GreeneryPark日記

-おとなし おっと@管理人の日々のつれづれ-

『欲望という名の電車』の思い出

2006-07-04 | 演劇鑑賞
 
 シャム猫ココシリーズの新作『猫はバナナの皮をむく』を読んで、あることを思い出した。

 数年前に『欲望という名の電車』(主演:栗原小巻)を観に行った。
私の席は前から5列目ぐらいだった。
この5列目というのは、私の行く劇場では実はかなり嫌な席だ。
舞台の側に臨時の椅子を3列分並べてあるのだが、その後ろ2列は段差がないため、前の人の頭が邪魔になって舞台が見えづらい。
役者さんの声がよく聞こえる点が、唯一のいいところだ。

 ところが、舞台の奥行きがある上にセットが音を吸収するような素材で出来ていたらしく、女優さんたちの声が最初からよく聞こえない。
それに加えて、後ろの席の人がおしゃべりを始めた。
「栗原さん、今でもスタイルいいねえ」
「声がよく聞こえんなあ」
どちらも同感だが、静かにしないと余計に聞こえなくなると思う。
周りの人もちらちらと後ろ見て、気にしはじめている。
後ろの客は7,8人のグループできていたらしく、そのうち、皆で近所の世間話が始まってしまった。

 大事(そう)な台詞を聞き落とした私は、思わず後ろを向いて、口に指を当てて「しーっ!」というポーズをした。(声は出していない。)
すると、後ろのグループの1人である中年のおじさんが、「そのポーズはなんな!」と大声で言い出した。
仕方なく「お願いします。静かにしてください」と声を押し殺して言うと、グループの女性の1人が「そうね、劇を見ているんだものね、ごめんなさいね」と言ってくれ、その場は収まった。

 だが、劇の中盤、後ろのグループは、おやつを食べ始めた。
おやつは梨。
梨の入ったタッパーをビニール袋に入れていたらしく、耳障りながさごそいう音が響き渡る。
しかもタッパーを回して梨を勧めている。
劇はブランチの過去が明らかになろうという重大な場面。
肝心な台詞が全く聞こえないじゃないか!
第一、ここは飲食禁止だ!!

 劇が終わった後、おじさんは「おもろくなかったな~!」と帰っていった。

 面白くなかったことは同感だが、喜劇ではなく悲劇なので、ある程度は仕方がない。
問題は、悲哀を感じたり、感心したりできたかもしれない様々なことを、後ろの客達への怒りで感じる余裕がなかったことだ。
今、思い出しても腹が立つ。
我ながら、人間が出来ていない。

絵:昔は「Desire(欲望)」というプレートをかけた電車が走っていたらしい。

 晴れ 28℃
 ハヤカワ文庫『猫はバナナの皮をむく』リリアン・J・ブラウン→読書中。P42まで。



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