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機械学習で高性能な磁気冷凍材料を発見、水素液化の高効率化・低価格化に前進

2020-05-14 | 科学・技術
 物質・材料研究機構(NIMS)は、AI(人工知能)技術の1つである機械学習を用いることで、二ホウ化ホルミウム(HoB2)が水素液化に用いる高性能の磁気冷凍材料になり得ることを発見したと発表した(2020年5月12日)。本研究は、国立研究開発法人 物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の高野義彦グループリーダー、寺嶋健成主任研究員、カストロ・ペドロ大学院生からなる研究チームによって行われた。
 研究の背景
 現在の文明社会は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料によって 支えられている。しかし、化石燃料を 燃焼させると 、地球温暖化を起こす二酸化炭素が大量に発生する。このため、近年この地球温暖化は顕著になり、気候変動や海面上昇など世界的な社会問題となっている。京都議定書などにあるように、地球温暖化を防ぐために二酸化炭素の排出削減が強く求められている。そこで、二酸化炭素を一切出さないクリーンなエネルギー源として、水素が注目されている。水素はガスのままではかさばるため、貯蔵や輸送に適しない。そこで、液化天然ガス (LNG) のように水素も液化して体積を小さくし、貯蔵や輸送しやすい状態にする必要がある、LNGの液化温度は-162度である。しかし、水素の液化温度は-253度(約20K (ケルビン))と大変低く、気体の圧縮を利用して温度を下げる 一般的な気体冷凍装置では 、摩擦による熱の発生などが避けられず エネルギーロスが大きくなってしまう。そのため、気体冷凍方式による液化効率は25%程度と低く、 結果、液化水素の価格が高くなってしまうことが懸案となっていた。そこで、安価な液体水素を供給するために、気体・冷凍に替わる新たな水素液化の方法として期待されているのが、理論的には50%以上の効率が見込まれる磁気冷凍である。
 磁気冷凍とは、次のような原理で冷却する方法である。
 磁場の無い環境では磁性体はランダムな方向を向いている。
 磁性体に磁場を印加すると磁性体の磁気モーメントの向きがそろい、減少したエントロピーが発熱して外部に放熱する。
 次に反対に、磁性体が磁場中にあり磁気モーメントの向きがそろった状態から、磁場を取り除くと、磁性体の磁気モーメントの向きは ランダムになりエントロピーが増大する。この増大した エントロピー変化に相当するエネルギー分の温度が下が るので、水素などの吸熱 に使うことができる。
 この、行程を繰り返すことにより冷却する仕組みが磁気冷凍である。大きなエントロピー変化を示す磁性材料ほど吸熱量も大きくなるため、エントロピー変化は磁性材料がもつ冷凍能力の指標となる。
 磁性材料のエントロピー変化は、温度に強く依存し、材料が磁性体となる温度である磁気転移温度付近で大きな値を示す。 磁気冷凍装置の開発においては、水素液化温度付近で 磁気エントロピー変化の大きい磁気冷凍材料の発見が求められていた。
 研究内容と成果
 研究チームでは、機械学習を用いて高いエントロピー変化を示す磁性材料を探索した。その結果、二ホウ化ホルミウム(HoB2)が 水素の液化温度付近で世界最高性能を示す磁気冷凍材料として機能する可能性が高いことを発見した。
 本研究で見いだされた二ホウ化ホルミウム(HoB2)は、大きなエントロピー変化を示すだけでなく、動作温度域が広いことも特徴で、1つの材料で水素液化温度近くの広い温度域を冷却できることは水素の液化・貯蔵に適している。
 我々は、機械学習を行うために、約1,600個の磁気冷凍材料データを論文から集めた。磁気エントロピー変化が分かっている約1,600 個のデータのうち8割を用いて組成とエントロピー変化の関係を機械に学習させた。学習効果の妥当性を調べる目的で、残りの2割についてエントロピー変化の機械予想値と実験値との比較をした。機械予想と実際の値との比較で、直線に沿っ
て右上がりの分布を示すことは、機械予想の精度が高いことを示していた。
