竹村英明の「あきらめない!」

人生たくさんの失敗をしてきた私ですが、そこから得た教訓は「あせらず、あわてず、あきらめず」でした。

ゲンパツゼロの朝にあたって

2012年05月06日 | 原発
昨晩(5月5日)11時3分に泊原発3号機が運転停止した。これによリ、日本の原発50基がすべて停止した。
今朝はゲンパツゼロの朝である。5月連休最後の爽やかな朝である。
電気の供給には全く支障なく、何のトラブルも起きていない。
全ゲンパツを停止しても余りある、必要量の1.5倍の電源設備が用意されていたのだから当然なのだ。
日本は電源がだぶついている国だと言うことを、政府もマスコミもまったく伝えない。

昨日は全国各地でゲンパツゼロを祝う集会やデモが行なわれた。
しかし、ゲンパツの停止がまだ永遠のものとなったわけではない。
枝野経済産業大臣はこれを「瞬間的なゼロ」だと評している。
原発推進調である経済産業省も、政府全体も、まして電力会社も、どこもまだゲンパツをやめると決めていない。
それどころか、まだゲンパツを増やそうという動きすらある。

資源エネルギー調査会の基本問題委員会では「脱原発依存社会」という菅元総理の方向づけを受けた審議をしている。
ところが「脱原発依存」とはウラハラに、2030年の原発依存度の提示では、35%というとんでもない数字を平気で出す委員すらいる。
すでに出されている「40年廃炉方針」が、その通り履行されるなら2030年にゲンパツは電力供給の10%にしかならない。
35%は10数機のゲンパツを新設しなければ、そんな数字にならない。
実は20%でもゲンパツの増設は必至となる。
ところが脱原発依存の立場に立たない約半数の委員たちは、全員20%以上の数字だ。
脱原発依存の方策を審議するのに、原発推進派委員を半分も入れて、最終的には「ゲンパツ増設」が多数になりました・・とやるならこれは茶番である。

昨年の3月11日の複数機同時のメルトダウン、水素爆発、その後の大量の放射能放出という事態を経て、政府はどんな反省をしたのだろう。
そもそも本来、問題は電気が足りるか足りないかではないはずだ。
活断層の存在や地震履歴を意図的に無視し、耐震基準を甘く値切ってきた安全審査体制。
不正な補修やごまかしの検査を行なっても見抜けない、定期点検などの法令検査。
最悪の事態をあえて想定せず、広範囲の人々を被曝させた防災体制。
などなど・・、原子力安全・保安院と原子力安全委員会による原子力規制システムの欠陥が歴然としている。
これだけの事故があれば、そもそもこれまでの安全審査や検査にたずさわった人の責任が問われ、場合によっては刑事罰すら問われるべき話なのだ。
そういう責任の追及が全くないばかりか、ゲンパツ再稼働の判断をこの人たちにさせている。
その采配自体が、犯罪に等しいか、もしくはとてつもない間抜けということになるだろう。

危険なものは動かせない。
それで電気が足りなくなるのなら、「すいません、皆さん協力してください!」というのがスジだろう。
ところが、冒頭に書いたように、発電設備は過去最大ピーク電力の1.5倍もあるのだ。
関西電力のゲンパツ依存度が高いというのは、他の火力発電を止めてゲンパツばかりを動かしていたからだ。
しかも火力で足りなければ、揚水発電、管内自家発電、さらに他社融通電力がある。
実は関西圏は、北陸電力、中部電力、中国電力、四国電力からの強力な連系線がある。
その容量は3000万kWを超える。
「容量制約」という根拠不明な理由で、そのうち800万kWくらいしか使えないというが、800万kWも送れる。
今夏、関西電力が不足すると言っているのは最大で16%、量にして500万kWなのだ。

関西電力はどう逆立ちしても電気が不足することはない。
それでも「足りない」というのであれば、計画停電でも何でもやれば良いだろう。
嘘はそのうちばれる。

これからの課題は、ゲンパツゼロをいかに法的制度的にきちんと位置づけるかだ。
一つは原子力規制システム。
政府は原子力規制庁の発足を決めているが、この法案は問題だらけで国会審議にも入れていない。
スタートしても、基本的に原子力安全・保安院の横滑りだ。
法的に設置された「国会事故調査委員会」が、事故原因と原子力規制のあり方について提言すべく準備をしている。
この提言を待って、法案を見直し、原子力ムラの影響を完全に排除した「独立規制機関」を作るべきだ。

もう一つは、技術基準。どういうゲンパツ、どういう状況であれば廃炉にするのかの技術基準を明確に作るべきだ。
そんなのは、「技術基準をクリアした原発は動かしていいよ」という基準を作るようなものだと反発する人がいるだろう。
そんな意見が、「歯止めゼロ」のゲンパツ天国を作ってきたことに思いを馳せるべきだろう。
まず福島第一の残る2基とBWRのマーク1型はダメ(12基もある)
次に40年以上運転はダメ(3基ある。上記との重複が1基。)
そして明確に活断層が近くを走っているものはダメ(30基あり。重複7基)
これで37基は廃炉が確定する。
残りのうち5基が10年以内に40年廃炉をむかえる。
残るは8基だが、すべて近いうちに活断層の存在が確認されるだろう。
この一覧は、eシフトブックレット「原発を再稼働させてはいけない4つの理由」にある。
74ページの一覧表だ。
http://e-shift.org/?p=1605

さらにこれを強力な確定にするには「国民投票」と「政治を変える」だ。
ただし「政治を変える」はなかなか難しい。
「変えるため」に選んだ政党が、政権党になると官僚機構に絡めとられて政策が変わるからだ。

1000万人署名を実現しても、100万人のデモを達成しても、それだけでは原発は止まらない。
制度と法律、仕組みとしてきちんと作り上げるところまでやり遂げないと、歴史は逆戻りする。
そろそろ日本の市民も、そのことをしっかりと意識するときではないだろうか。
署名もデモも、それが目的ではなく、確かな制度や法律の確立をめざしたアクションであるべきだ。
国民投票も「政治を変える」ための選挙も、目的意識を持って、数値目標や「その後の作戦」まで立ててのぞむべきではなかろうか。

清々しい朝に、なかなか生々しい話になってしまった。
これが、日本の現実だ!



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