産業技術総合研究所構造材料研究部門光熱制御材料グループ山田保誠研究グループ長、垣内田洋主任研究員は、神戸市立工業高等専門学校、大阪有機化学工業株式会社と共同で、液晶と高分子の複合材料を開発した。これは、二枚のガラス基板の間隙に混合原料を満たし硬化させて作製することができ、構造が単純で作製が容易であるため、調光ガラスなどに応用可能である。この複合材料は、温度変化によって透明度が切り換わり(低温で透明、高温で白濁)、同時に光の前方散乱強度が変化する性質がある。これにより、近赤外領域を含む光の全透過量を可逆的に20%以上変えることができる。
ポイント
〇温度変化による相転移を利用して透明と白濁を切り換えられる液晶複合材料を開発
〇新規の液晶複合構造の開発により、前方への透過光量の制御に成功
〇建物や移動体の窓に貼り付けることで、暖冷房負荷低減に貢献
近年、省エネが求められる中、住宅やオフィスビルなどの建物の暖冷房負荷の低減にも注目が集まっている。とくに、温暖地での暖冷房負荷の低減には窓から入る太陽光透過量の制御が有効である。調光ガラスは、外部からの刺激で太陽光透過を制御するガラスである。
液晶を用いた調光ガラスは、電気で制御するタイプが既に上市され、フィルム化もされている。また、温度によって自発的に透明と白濁が切り換わる、熱応答型の液晶複合材料も報告されている。しかし、透明と白濁の切り換え特性を活用して、光の全透過率を制御するという試みは、これまで成功していなかった。単に白濁状態のみを実現するには、入射光を透過側に散乱(前方散乱)させるだけでよく、そのような材料は比較的容易に作製できる。しかし、これだけでは全透過率は下がらないので、プライバシーガラスとしては使えるが、省エネ用途には適さない。省エネ用途では、白濁時に全透過率を下げる必要があるが、それには光を入射方向とは反対の方向に散乱(後方散乱)させる、内部構造を有する材料を作らなければならない。しかし、温度によって後方散乱が変化する熱応答型の液晶複合材料の開発は格段に難しかった。
研究の内容
高分子ネットワーク液晶(PNLC)と呼ばれる液晶と高分子からなる複合材料を、二枚のガラス基板ではさんだ構造の調光ガラスを開発した。この調光ガラスは、液晶、モノマー(高分子の原料)、重合開始剤の混合原料を二枚のガラス基板の間隙に満たし、紫外光を照射して重合させて作製される。今回開発したPNLCは、高分子の網目の中に液晶が満たされている構造で、生活温度付近で、温度によって透明と白濁が切り換わり、同時に全透過率が大きく変化する。低温では、液晶分子が配向し、液晶相と高分子相の屈折率が一致するので、PNLCは光学的に均一となり透明になる。一方、高温になると、液晶分子の配向が乱れて屈折率が変化し、光学的に不均一になるため、光散乱が生じて白濁する。この時、光の散乱方向を入射側に向けることができれば、その分だけ全透過率を下げられる。
今回、光重合で形成されるPNLCの微細な構造を詳しく調べて、白濁状態では後方散乱が生じて、透明と白濁の切り換えによって、全透過率が大きく変化するPNLCの構造を見出した。全透過率は、試料前方に散乱した全ての光を検出した際の透過率で、今回開発したPNLCは20%以上の変化幅を示した。この変化幅は、既に実用化されている液系の調光ガラスと比べても引けを取らない。全透過率は、窓を想定した場合、窓への太陽光の全照射量に対する室内入射量の相対値に相当し、透明時と白濁時での全透過率の差が省エネの指標となる。また、透明状態での直進透過率は、従来の熱応答型の液晶複合材料並みの70%を上回る値を達成した。直進透過率は、入射光と同じ直進方向(ここでは拡がり角10度の範囲)の光強度をもとに算出した透過率で、透明さ(白濁の少なさ)の指標となる。本PNLCの直進透過率は、太陽光を受けた際の窓ガラスの昇温速度に十分追従して変化できる。例えば、今回のガラス基板で挟んだ材料の温度を30℃から50℃に上げると、直進透過率は30秒以内に80%以上から10%以下に下がる。
従来の液晶を用いた調光ガラスは、白濁現象を利用したプライバシーガラスとしての用途が主だったが、今回開発した全透過光量も制御可能な熱応答型のPNLCは、暖冷房負荷低減に有効な生活温度(今回の試料では35℃)付近で調光が可能であるため、ガラスへ組み込めば省エネ窓ガラスとして期待できる。また、作製工程や動作原理が単純であるため、製造・施工・運用の面でも有利である。さらに、固相の薄膜として扱うことができるため、既築の建物などに後貼り施工できるプラスチックフィルム基板への展開も可能であり、調光フィルムへの応用など、一層の普及が期待される。
今後の予定
