疑い深くなった‥と思う。
ATMに用事があって、駅前に出掛けた。
降りしきる雨の中、駅前の複合ビルの駐車場脇に一匹の雑種犬が繋がれていた。
昨今は、レインウェアなど着て散歩している犬も多い中、遮るもののない路傍に、もちろんウェアなんて着ていない。
ちょっと目に付きにくい一角なのだ。
垂れ耳の‥巻き尾というほどでもない茶色い色をした、15キロ超はありそうな まごうことなき雑種犬
置き去りにされたんじゃないよね?
疑い深くなったと思うのは、真っ先にそう思ってしまったから。
近付くと、吠えもせず、うれしそうに寄ってきた。
飛びかかりもしないし、近くに来て座って、頭や顎を撫でたその手を舐めてくる。
優しい目をした女の子だ。
傘の下に一緒に収まったその子の足が、ちょっと私のスニーカーの上に乗っかっているんだけど‥
かわいいな
「ママを待ってるのかな?パパを待ってるのかな~?」
雨の降りしきる中、10分くらいもそうしていると、なんだか不安になって来た。
思わず、首輪やロープ(リードではなくロープ)を確認してしまう。
なぜ、首輪が二重なのか?
下にしている古い首輪はちょっときつそうだ。
なにか手がかりになるようなものはないか?
痩せてはいないし、怪我もしていないけれど‥
15分くらいそうしていただろうか‥その子がお尻を浮かせた。
お迎えが現れたのだ。
すぐ脇の複合ビルの中から、おじさんが傘もささずに‥。
「すみませんねー」
「おとなしくていい子ですね」
「おとなしくて番犬にならないんですよ」
繋がれて雨に濡れてたその子が気の毒だったけど、うれしそうに尻尾を振って引かれて行った。
よっぽど近所なんだろうか?
おじさんが傘をさしていなかったのが救いのような気がした。
けっこう本降りなんだけど。
アンタだけ傘をさしていたなら許さんかった!