕を広げ、スモモを山盛りに売ってる女がいる。
何十人、なん百人もの人々が前を通り過ぎ、たちどまった数人が買い求めていた。
緑色のチマを腰にまき、オヤッ!オヤッ!と呼び声をあげ、ひと山二千ウオンと書いた紙が風に揺れている。
突然、女はスモモの山に体を伏せた。騒がしい女の声、市場の警備員がやってきたのだ。 激しいやりとりが始まるが形勢不利と見た女はビニールの四隅を引っ張って包むとあっという間に人込みに消えた。
しかしものの三分もしないうちに再び同じ場所にやってきてオヤッをひろげる。
彼女にしてみれば、ここは何千人もの人が通って品物がさばけ、銭が入る道理を持っている故に、意地悪な警備員に悪態をついたのだ。
女の生きる逞しさ、韓国女性の生活力の強さをつくづく感じた。
いつかこんな商売女と玩具の小さな長鼓を買った時の会話。
「失礼ですが子供さんは?」
「二人の息子は延世大学の法律大学生ヨ…銭がいくらあっても足らないヨ」と胸をはって答えた。
日本と異なり、なになに学部と言わず、学部にも大学をつけるのである。例えばソウル大学、工学部はソウル大学工学大学と言うように。
「水原から毎日トラックに便乗してくるヨ」女は日焼けした顔で言う。
逞しい腕、鍛えられ土がしみこんだ太い指、愛嬌のある顔はちよっと四国の叔母の顔に似ていた。
季節によって、栗、なつめ、ざくろ、柿、など色々な果実を持ってくると言った。
東北の港町の逞しい魚行商の女を思い出したが、子供逹にかける学問への執念には感動した。
傍らに埃をものともせず、市場食堂から出前させて食べた、ヘジャンク(牛のレバー、ネギ、モヤシ、ニンニク、の味噌煮)らしいネギとモヤシが残る空丼が転がっていた。
それから二時間後、再び訪れたら女の姿は消えていた。
財布に数万ウオンの紙幣を入れ、市場で干し魚でも買って水原の農村へ帰ったに違いない。
南大門市場近くの歩道脇でビニール幕を広げ、スモモを山盛りに売ってる女がいる。
何十人、なん百人もの人々が前を通り過ぎ、たちどまった数人が買い求めていた。
緑色のチマを腰にまき、オヤッ!オヤッ!と呼び声をあげ、ひと山二千ウオンと書いた紙が風に揺れている。
突然、女はスモモの山に体を伏せた。騒がしい女の声、市場の警備員がやってきたのだ。 激しいやりとりが始まるが形勢不利と見た女はビニールの四隅を引っ張って包むとあっという間に人込みに消えた。
しかしものの三分もしないうちに再び同じ場所にやってきてオヤッをひろげる。
彼女にしてみれば、ここは何千人もの人が通って品物がさばけ、銭が入る道理を持っている故に、意地悪な警備員に悪態をついたのだ。
女の生きる逞しさ、韓国女性の生活力の強さをつくづく感じた。
いつかこんな商売女と玩具の小さな長鼓を買った時の会話。
「失礼ですが子供さんは?」
「二人の息子は延世大学の法律大学生ヨ…銭がいくらあっても足らないヨ」と胸をはって答えた。
日本と異なり、なになに学部と言わず、学部にも大学をつけるのである。例えばソウル大学、工学部はソウル大学工学大学と言うように。
「水原から毎日トラックに便乗してくるヨ」女は日焼けした顔で言う。
逞しい腕、鍛えられ土がしみこんだ太い指、愛嬌のある顔はちよっと四国の叔母の顔に似ていた。
季節によって、栗、なつめ、ざくろ、柿、など色々な果実を持ってくると言った。
東北の港町の逞しい魚行商の女を思い出したが、子供逹にかける学問への執念には感動した。
傍らに埃をものともせず、市場食堂から出前させて食べた、ヘジャンク(牛のレバー、ネギ、モヤシ、ニンニク、の味噌煮)らしいネギとモヤシが残る空丼が転がっていた。
それから二時間後、再び訪れたら女の姿は消えていた。
財布に数万ウオンの紙幣を入れ、市場で干し魚でも買って水原の農村へ帰ったに違いない。