実用化に向けて、全透過率の変化幅の拡大と耐久性の向上に取り組む。また、今回実現したガラス基板を用いた調光ガラスは、新築建物などの窓ガラス施工が想定されるが、今後は、窓ガラスへの後貼り施工ができるプラスチックフィルム基板を用いた調光フィルムの作製技術開発に取り組む。
用語の説明
◆調光ガラス(フィルム)
電気や光、熱などの外部刺激によって光の透過量や反射量を制御できる層を有するガラス(プラスチックフィルム)。
◆前方散乱、後方散乱、全透過率、直進透過率
光を吸収しない対象物が散乱を生じ白濁している場合、対象物に入射した光は、四つの形態で伝播していく。まず、対象物をそのまま通過する直進透過光と前方に散乱して通過する前方散乱光、そして、反射して後方に戻る直進反射光と後方に散乱する後方散乱光である。これら四つの伝播光の強度の比率は、入射光強度に対する光強度として表され、それぞれ直進透過率(Td)、拡散透過率(Ts)、直進反射率(Rd)、拡散反射率(Rs)と呼ばれる。全透過率(Ttotal)は、直進透過率と拡散透過率の和となる。なお、拡散反射率は白濁度(ヘイズ)と呼ばれ、透明度の低さの指標となる。
全透過率については、省エネ窓ガラスを想定する場合、太陽光強度が分布する(図3(a)の灰色のスペクトルで表現)波長域で考える必要がある。直進透過率は、本研究では、図3(b)中に示すように、拡がり角10度の範囲の光強度を検出した際の透過率とした。
◆生活温度
慣用的に認められた用語でないが、ここでは、日常生活で経験しうる温度として定義。気温だけでなく、窓や外皮などの表面温度も含める。
◆高分子ネットワーク液晶 (PNLC)
液晶と高分子の二相からなる微細構造を持つ複合材料。電気制御型の研究開発が多くなされ、窓だけでなく、表示機器や情報処理素子への応用が見込まれている。
昨日(10月22日)は、「即位礼正殿の儀」が行われた。
おめでとうございます。
今日も晴れた。気温が段々と低くなり、散歩には上着が必要となる。
塀に”ワイヤープランツ”が植えられている。細い茎は赤茶色で光沢があり細かく枝分かれ、タマゴ型の葉っぱは1cmほどで、濃緑色で光沢がある。茂ると緑のカーテンの様で綺麗だ。塀だけでなく、観葉植物として鉢植えや寄せ植えで楽しめる。
所々で花が咲いる。花は小さく透明感のある緑色。開花時期は春~秋と長いけど、余り目立たない。実はまだ見えない。
名(ワイヤープランツ)の由来は、赤茶色の細い茎が針金のように見えるから。
ワイヤープランツ
別名:ミューレンベッキア
学名:Muehlenbeckia axillaris
タデ科ミューレンベッキア属
匍匐性常緑低木
原産地はニュージーランド
開花時期は4月~11月
花は5弁花(5裂花)、ベルの様な実が成る
ポイント
〇温度変化による相転移を利用して透明と白濁を切り換えられる液晶複合材料を開発
〇新規の液晶複合構造の開発により、前方への透過光量の制御に成功
〇建物や移動体の窓に貼り付けることで、暖冷房負荷低減に貢献
近年、省エネが求められる中、住宅やオフィスビルなどの建物の暖冷房負荷の低減にも注目が集まっている。とくに、温暖地での暖冷房負荷の低減には窓から入る太陽光透過量の制御が有効である。調光ガラスは、外部からの刺激で太陽光透過を制御するガラスである。
液晶を用いた調光ガラスは、電気で制御するタイプが既に上市され、フィルム化もされている。また、温度によって自発的に透明と白濁が切り換わる、熱応答型の液晶複合材料も報告されている。しかし、透明と白濁の切り換え特性を活用して、光の全透過率を制御するという試みは、これまで成功していなかった。単に白濁状態のみを実現するには、入射光を透過側に散乱(前方散乱)させるだけでよく、そのような材料は比較的容易に作製できる。しかし、これだけでは全透過率は下がらないので、プライバシーガラスとしては使えるが、省エネ用途には適さない。省エネ用途では、白濁時に全透過率を下げる必要があるが、それには光を入射方向とは反対の方向に散乱(後方散乱)させる、内部構造を有する材料を作らなければならない。しかし、温度によって後方散乱が変化する熱応答型の液晶複合材料の開発は格段に難しかった。
研究の内容
高分子ネットワーク液晶(PNLC)と呼ばれる液晶と高分子からなる複合材料を、二枚のガラス基板ではさんだ構造の調光ガラスを開発した。この調光ガラスは、液晶、モノマー(高分子の原料)、重合開始剤の混合原料を二枚のガラス基板の間隙に満たし、紫外光を照射して重合させて作製される。今回開発したPNLCは、高分子の網目の中に液晶が満たされている構造で、生活温度付近で、温度によって透明と白濁が切り換わり、同時に全透過率が大きく変化する。低温では、液晶分子が配向し、液晶相と高分子相の屈折率が一致するので、PNLCは光学的に均一となり透明になる。一方、高温になると、液晶分子の配向が乱れて屈折率が変化し、光学的に不均一になるため、光散乱が生じて白濁する。この時、光の散乱方向を入射側に向けることができれば、その分だけ全透過率を下げられる。
