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夢は起きるとすぐに忘れてしまう、仕組みを解明

2019-10-24 | 健康・病気
 名古屋大学環境医学研究所の山中章弘教授らの研究グループは、脳のメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)がレム睡眠中に記憶を消去していることを明らかにした(9月20日発表)。本研究は、北海道大学木村和弘教授、寺尾 晶准教授(現東海大学教授)、吉岡充弘教授、大村優講師、SRIインターナショナルのキルドフ博士の協力を得て行った。本研究成果は、2019年9月19日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Science」のオンライン版で公開。
 ポイント
 〇睡眠時に記憶がどのように固定され、消去されるのかその仕組みはよく分かっていなかった。
 〇マウスを用いた実験で、視床下部に少数存在するメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)がレム睡眠中に活動し、記憶を消去する役割があることを発見した。
 〇MCH神経が記憶に影響を与えるメカニズムの解明は、強い恐怖心を伴った経験の記憶がトラウマとして残ってしまう心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療法開発への貢献が期待される。
 研究グループは、超小型顕微鏡を用いた神経活動の記録をマウスに適用して、MCH神経にはレム睡眠中に活動するもの、覚醒中に活動するもの、レム睡眠と覚醒中の両方で活動するものの3種類があることが分かった。特定の神経の活動を操作することができる光遺伝学や化学遺伝学の手法を用いて、このMCH神経活動が記憶に重要な海馬の神経活動を抑制すること、さらにレム睡眠中に活動するMCH神経が記憶を消去していることを明らかにした。
 研究の内容
 研究グループは、マウスの記憶行動と光遺伝学や化学遺伝学の手法を組み合わせた実験により、MCH神経の活動が活性化すると記憶が消去され、抑制すると記憶が定着されることを見いだした。特に、記憶の中枢領域である海馬が担当する記憶に対し、MCH神経が記憶の消去をもたらすことが分かった。この仕組みを明らかにするために、マウスの脳を用いて、記憶に重要な海馬に足を伸ばしているMCH神経の末端を光遺伝学の手法で活性化させたところ、海馬の神経の活動が抑制されることが明らかになった。
 次に、MCH神経の活動が、睡眠と覚醒状態に伴ってどのように変化するのかについて調べた。ファイバーフォトメトリーと呼ばれる手法を用いて神経活動を測定しながら、同時に脳波と筋電図を用いて睡眠と覚醒を判定したところ、マウスではレム睡眠時にMCH神経の活動が強くなることが分かった。覚醒時にもMCH神経が弱く活動していたことから、睡眠と覚醒状態におけるMCH神経の活動をさらに単一細胞レベルで調べた。マウスの頭に載せられる約2gの超小型顕微鏡を用いて、脳内でMCH神経の活動を1つの細胞ごとに記録したところ、MCH神経には、①覚醒時に活動するMCH神経、②レム睡眠時に活動するMCH神経、③覚醒時とレム睡眠時の両方で活動するMCH神経の3種類が存在することが明らかになった。
 さらに記憶とMCH神経の活動の関係を調べるため、マウスの記憶を評価する新奇物体認識試験で物体を記憶させた後に、MCH神経の活動を活性化もしくは抑制する実験を行った。光遺伝学や化学遺伝学の手法によりMCH神経の活動を活性化したところ、一度記憶が形成されているにもかかわらず、その消去が進むことが判明した。一方、MCH神経の活動を抑制したところ、記憶の定着が向上することも判明した。新奇物体認識試験だけでなく、文脈的恐怖条件付け試験による恐怖記憶でも同様の結果が得られた。
 また記憶保持期間における睡眠とMCH神経の活動の関係を調べるため、物体を記憶させた後に、1)レム睡眠中のみでMCH神経活動を抑制した場合、2)ノンレム睡眠中のみで抑制した場合、3)覚醒時のみで抑制した場合の記憶を比較しました。その結果、1)レム睡眠中にMCH神経の活動を抑制した場合にのみ記憶が向上した。しかし、2)ノンレム睡眠中と3)覚醒時にMCH神経の活動を抑制しても記憶に影響はなかった。
 以上の研究結果から、レム睡眠中に活動するMCH神経が、海馬の神経活動を抑制することにより記憶を消去することが明らかになった。
 今後の展開
 睡眠中の記憶の定着については多くの研究がされている一方で、消去についてはこれまでほとんど研究が進んでいません。今回新たに分かったMCH神経による記憶が消去される仕組みをきっかけとして、睡眠中の記憶制御の全体像の解明が期待される。
 また、MCH神経を活性化させると、文脈的恐怖条件付けの記憶も消去されることから、MCH神経だけを活性化する方法を見つけることで、強い恐怖心を伴った経験の記憶がトラウマとして残ってしまう心的外傷後ストレス障害(PTSD)において、その記憶を消去する治療への応用も期待される。
 ◆用語説明
 〇メラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)
 メラニン凝集ホルモン(MCH)ペプチドを産生する神経。魚から発見され、皮膚のメラニン胞を凝集させて色白にさせることから命名された。ほ乳類にもよく保存されており、視床下部に存在する少数の神経細胞がMCHを産生し、脳全体に軸索を投射する。摂食行動亢進に関与するとされてきたが、近年睡眠覚醒調節にも関与していることが報告されている。
 〇レム睡眠
 急速眼球運動(REM)を伴う睡眠であり、ノンレム睡眠の後に現れる。脳の活動は高くなっており鮮明な夢を見ているとされているが、完全に随意筋が脱力しているため、夢の内容に従って身体が動くことはない。レム睡眠中は呼吸数や心拍数が乱れる。脳波ではシータ波成分(4-7Hz)が多くなる。逆説睡眠とも呼ばれる。一方、ノンレム睡眠は、眠ると最初に現れる睡眠。脳の活動は低下しており、呼吸数や心拍数も低下して安定する。脳波ではデルタ波成分(1-3Hz)が多くなる。徐波睡眠とも呼ばれる。
 〇光遺伝学
 特定の波長の光により活性化される分子を標的神経だけに発現させ、標的神経の活動を光を用いて高い時間、空間精度にて制御する実験技術。
 〇化学遺伝学
 特定の化学物質により活性化される人工受容体を標的神経だけに発現させ、標的神経の活動を特定の化学物質を用いて長時間持続的に制御する実験技術。
 〇ファイバーフォトメトリー
 光を用いて神経活動を測定する技術の1つ。光ファイバーを脳に刺入して、自由に行動している動物の脳内において特定の神経活動を記録することができる。
 〇単一細胞レベル
 一つ一つの神経細胞の活動をイメージングによって明らかにする。特定神経細胞だけに標識となるインジケーターを発現させることで、標的神経活動を計測することが可能となる。
 〇新奇物体認識試験
 マウスは、見たことがない新しい物体に興味を持つ性質があり、新しい物体には近づいて探索する。一度探索させて覚えた物体は、二度目に与えてもそれほど興味を示さないが、忘れると再び新奇物体として探索する。物体への接触時間を測定することでマウスの記憶力を測定することができる。
 〇文脈的恐怖条件付け試験
 マウスにおいて、場所や状況の記憶を恐怖の反応であるすくみ行動(フリーズ)を測定することで評価する試験。マウスはある場所で電気ショックを受けると恐怖で動きが止まってしまうフリーズを起こし、その場所は嫌な場所として記憶される。一定時間後に、マウスを再び電気ショックを受けたのと同じ場所に戻すと、その時の恐怖記憶を思い出し、今度は電気ショックが来ないのにフリーズする。フリーズの時間を測定することで、記憶の程度を評価することができる。

