メメント・モリ

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テキスト:判例六法 有斐閣

2004-12-22 00:54:48 | 司法試験:テキスト
 テキストというと語弊がありますが、受験生の使う参照六法の中で司法試験用六法を除いて、1.2番目の人気のある六法です。

 その名のとおり、判例が条文の後ろに掲載されている六法です。他には岩波の「判例基本六法」もありますが、掲載量では、判例六法が群を抜いて多いです。また、民法などカタカナ書きの条文もひらがなに直してあるのも特徴のひとつです。
 使っている人は多くても、その使い方については今まで語られてこなかったのではないでしょうか。そこで、私が6科目別にどのような使い方をしていたのか、今回は特別にご紹介いたします。


 憲法:判例重視の憲法は、意外と判例六法の活躍の場が少なかったです。というのも、憲法で勉強していて判例が気になった場合、ちょっとその規範や結論を見ただけで解決するような簡単な疑問点は少ないからです。結局百選や手持ちのテキストに戻らないといけないハメになります。

 民法:たとえば、612条で信頼関係破壊理論を学習したとします。テキストにはそれに関する代表的な判例しか載っていません。もっと判例の当てはめの限界を知りたい場合、判例六法にあたります。そうすると、さまざまな「当てはめ判例」が掲載されていて、判例の価値観・判例の射程というものがおぼろげに見えてきます。110条の「正当事由」なんかもその例です。

 刑法:ここも重要判例については判旨とともに、事案も重要なので、判例六法では調べません。代わりに、ちょっとマイナーな罪「信用毀損・文書毀棄など」についてどういう場合がつみになるのか、あてはめかたを学習していました。

 商法・訴訟法:商訴以下が判例六法の真骨頂です。まず、民法・刑法などと同じようにややマイナーな条文・制度について、具体的にどんな事例で使われているのか読み、イメージを膨らますのに役立てました。さらに、当該条文から派生するさまざまな知識、関連条文についても判例六法で学習しました。
 例えば、株主の買取請求権について、245条の2を開けば、その条文の後ろにそれ以外の株主買取請求権が掲載されています。また、必要的口頭弁論の原則である87条を開けば、3項のいう「特別の定め」すなわち例外規定の具体的条文がその後ろに掲載されています。


 気になったひとつの条文から発展的に条文知識を学べることが判例六法のいいところだと思います。
 ただし、いくら関連事項が掲載されているとしても、あらかじめその条文についてある程度テキストで知っておかないと、ただ条文だけを読んでも身に付かないでしょう。判例六法は条文の「復習ツール」として使うのがいいのではないでしょうか。

 ちなみに、以下は余談になります。
 編集委員に司法試験委員が混じっていることも人気の理由のひとつなのでしょうか。あまり気づいている人はいないと思いますが、司法試験の論文試験でネタになった判例が出題年前後に判例六法にあえて掲載される場合があります。(具体例として、平成15年刑訴第1問と判例六法刑訴197条28番の関係があります。)これが、論文出題「前」に掲載されることが特定できたなら、かなりの出題予想となります。
もっとも、そんなヒマなことをやっている余裕があったら、他の勉強をしたほうがマシだと思います(自分で紹介しておいてなんですが)。