今回、光重合で形成されるPNLCの微細な構造を詳しく調べて、白濁状態では後方散乱が生じて、透明と白濁の切り換えによって、全透過率が大きく変化するPNLCの構造を見出した。全透過率は、試料前方に散乱した全ての光を検出した際の透過率で、今回開発したPNLCは20%以上の変化幅を示した。この変化幅は、既に実用化されている液系の調光ガラスと比べても引けを取らない。全透過率は、窓を想定した場合、窓への太陽光の全照射量に対する室内入射量の相対値に相当し、透明時と白濁時での全透過率の差が省エネの指標となる。また、透明状態での直進透過率は、従来の熱応答型の液晶複合材料並みの70%を上回る値を達成した。直進透過率は、入射光と同じ直進方向(ここでは拡がり角10度の範囲)の光強度をもとに算出した透過率で、透明さ(白濁の少なさ)の指標となる。本PNLCの直進透過率は、太陽光を受けた際の窓ガラスの昇温速度に十分追従して変化できる。例えば、今回のガラス基板で挟んだ材料の温度を30℃から50℃に上げると、直進透過率は30秒以内に80%以上から10%以下に下がる。
従来の液晶を用いた調光ガラスは、白濁現象を利用したプライバシーガラスとしての用途が主だったが、今回開発した全透過光量も制御可能な熱応答型のPNLCは、暖冷房負荷低減に有効な生活温度(今回の試料では35℃)付近で調光が可能であるため、ガラスへ組み込めば省エネ窓ガラスとして期待できる。また、作製工程や動作原理が単純であるため、製造・施工・運用の面でも有利である。さらに、固相の薄膜として扱うことができるため、既築の建物などに後貼り施工できるプラスチックフィルム基板への展開も可能であり、調光フィルムへの応用など、一層の普及が期待される。
今後の予定
実用化に向けて、全透過率の変化幅の拡大と耐久性の向上に取り組む。また、今回実現したガラス基板を用いた調光ガラスは、新築建物などの窓ガラス施工が想定されるが、今後は、窓ガラスへの後貼り施工ができるプラスチックフィルム基板を用いた調光フィルムの作製技術開発に取り組む。
用語の説明
◆調光ガラス(フィルム)
電気や光、熱などの外部刺激によって光の透過量や反射量を制御できる層を有するガラス(プラスチックフィルム)。
◆前方散乱、後方散乱、全透過率、直進透過率
光を吸収しない対象物が散乱を生じ白濁している場合、対象物に入射した光は、四つの形態で伝播していく。まず、対象物をそのまま通過する直進透過光と前方に散乱して通過する前方散乱光、そして、反射して後方に戻る直進反射光と後方に散乱する後方散乱光である。これら四つの伝播光の強度の比率は、入射光強度に対する光強度として表され、それぞれ直進透過率(Td)、拡散透過率(Ts)、直進反射率(Rd)、拡散反射率(Rs)と呼ばれる。全透過率(Ttotal)は、直進透過率と拡散透過率の和となる。なお、拡散反射率は白濁度(ヘイズ)と呼ばれ、透明度の低さの指標となる。
全透過率については、省エネ窓ガラスを想定する場合、太陽光強度が分布する(図3(a)の灰色のスペクトルで表現)波長域で考える必要がある。直進透過率は、本研究では、図3(b)中に示すように、拡がり角10度の範囲の光強度を検出した際の透過率とした。
◆生活温度
慣用的に認められた用語でないが、ここでは、日常生活で経験しうる温度として定義。気温だけでなく、窓や外皮などの表面温度も含める。
◆高分子ネットワーク液晶 (PNLC)
液晶と高分子の二相からなる微細構造を持つ複合材料。電気制御型の研究開発が多くなされ、窓だけでなく、表示機器や情報処理素子への応用が見込まれている。
昨日(10月22日)は、「即位礼正殿の儀」が行われた。
おめでとうございます。
今日も晴れた。気温が段々と低くなり、散歩には上着が必要となる。
塀に”ワイヤープランツ”が植えられている。細い茎は赤茶色で光沢があり細かく枝分かれ、タマゴ型の葉っぱは1cmほどで、濃緑色で光沢がある。茂ると緑のカーテンの様で綺麗だ。塀だけでなく、観葉植物として鉢植えや寄せ植えで楽しめる。
所々で花が咲いる。花は小さく透明感のある緑色。開花時期は春~秋と長いけど、余り目立たない。実はまだ見えない。
名(ワイヤープランツ)の由来は、赤茶色の細い茎が針金のように見えるから。
ワイヤープランツ
別名:ミューレンベッキア
学名:Muehlenbeckia axillaris
タデ科ミューレンベッキア属
匍匐性常緑低木
原産地はニュージーランド
開花時期は4月~11月
花は5弁花(5裂花)、ベルの様な実が成る
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