 今日の天気は曇り~晴れ。早朝には雨が降ったようだ、気温は低くなり、最高気温18℃、最低気温14℃。・・秋は深まり、冬がやってくる。
 近所のお庭の塀際。”フジバカマ”が咲き始めた。散房状に淡紫紅色の小さな花が付いている。茎に赤みがあり、本来の”フジバカマ(藤袴)”ではなく、雑種の園芸品種ではないかと言う・・サワヒヨドリとフジバカマの雑種と推定されるサワフジバカマか。本来の藤袴は昔は群生していたが近年激減し、準絶滅危惧種に指定されている。
 ”フジバカマ”は秋の七草の一つである。春の七草は「食」を愛で「七草がゆ」、秋の七草は花を「見る」を愛でる。
 秋の七草
  藤袴(ふじばかま)
  萩(はぎ)
  尾花(おばな)→ 薄(すすき)
  葛花(くずばな)→ 葛(くず)
  撫子(なでしこ)
  女郎花(おみなえし)
  朝貌(あさがお)→ 「朝顔」ではなく、「桔梗」との説が定説
 フジバカマ(藤袴)
 学名:Eupatorium fortunei
 キク科ヒヨドリバナ属
 多年生植物
 草丈は50cm~180cm
 開花時期は10月~11月
 散房状に淡紫紅色の小さな花が付く


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