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山の恵み里の恵み

キノコ・山菜・野草・野菜の採取記録

ナラタケ

2005-02-16 14:27:44 | 山の恵み(保存版)
 採取場所:戸隠村銚子口。 採取日時:2001年10月初め。 注意:どの図鑑にも、過食禁止、生食禁止と出ています。 見分け方:株立ちしていて、傘の中心付近が砂をまぶした感じでささくれだっていて、茎にツバがはっきり残っていればナラタケ、ツバがはっきりしていなければナラタケモドキです。「モドキ」のほうは「ホンモノ」よりずっと早く、夏の終わりのまだ暑い頃に出ますし、たとえ混同しても、どちらも食べられるので心配要りません。
 【英語名:Honey Fungus(ハチミツタケぐらいの意味か)】


 極めて大きな群れをなすキノコです。株立ちすることもあれば、分かれて出ていることもありますが、大きなコロニーを作って群生・叢生します。枯れ木でも、倒木でも、埋もれ木でも、それらの周辺でも、時には生きている木(たぶん弱りかけている)にも、ぎっしり生えます。林の中一面、野原一面に広がっていることもしばしばです。まだ葉が青々としている落葉松の根元から上の枝のほうまでぎっしりとナラタケに蔽われているのを見た時は、人間も弱って菌に冒されたらああなるのかとさすがに不気味な感じがしました。まあ人間にナラタケが取り付くなんて聞いたことはありませんが。
 何年か前、アメリカで「世界最大のキノコが見つかった」と報じられたのが、このナラタケです。一本の大きさではなく、何ヘクタール(エーカーだったかも、アメリカ尺貫法は困りもの)にも及ぶ森林全体に生えたナラタケのDNAが同じだったので、ひとつのキノコと認定されたのだとか。
 加熱すると真っ黒になりますが、つるつるしていて、歯ごたえはしゃきしゃき。味も良く、汁物にすると良い「出し」が出て、これほど三拍子も四拍子も揃ったキノコはざらには無いでしょう。一度に大量に採れるため、戸隠あたりのお蕎麦屋さんで、「雑きのこ汁」とか「雑きのこおろし合え」とメニューにあったら、入っているキノコの大部分がこれだと思って間違いありません。戸隠に限らず、大発生した年には長野市内の居酒屋にもしばしば登場します。ちなみに「雑きのこ」とは、マツタケとホンシメジ以外の天然キノコを指すようです。
 キノコと言えばムラサキシメジぐらいしか知らなかった頃、「株立ちするキノコは食べられる」という俗信に従って、大岡村の山中に沢山生えている「カブツキノコ」を見つけて、連れとふたり、(マイカーブームが始まる前だったので)両手で抱えるようにして里に下りてきたら、村のおじさんが「ヤブタケせって、これ以上安全なキノコはねえよ」と保証してくれたんですが、家に帰って酒と醤油で煮付け、どんぶり一杯食べたら、夜中になって心臓がドキドキし出し、1時間経っても止まらなく、死ぬかと思った経験があります。
 その時は「食べ過ぎたんだろう」と思っただけで済み、以後今日まで採り続けていますが、近年出た『日本の毒キノコ150種』(ほおずき書籍)を読んだら、「要注意」の部に入選しているではありませんか。中毒例もいくつか具体的に載っていて、「やはりあの時はナラタケに当ったんだ」と知りました。食べ過ぎもあるが、有毒成分もいくらか入っているのだとか。ほかの図鑑類でもおおむね「要注意」となっているようです。ちなみにイギリスの図鑑では「不食」、アメリカの図鑑では「要注意」、セルビアのでは「食」のマークが付いていました。
 でもナラタケは採り続けます。(たぶん)大昔から「安心安全キノコ」とされてきたんだし、何よりおいしいキノコですから。大量に採ってきて塩漬けにし、冬じゅうかけて食べる人も沢山います。市内には「ナラタケ自慢」の料理屋やお握り屋が何軒もあったのですが、今は廃業してしまいました。店主が年を取って「山に入れなくなった」のでしょう。そう言えば、キノコ山の近くの里で「昔はオラもこの山でたんと採ったんだが、このごろは足腰が弱ってしまってなあ」と嘆く爺っさまにしばしば出会います。
 山里などで最近はやりの無人スタンドに「ヤブタケ」と出ていたら要注意。しばしばナラタケとナラタケモドキを区別しないで並べていますし、たとえきちんと「ナラタケ」と書いてあっても、茎がひょろ長くて傘が開いてそり返り気味なものは、古くて不味くて「ちょっとヤバイ」ですから。
 一般論ではありますが、山村の人は案外キノコを知らないようです。キノコなんか採っている暇なんか無い(「そんなヒマジンじゃねえ」)というところでしょうか。ビクを下げて山道を歩いていると(キノコ採りは常に歩きです、クルマではキノコは採れません)、近くで畑仕事をしている人に「これは何てキノコだい、食えるのかい」としばしば聞かれます。少し前になりますが、まだ初心のキノコ好きが、有名なツキヨタケを採ってきて、里の人に見て貰ったら、「これはカタハ(ムキタケ)だ、大丈夫だ」と言われ、沢山採れたので喜んで何軒もの親戚に「おすそ分け」してしまったことがあります。配った翌日、「収穫」の一部を職場まで持って来て見せてくれたのですが、「こりゃあ大変だ、死ぬこともあるよ」と言われ、大あわてて回収していました。その日の夕刊にもテレビのニュースでも「中毒例」が報道されていませんでしたので、たぶん間に合ったのでしょう。

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