吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

玄界灘を越えて青井戸三十九

2005年07月04日 08時44分31秒 | 玄界灘を越えて
玄界灘を越えて青井戸 三十九

「宗湛様の尊敬された織田信長さまは本能寺で亡くなられましたが 成仏されたのでしょうか?」李念が訊ねた。
「李念よ!そのとおり、立派に成仏された、炎につつまれても鬼神 のごとく闘われたんじゃ…」
「鬼神って和尚様、鬼は恐ろしい幽霊です…魂と言いますよ、神は 霊をもっています…父様は士(ソンビ=儒学者)でしたから喪式 の時教えてくださいました…」
「李念は日本にきてこの寺院に得度したのだからその時の儀式を忘 れずにこれから仏の道を学んで立派な僧にならなければのぅ…」 心海は内心、さすが清正公の言われた俊才だと舌をまいた。
「仏の道って人の道とどう違うのですか?」
 李念は納得できぬことがあるとどこまでも質問してくる。
 オレは心海和尚の前に座ったまま二人の話しを聞いて居た。
「仏の道を修行すれば人の道にかなうことになるんじゃ」
 心海は李念にどう教えようかと…真剣に考えだした。
 心海は儒学、とくに朱子学についてはほんの上っ面しか知ってなかった。
「李念よ!お前が学んだという朱子学と仏教とまだ比べられぬだろ うが…例えば朱子の説く仁、義、礼、智、信、を簡単に話して見 なさい」心海はどんな答えをするか、まだ子供だから答えに窮するに違いないと思って訊ねた。
「偉い和尚様の前では仁、や孝経を話せません…」
「それはどうゆう意味じゃ…」
「和尚様は得度してからどんな勉強されましたのでしょう …」  李念め!これは意味ふかい質問じゃなと心海は思った。    「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)というわが禅宗の開祖、道元の書を学び、ひたすら座禅修行にあけくれたわ…」
「仏教の書はそれほど多くはないのですね…朱子学は始めに『小学』 そして四書の『大学』『中庸』『論語』『孟子』と学び、まだそ の上に五経があります…それから…」
 さすがウリナラ儒教の俊才はちがう、とオレは感心した。
「分かった分かった!これから来客があるから、本堂の掃除をきち んとしなさい!」
 心海は李念の教育はなかなか手強いことを実感した。

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