山の恵み里の恵み

キノコ・山菜・野草・野菜の採取記録

歩ける道(3)

2009-03-19 15:25:33 | その他
 『18きっぷ』。「儲ける」から「歩きに行く」にちょっと軌道修正。「儲け」はせいぜい半額割引になればいい、つまり5回で2万3千円分乗れればいいとしよう、と決めて企んだ第2回。快晴の日を待って、きのう北回りで大糸線に乗ってきました。
 いやー、望外の大儲けをしました。前日の雨で黄砂も収まり、雲ひとつない青空。海と山と湖と川とローカル線。海は水平線がくっきり見える日本海。山は真っ白な頚城(くびき)山塊と飛騨山脈。湖は静かな静かな仁科三湖。川は姫川。ローカル線は糸魚川→南小谷、一両のワンマンカー、歩くのと同じ速さ(遅さ)。おまけに車窓風景抜群の信越線・北陸線・大糸線・篠ノ井線と、4つも乗せていただき、感謝、感謝。団体さんなし、グループ客なし、観光バスなし、お土産屋なし、屋台なし、スピーカーの民謡なし、演歌なし。静か。こんなに贅沢させてもらっていいのかなー、2千円ちょっとでこんなに楽しませて見せていただけるなんて、日本は良い国ですなあ。
 『久比岐(くびき)自転車歩行者道』。旧北陸線の線路敷。能生(のう)→浦本(うらもと)、1里半、線路跡だけあって道は平坦、時速1里の標準速度で1時間半。初めてなので、下見のつもり。能生駅から自歩道まではロクな歩道もないところを30分も歩かされて往生したけれど、そこからは快適な歩行者(自転車)専用道。右手に海を眺めながら、どこまでもどこまでも伸びている。いかにもお役所仕事らしく、線路跡を簡易舗装しただけの、実に素っ気ない道。案内地図なし、道標なし、(江戸時代なら1里ごとにあったような茶店風)休憩所なし、ベンチなし、あとは「テメーラ勝手に使いたきゃ使ってもいいぞ」ってなところか。左は線路脇の高い側壁、右は侵入者防止柵で、腰をおろせるところが全くない。今どのあたりにいるのか、浦本まであとどのくらいの道のりなのか、さっぱり分からない。中間あたりに小さな神社があって、海を眺めながら腰をおろせる唯一の場所なんだけど、先行き不透明なために、休んでいる余裕がない。しかしこのナイナイ尽くしのおかげで、通るひともほとんどいない。暑くなく寒くなく、静かな歩きには最適。「歩きにきて」良かった。
 駅から駅、町から町、浦から浦、歩いて行けるところがあるのは嬉しい。岬をまわればまた浦(漁村)があり、次の岬をまわれば次の浦、日本の漁村の原風景。歩道と海はケモノ道に隔てられ、道より数メートル低いところを大型トラックが轟音をたてて往来しているため、磯辺におりることはできないが、どうせ海岸は隙間なく防潮壁とコンクリートブロックが固めているから、水遊びはできない。山奥の人間にとっては、海が眺められるだけでじゅうぶん。海はおだやかな春の海。ホントは荒海のほうが嬉しいんだけど、風が強ければ寒いだろう、寒いのも困る。
 歩きに歩いていると、ひょっと目の前が浦本駅だった。能生とちがい、歩道が駅前を通っているのはありがたい。昔の線路と今の線路がここで合流しているのだろう。次の糸魚川行き列車が来る10分前。「ジャストインタイム」。見込み通りの1時間半で到着。最後はちょっと焦ったけどね。
 浦本から先は糸魚川の市街地のようなので、あまりぞっとしない。次は反対方向に、能生→筒石→名立→有間川→谷浜→直江津を、何回かに分け、季節も変えたりして歩いてみたいなあ。海湖山川のフルコースじゃなく、海だけでもじゅうぶん。汽車賃も往復¥3,500程度、3割引を利用すれば、べつに例の『きっぷ』のお世話になるまでもないだろう。とにかく汽車に乗って「歩きに行く」ところがまたひとつふえたのはメッケモンだ、という次第。
 帰りがけ時間調整で途中下車した穂高駅。近くに老舗っぽいワサビ専門店があり、そこで葉ワサビを一束購入。店のおばさんに「ピリ辛」に茹でるコツ(「あまり熱いお湯でないほうがいいですよ」)を教わり、その通りにしたら本当にピリ辛に仕上がり、いっそうのゴキゲン。昔ばなしのジーサンじゃないが、人間、欲をださないとかえってオモライが多いってことか。

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