 次にこの学習を基に、エントロピー変化が未知の約800個の強磁性体について機械予想したところ、高い値を示す候補物質が34個見つかった。その候補物質の中から実際に物質を合成し、磁気冷凍性能を実験にて評価した結果、二ホウ化ホルミウム (HoB2)が水素液化温度付近において世界最高のエントロピー変化 Δ S=0.35(J/cm 3 K) を示すことを見いだした。驚いたことに機械予想で得られた二ホウ化ホルミウム(HoB2)のエントロピー変化 Δ S=0.14(J/cm 3 K) と比較して、2倍以上良い結果が得られた。この違いを機械学習にフィードバックすることにより、今後より正確な機械予想が可能になると思われる。さらに 、 二ホウ化ホルミウム(HoB2)が高いエントロピー変化を示すメカニズムを解明することにより、今後、新たな高性能磁気冷凍材料の発見が期待される。
 なお、本発見については、特許出願済み。
 今後の展開
 本研究には2つの成果がある。
 第1の成果は、機械学習が材料開発に有効に活用されたことである。機械学習を用いた新材料開発は、最近、精力的に行われているが、実際に材料を作り高性能な新しい材料を発見した例はまだ少ない。このたび、機械学習を用いて、高性能な磁気冷凍材料を発見できたことは、機械学習が有効に材料開発に活用された良い事例である。今後同様の手法を用いることで、例えば、エアコンや冷蔵庫に使えるような温度域などの、異なる温度域でより高性能な材料を発見する可能性があり、機械学習を使った材料開発はますます発展していくと思われる。
 第2の成果は、二ホウ化ホルミウム (HoB2)が 高性能な磁気冷凍材料として機能する可能性が高いことを発見できたことである。
 今後、この材料を用いた磁気冷凍装置が完成すれば、本未来社会創造事業が目指す磁気冷凍技術による革新的水素液化システムの開発を通して、水素の液化効率や液化量の向上や液体水素の価格の低減が期待さる。本発見は、水素社会の発展に大きく貢献するものであり、そして、二酸化炭素の削減、地球温暖化防止につながると考えられる。
 ◆用語解説
 〇磁気モーメント
 物質中の各原子が大きさと向きをもつ磁気の源。各原子の磁気モーメントの向きがそろうことで、物質全体が磁石としての性質を示す。
 〇エントロピー
 乱雑さを表す量。磁気エントロピーは物質内の磁気モーメントの向きがどれだけ乱れる/そろっているかを示し、磁気冷凍材料では磁場をかけて磁気モーメントの向きをそろえることでエントロピーが大きく減少する。
 〇機械学習
 データベースなどに由来する教師データを入力して解析を行い、そのデータから有用な規則、判断基準などを学習し、未知現象を予想する手法。
 〇1次転移/2次転移
 相転移の区別で、その前後でエントロピーの不連続な変化を示すものが1次転移、エントロピーが連続的に変化するものが2次転移。身近な現象の例として、氷を熱すると水に変化する現象が1次転移、鉄を熱すると磁石につかなくなる現象が2次転移として挙げられる。1次転移物質は転移温度付近で急峻なエントロピー変化を示す一方、2次転移物質はなだらかなエントロピー変化を示す傾向にある。
 〇ホルミウム (英: holmium)
 ホルミウムは原子番号67の元素。元素記号はHo。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。
 銀白色の金属で、常温・常圧での安定構造は六方最密充填構造 (HCP)。比重は8.80、融点は1461℃、沸点は2600℃(融点、沸点とも異なる実験値あり)。
 空気中で表面が酸化され、高温下で全体が燃えて酸化物になる。水にゆっくりと溶ける。酸に易溶。ハロゲンと反応する。 安定な原子価は3価。希土類金属で最大の磁気モーメントを持つ。

 今日の天気は晴れ。明日から下り坂の天気予報・・雨が降るかな。
 暑くなってきた、散歩も暑さ対策が必要となる・・日傘が良いかも。
 お庭の石の側での”タツナミソウ”の花。花は茎から基部で急に曲がって直立した筒状で、先が丸く膨らみ横向きとなっている。茎に幾つもの花穂を出し、同じ向の花を付ける。この様な花姿が波頭の文様を思わせる・・この様子が名の由来。
 タツナミソウの仲間には多くの種があり、分類が難しいとのこと。学者により見解が異なるので、学名なども違う・・と言われる。
 タツナミソウ(立浪草)
 別名:スクテラリア
 学名:Scutellaria indica
 シソ科タツナミソウ属
 多年草
 原産地は東アジア(北海道を除く日本列島を含む)
 開花時期は4月~6月
 花冠は筒部が長い2~4cmの唇形、基部で急に曲がり直立する
 上唇は兜状に丸く膨らみ、下唇は内側に紫色の斑点があり3裂している
 花色は紫が基本で、青紫・淡紅紫・ピンク、白もある


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